出会いが別れの始めなら

さむしんぐ

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1人の少女

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梓先輩が帰宅したのを観て、私も帰宅する。正確には帰宅した様に見せかけて、途中にある図書館に向かう。

今更だが、何故先輩は楓花が図書館によく行く事を知っていたのだろう。一学年下の部員から聞いたのか、先輩なら有り得ない訳ではないが、いきなり聞くのは余りにも不自然だ。もしかしたら、他に方法があったのだろう、私には思い付かない方法が。

学校を出て10分程度歩くと、立派な建物が見えてきた。近代的な造りの建物で、ここは以前大きな公園であったが、今は図書館となっている。その図書館は、一階に所蔵資料が置いてあり、休憩スペースや、談笑スペースとしてカフェもある。二階に朗読室や、コンピュータ検索室、自由閲覧席。そして、三階にあるのは、会員制の勉強スペースがあって、とても充実している。

とりあえず、一階を散策し、楓花が居ないかを把握する。その結果、一階には居ないことを確認した私は二階に上がる。朗読室や、コンピュータ検索室に入られていたら、会う事はできないが、それ以外のスペースを散策する。

どうやら、二階にも居ないらしい。この時点で、私の頭の中に浮かび上がる一つの疑念があった。そもそも、毎日は来ていないのではないだろうか。と言うよりか、休日迄図書館にいる様な子なのであるのか。

友人関係すら知らない私には、そんな事を分かるはずが無かった。少しばかり気分が落ち込み、帰るべきであるかを考え始めた。

暫くして、一階から吹き抜けになっているスペースで、手摺りに手をつきながら考えていたら、一階に見覚えのある顔が見えた。

「楓花」

思わず呟き、隠れる様にして何故か制服姿の彼女の動向を追う。どうやら彼女は、三階にある会員限定の勉強スペースに向かったらしい。

会員になるのには、本来ならばその為の申請が必要であるが、私は既に会員になっているので問題はなかった。私は一階で適当に本を取り、三階の受付に会員証を見せ、中に入る。違和感のない様に、席を探している雰囲気を出しながら楓花が座る席の正面に着座する。

私は何をしているんだろうか、そう悩むが、手に取った本を読む。手に取っていたのは、難しい参考書であり、明らかに私の年齢でこなす様な本では無かった。

セキュリティ?スパイウェア?バンドみたいな名前の言葉だ、何の事なのだろうか。まだ、数学とかの方が分かった気がする。そもそも、ここに来たのは楓花が居ないかを調べに来ただけであって、それ以上の目的はない。

そして、居た事実を確認したのだから帰っても良いのではないか?決断をしてから行動に移すのは早かった。1時間程経過してから、帰宅するために、その場を立ち上がる。

「あ、あの、すいません」

それは、唐突であった。声の主は楓花で、私に対して話し掛けてきたのだ。
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