出会いが別れの始めなら

さむしんぐ

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先輩の秘密

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 帰り道にある図書館の前、私は、私にとって、とても普通では無い出来事に遭遇した。部活の先輩が、誰かと話しているのだ。否、話していると言う様な状態では無い。遠巻きに見て、言葉を交わす二人の姿は異常ではない。しかし、私の目で分かる限り先輩の表情は引きつっていた。

 その先輩と言うのは、今年の春に私の通う中学校へ転入して来た人物であり、私の所属している弓道部の先輩だ。先輩は関西の方から来た人で、クラス、部活、学校に溶け込み、下級生である私達二年生の間でもしばしば話題に上がることがある。

 いつもならばその先輩は、快晴のような笑顔で誰とでも会話をしている。そんな先輩の姿に私は少し苦手意識があった。だからこそ先輩は、はっきりと記憶しているのだ。

 その様な考えのもと、私は先輩を避けようとしていた。しかし、一度だけ先輩を助けた事があった。おそらくそれをきっかけとして、先輩は私に話しかけるようになった。好かない相手であるが無下にするのも可哀想で、冷たく接する程度に態度を硬化させていた。

 しかし、私に対しても、キャラが硬いなどと言わずに構わず先輩は話しかけてきた。だから私の中で先輩は、詰まる所、楽観主義で、何があっても笑顔または、それに近いし表情が常であると思っていた。

 そんな私のイメージから掛け離れたその表情。先ほどの前提が瓦解したからこそ、私にとって普通では無かったという訳だ。私の中で育て培った先輩のペルソナを壊してしまいかねないこの場面。私は観てはいけないモノを観てしまっているのでは無いか思うものの、それはその後に芽生えて来る考えであった。
 
 しかし、観ると表現した通り、私は自分の意思でその光景を目に留めた。何か深い考えがあった訳ではない、ただ単純な好奇心だ。暫くして、その先輩と誰かのやりとりが終わった様だ。

 普通の終わり、話の終わりのタイミングは基本的に互いに手を振るか、その場から二人同時に離れるかが基本だと思っていた。

 だが、先輩の話の終わりは、先輩がその場から走って去った事によるものであり、その話し合いが、普通の話では無いことが容易に察せた。肝心の話し相手は誰なのか、今の今までずっと先輩の方を観て居たから分からなかったが、先輩が走って去る際に、手に持っていビニール袋を落とし、話し相手がそれを拾った時に観えた。

 その人物は、私の隣のクラスに居る人物で、楓花と呼ばれる女子であった。特に悪い噂も聞かない綺麗で真面目な子で、クラスの学級委員長を務めているから、知って居ただけだった。だが、何故その子が、先輩と、普通では無さそうな話をしているのか、それが気になった。
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