幼馴染みを優先する婚約者にはうんざりだ

クレハ

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二章

いざ結婚式

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 ユウナと晴れの舞台を歩けないと分かってからのノアは、あからさまに落ち込み、そこだけどんより空気が澱んでいる。

 父親もシクシク泣きながら「父親なのに……」などとほざいていたが、そちらに関してはどの口が言うのかと誰もが無視である。

「相手が平民なら俺でも歩けたのに……」

 よほど今日の日のために頭の中でシミュレーションをしてきたのだろう。
 その後もブツブツなにやら文句を垂れ流していたため、母親が見かねて提案をする。

「それなら二回目のパーティーの時はノアがエスコートすればいいでしょう?」

 その言葉にはっとしたノアは、ぱあぁっと、天から光が差したように表情が明るくなった。

「その手があった!」

 先程までの落ち込みようはなんだったのかというぐらい元気を取り戻したノアに、全員がやれやれと肩をすくめた。

 今回のお披露目パーティは神殿での誓いの後、パーティーを行う。
 しかし、それはこれからユウナが貴族社会で生きていくための、顔を知ってもらうためのものだ。
 結婚を祝ってもらうためというよりは、貴族との繋がりを作るためという意味合いが強い。
 貴族がほとんどなので、正直堅苦しさしかない苦行である。

 それもあって、そのパーティーとは別に、学生時代の友人や親戚、顔見知りの近所の人やお得意様などを招待する、比較的に気安いパーティも行うことになっていた。
 こちらはホーエンツ伯爵家ではなく、生家であるシャロン家で行うつもりであった。
 ユウナも肩肘張らずに楽しめる、本当に親しい人達を呼んで行うこちらのパーティーの方が、ユウナはどちらかというと楽しみにしている。

 そして、貴族はほとんど出席しない、しても親しい人達なので、ノアがユウナをエスコートしようが文句を言う者など出てこないだろう。
 ただし、父親以外は。

「分かったならその表情を取り繕いなさい。ユウナの大事な結婚式なんですから」

「お祝いの日にそんな顔をするのはやめなさい」

「は、はい!」

 母親と祖母に叱られ、ノアはたじたじになっている。
 その時、扉がノックされる。

「ご準備が整いました」

 神殿の人が入ってくると一気に緊張がユウナを襲う。

「吐きそう……」

 心臓がどくどくと激しく鼓動し始めて、口から出てきそうな感覚に陥る。

「今からそんなことでどうするの」

 呆れ顔の母親がユウナの前に立つと、髪を崩さない慎重な手つきでユウナの頭を撫でる。

「今日のあなたは世界の誰より綺麗よ。自信を持って頑張りなさい」

「はい。ありがとうございます、母様」

 穏やかな母親の微笑みに、ユウナも幸せに満ちた笑みを返した。
 ユウナの表情はベールで隠され母親には見えていないが、それでもユウナの感謝の言葉とともにその表情は伝わっていたはずだ。


 先に家族は式が行われる祭壇の間へ向かい。
 ユウナは祖父にエスコートされてから、楽隊の奏でる厳かな曲に合わせ入場すると、その道の先に微笑みながらユウナを待ち望むリオが立っていた。

 祖父からリオへユウナの手が渡り、神官の前で神に誓いをする。
 用意された書類に名前を記し、それまでずっと下りたままだったベールがリオの手で上げられ、ユウナの手に口づける。

 そしてユウナとリオの婚姻が結ばれたことを神官が高らかに宣言すると、大きな拍手が起こった。

 とはいえ、来席しているのはほとんどが公爵家と伯爵家と縁のある貴族なので、顔は笑っていても心から祝ってくれているのはどれだけか分かったものではない。
 特に、公爵家の次男を婿に迎え、公爵家との縁を持ったユウナに対する妬み妬みは多いはずだ。
 値踏みさせているように感じるのはきっとユウナの気のせいではない。

 この後のパーティーを想像してげんなりしてくるが、隣にいるリオの顔を見上げればそんな思いもどこかに吹っ飛んだ。

「これで遠慮なく一緒にいられるね」

「あまり変わらない気がするけど、嬉しい」

 これまでリオが遠慮したことなどあっただろうかと思い返すが、今あえて深掘りする必要はないだろう。
 ユウナも名実ともにリオと結ばれることになって浮き足立っているのだから。




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