義妹が勝手に嫉妬し勝手に自滅していくのですが、私は悪くありませんよね?

クレハ

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アニスの転機

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 アニスはどこにでもいる普通の家だ。
 いや、普通よりは少し生活レベルは低かったかもしれない。

 なにせ父はアニスが赤子の頃に亡くなり、母親のレジーは女手一つでレジーを育てた。

 花屋で働いていたが、その給金はじゅうぶんではなく、いつもギリギリの生活だ。

 周りの子が新しい服を買ってもらったと嬉しそうにしていたのを見て、母にねだっても、母は申し訳なさそうな顔で謝るだけだった。

 いつも古着しか与えられない。
 それも、同じ年頃の子のお下がりだ。

 母は服を譲られる度に近所の人に頭を下げて嬉しそうにしていたが、同じ年頃の子がいらないという服を与えられるというのは、アニスのプライドを大きく傷付けていた。


 他の子は新しい服を買ってもらっているのに、何故自分は他人のお古を着なければならないのか。

 どうしてうちはこんなに貧乏なのかと、不満が募る。


 アニスはいつからか思うようになっていた。
 いつかのし上がってやる。
 お金持ちの相手と結婚して、この貧乏から脱出してやると。


 しかし、それは予想外にも早く転機が訪れた。


 母のレジーが再婚したい人がいると言いだしたのだ。

 アニスは勿論反対しなかった。
 しようはずがなかった。

 相手がどんなであれ、今よりは生活が良くなるだろうと、むしろ大歓迎だった。

 だが、相手はアニスの予想以上の人物だったのだ。


「実はね、相手の方は公爵家の方なのよ」

「うそ、公爵!? 公爵って貴族の人よね!?」


 身を乗り出して興奮気味に問い掛けるアニスに、レジーは頬を染めて頷いた。


「そうなのよ。それを聞いた時には私なんかじゃ相応しくないとお断りしたんだけど、相手の方はそんなこと気にしなくて良いって言って下さってね」

「当たり前じゃない! 玉の輿よ。断るなんてとんでもない!」


 やっとツキが巡ってく来た。
 アニスは湧き上がる感情を抑えるのに必死だった。


「いつ結婚するの? そしたら私達も公爵家で暮らせるのよね!?」


 古着をまとい、その日の食事にも困る底辺を歩いていた自分が貴族の仲間入り。
 アニスは歓喜に震えた。


「それはまだ分からないわ。あちらの方も私とは再婚でね。前妻の方との間にご息女がいらっしゃるの。アニスと同じ年の子よ。ご息女とも話をして了承をもらわなければ」

「それでその子が反対したらどうするの!?」

「それはまあ、仕方がないわ。大事な子供の意思を尊重したいというのはお互い譲れないことだから」

「そんな弱気でどうするのよ。乗り込んで居座っちゃえばこっちのものじゃない」

「アニス! なんてことを言うの」

「だって!」


 アニスは受け身なレジーにイライラとした。
 これを逃したら、この貧乏な生活から抜け出す機会なんて二度と来ないかもしれないというのに。

 
 なんとかできないものかと考えを巡らせるが、アニスの心配は意味がなく、向こうの娘も了承したことで母の再婚が叶った。



 自分はこれから貴族だ。
 しかも公爵のご令嬢なのだと、アニスは笑い出したくなった。


 決して貴族の一員になったわけではないと知らず。
 その身は平民のままだというのに。


 結婚前にしたレジーの話をきちんと聞いていれば理解できたはずなのだが、アニスは耳半分で聞いていたので理解していなかった。

 公爵家の者と結婚したからと言って、アニスが公爵の娘になれるわけではないのだと。






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