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アメリアの家の領地から遠い場所に住んでいるダルシムとアメリアが会えるのは数える程度だ。
しかしそれでもなんとか時間を工面して、ダルシムはアメリアに会いにやってきてくれる。
ダルシムはいつも一週間くらいアメリアの家に泊まるのだ。
その時の采配を今年からアメリアは親にまかされていたので大張り切りだった。
ダルシムが特に好きだという人参は異国のものまで取り寄せて、様々な調理で出せるよう指示をする。
異国のものだと黄色味が強いものや赤みが強いものだけでなく、紫色をしたものまで色々とあるのだな、と思わされた。
ダルシムが好きだというので、色々と調べていたら詳しくもなったものだ。
それと、パクチーなどのあまり使われない香味野菜も好きだという。
アメリアは少し苦手だけれど、ダルシムが好きだというのなら、とそれらも用意して、異国料理を存分に楽しんでもらおうと頑張って色々とレシピを集めたりもして。
厨房に指示をして、くるくると働くアメリアを、皆が「将来、いい女主人となるだろう」とおだててくれて気をよくしてしまった。
まるでダルシムの妻になったらこんな感じなのだろうか、と我ながらときめいてしまう。
いよいよ、ダルシムがジェラルド伯爵家に到着した。
1年ぶりに会ったダルシムは、記憶より大人びていて、緊張してしまってアメリアも上手く話せない。それはダルシムの方も同様らしく、ぎこちない婚約者たちを周囲は微笑ましく見守っていた。
「さっそくお食事にいたしましょうか」
ちょうど昼時の到着だったので、ダルシムをアメリアがエスコートするかのようにダイニングルームに連れていく。
何度も来ているジェラルド家ということで、ダイニングルームに到着する頃にはダルシムも緊張がほどけているようだったが、なぜだろうか、食卓に並ぶ品々を見た瞬間、彼は身構えている気がする。
好物を見て喜んでいるというようには見えない。
そのまま食事が始まったが、ダルシムはちゃんとそれぞれに口をつけはしたが、いつものようにお代わりを頼んだりせず、食後にお茶をすることもなく、その場を離れてしまった。
「ダルシム様、食欲がなかったのかしら」
「お疲れだったのでしょう」
アメリアとノアはそう話しあっていたが、ダルシムが外出着を着て出て行ったという話を侍従から聞くと驚きを隠せなかった。
「婚約者が住んでいる場所だから、少し見学してくるよ」
そう言って護衛一人だけを連れて町まで行ってしまったという。
「そういえば、ダルシム様は今までは当家の料理人の料理をお代わりされていたのに、今回初めてされませんでしたね」
ノアが昼食の様子を思い出しながら感想を言う。それはアメリアも気づいていた。もしかしたら彼がもっと欲しがるかもと、十分な量を用意させていたのが無駄になってしまったのだから。
「口に合わなかったのかしら……お好きだというものだけを用意したのに……それとも素人の私が余計なお願いをしたから、料理のバランスが狂ったとかあるかしら……」
「料理人たちはプロですから、そこは違うと思われます。ちゃんとダメでしたらダメと言うはずです」
しかし、ダルシムの食欲は日に日にどんどんと衰えていくようで、礼儀としてわきまえるだけの量のみ手をつけ、それ以外は口にしないようになっていった。
彼が実は大食漢であることを知るアメリアだけでなく、ジェラルド伯爵家の者も皆、彼を心配している中、事件が起きた。
本当だったら一週間滞在の予定だったのに、三日目の夜にとうとうアメリアはダルシムに言われてしまったのだった。「ごめん、ちょっと早いけど、明日領地に帰ることにするよ」と。
しかしそれでもなんとか時間を工面して、ダルシムはアメリアに会いにやってきてくれる。
ダルシムはいつも一週間くらいアメリアの家に泊まるのだ。
その時の采配を今年からアメリアは親にまかされていたので大張り切りだった。
ダルシムが特に好きだという人参は異国のものまで取り寄せて、様々な調理で出せるよう指示をする。
異国のものだと黄色味が強いものや赤みが強いものだけでなく、紫色をしたものまで色々とあるのだな、と思わされた。
ダルシムが好きだというので、色々と調べていたら詳しくもなったものだ。
それと、パクチーなどのあまり使われない香味野菜も好きだという。
アメリアは少し苦手だけれど、ダルシムが好きだというのなら、とそれらも用意して、異国料理を存分に楽しんでもらおうと頑張って色々とレシピを集めたりもして。
厨房に指示をして、くるくると働くアメリアを、皆が「将来、いい女主人となるだろう」とおだててくれて気をよくしてしまった。
まるでダルシムの妻になったらこんな感じなのだろうか、と我ながらときめいてしまう。
いよいよ、ダルシムがジェラルド伯爵家に到着した。
1年ぶりに会ったダルシムは、記憶より大人びていて、緊張してしまってアメリアも上手く話せない。それはダルシムの方も同様らしく、ぎこちない婚約者たちを周囲は微笑ましく見守っていた。
「さっそくお食事にいたしましょうか」
ちょうど昼時の到着だったので、ダルシムをアメリアがエスコートするかのようにダイニングルームに連れていく。
何度も来ているジェラルド家ということで、ダイニングルームに到着する頃にはダルシムも緊張がほどけているようだったが、なぜだろうか、食卓に並ぶ品々を見た瞬間、彼は身構えている気がする。
好物を見て喜んでいるというようには見えない。
そのまま食事が始まったが、ダルシムはちゃんとそれぞれに口をつけはしたが、いつものようにお代わりを頼んだりせず、食後にお茶をすることもなく、その場を離れてしまった。
「ダルシム様、食欲がなかったのかしら」
「お疲れだったのでしょう」
アメリアとノアはそう話しあっていたが、ダルシムが外出着を着て出て行ったという話を侍従から聞くと驚きを隠せなかった。
「婚約者が住んでいる場所だから、少し見学してくるよ」
そう言って護衛一人だけを連れて町まで行ってしまったという。
「そういえば、ダルシム様は今までは当家の料理人の料理をお代わりされていたのに、今回初めてされませんでしたね」
ノアが昼食の様子を思い出しながら感想を言う。それはアメリアも気づいていた。もしかしたら彼がもっと欲しがるかもと、十分な量を用意させていたのが無駄になってしまったのだから。
「口に合わなかったのかしら……お好きだというものだけを用意したのに……それとも素人の私が余計なお願いをしたから、料理のバランスが狂ったとかあるかしら……」
「料理人たちはプロですから、そこは違うと思われます。ちゃんとダメでしたらダメと言うはずです」
しかし、ダルシムの食欲は日に日にどんどんと衰えていくようで、礼儀としてわきまえるだけの量のみ手をつけ、それ以外は口にしないようになっていった。
彼が実は大食漢であることを知るアメリアだけでなく、ジェラルド伯爵家の者も皆、彼を心配している中、事件が起きた。
本当だったら一週間滞在の予定だったのに、三日目の夜にとうとうアメリアはダルシムに言われてしまったのだった。「ごめん、ちょっと早いけど、明日領地に帰ることにするよ」と。
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