私の人生リスタート

雷衣

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第三章

第39話

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(とうとうやって来た。南部の制圧の日が…!)
ルーチェは、いつもの制服ではなく戦闘用の制服に着替えた。
そして馬にまたがった。
「お嬢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
と、公爵家の使用人が見送りに来た。
「ありがとう、私たちがいない間の仕事はアルセント全公爵に頼んだからよろしくね。行ってくる。」
そして、ルーチェは皇宮に向かって馬で走っていった。
広場に着くと先に何十名かの騎士が来ていた。 
「チュトラリー卿、おはようございます。」
と言ってきたのは、数年前、ルーチェが第2騎士団で見習い騎士として一緒に働いていたリニーナ・レ・ラーデルだった。
「ラーデル卿!お久しぶりですね。」
リニーナとルーチェはすれ違えば少し挨拶をするだけだったが見習い騎士の頃はとても仲が良かった。
「チュトラリー卿すごく出世しましたね~。」
と、リニーナが言ってきた。
「お陰様で。ラーデル卿は制服を見る限り第2騎士団の正式な団員になったようですね。」
「はい。チュトラリー卿が騎士になったって聞いて憧れたんです。…長く引き止めては行けませんね。ご武運をお祈りしております。」
「ありがとうございます。またお話しましょう。」
と言ってルーチェはその場を立ち去った。

首都から今回の目的地まで行くには丸一日ほどかかる。
(第3騎士団って思っていたよりも団員が少ないのね。)
ルーチェは野宿の準備をしている団員たちを見てそう思った。
第3騎士団の昇格試験、入団試験は第1騎士団や、第2騎士団より遥かに難しい。
だから、人数が若干少ないのは当然と言えば当然の事だ。

いざ、南部に着くと、ルーチェは唖然とした。
人々が斧を振り回して戦っていた。
民族争いだ。
飢えに苦しむ人々、倒壊してしまっている家…。
(こんなにも酷かったなんて…。貴族達はこの事実を知らない。実際私も知らなかった。私たちが知らないところでこんなにも苦しんでいる人がいたなんて…。)
そして、騎士団を見つけた人々は、第3騎士団に襲いかかった。
(制圧で大切なのは、殺さないこと、そして身柄を確保すること。私たちを恨むのは仕方ないか…。平民だった人もいるけど、大半は貴族の騎士だし。)
ルーチェは、とある違和感に気づいた。
(なんで、第3騎士団ともあろう騎士が押されているの…?)
その疑問はすぐに片付いた。
(毒だ…。)
そう、人々は毒を傷口から入れていたのだ。
(毒の訓練は受けているはず。だけど、長期戦になればなるほど体が思うように動かなくなる。…長期戦は避けなければ…!)
ルーチェは飛んできた毒矢を避け、順番に首の後ろを打ち気を失わさせた。
とりあえず一掃すると
「無傷の者は、負傷者の補助にあたれ!」
という団長の声が聞こえた。
ルーチェは
「団長、治癒魔法の使用許可をお願いします。」
と、許可を求めに行った。
「許可する。」
そして、重傷者のもとへ行き、
「様態は?」
と、その場にいた騎士に聞いた。
「傷口からの毒による吐血、そして体全体の切り傷、そして意識が朦朧としています。」
「ありがとうございます。」
(毒は、治癒魔法のうちの解毒魔法を、切り傷はいつもので大丈夫そうね)
そして、順番に重傷者の治癒にあたっていった。
人数が多かったせいで少し時間はかかってしまったが、予定よりは早く終えることが出来た。

1人のボロボロの服を着た幼女がルーチェに話しかけた。
「おねえさん。ママも助けて…。」
と。ルーチェは、胸が痛くなった。
こんなにも幼い子が、話しかけにくいであろう騎士、しかも黒髪の者に話しかけたのだ。よっぽど辛かったのだろう。
しかし、ルーチェは迷った。
今は、陛下からの命令で制圧に来ている。
そこで、他のこともやっても良いものだろうか、と。
「行ってやれ。」
と、後ろから声がした。
「早急に戻ります。」
と、言うと、幼女に向けて
「お母様のところまで案内して頂けますか?」
と、言った。
幼女は、ルーチェの手を引っ張って連れていった。
そして幼女が家と思われる建物のドアを開けると、ベットひとつと机1つでいっぱいになるような狭い家だった。
そしてベットに母親と思われる女の人が寝ていた。
「お嬢さん、名前は?」
「私はヴィー。お母さんはアーエだよ。」
「分かったわ。ありがとう。」
と言うと、ヴィーの母親に近づき、
「アーエさん、起きれますか?」
と、呼びかけた。
が、返事は無い。
(魔法で探るしかないか…。)
すると、ルーチェは、アーエの額に触れ、原因を探った。
(栄養不足と、過労か…。それで体を崩してしまったのか。)
過労は、この先ルーチェの力では解決できないが、栄養不足は、貧しいことが原因であるから仕事を与えればいい。
(恐らく時間の割に給料が貰えないのだろうな…。可哀想だけどこれが事実か…。とりあえず、環境は後にして治さないと。)
ルーチェは、同じように治癒魔法を使った。
ルーチェは、ポケットから紙とペンを取り出し何か書いた。
「ヴィーさん。お母様が目を覚まされたらこちらをお渡し下さい。」
と言って、ヴィーに紙を渡した。
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