5 / 9
アニスの不満
しおりを挟む
やって来た公爵家は物語に出てくるお城のように広く、とても美しかった。
とてもじゃないが一個人の家とは思えない。
ここに住む人から見たら、アニスがこれまで住んでいた家などトイレと同じ位の大きさなのではないかとすら思えた。
アニスは少し悔しくなった。
自分がつらい生活を送っていた間、こんな夢のような世界で贅沢三昧をしている人間がいるんだと嫌でも理解させられて。
案内された部屋は一つ一つが豪華で、アニスの目を釘付けにした。
これからはここが自分の家になるのだ。
まるで夢のようだと吐息が漏れるのを止められない。
見ているだけで時間はあっという間に過ぎ、母と再婚した新しい父であるダンテルが入ってきた。
美丈夫な男性は、挨拶のために何度か会ったが、その度に惚れ惚れとした。
よくこんな男性を惚れさせたと、心の中で母に拍手を送る。
そんなダンテルと一緒に入ってきたのは同じ年頃の少女。
ティアという少女が母と挨拶しているのを、アニスはぽかんとした顔で見る。
アニスはそれなりに自分の容姿に自信があった。
近所でもよく可愛いと言われ、常に彼氏が尽きることはなかった。
それはアニスの自信となり、よく彼氏に貢がせていたものだ。
今アニスが着ているのも、そんな彼氏の一人に貢がせたワンピースで、アニスが持っている服の中では一番上等な物だった。
だが、目の前の少女はアニスを嘲笑うように、比べものにならない美しいドレスを着ていた。
その容姿もまた目を見張るもので。
絹糸のように艶やかな金糸の髪と、エメラルドグリーンの瞳。
まるで花の妖精と言われても納得してしてしまうほどに、可憐で可愛らしい子だった。
途端に湧き上がる感情。
ずるい、ずるい、ずるい。
こんなに可愛くて、ドレスまで綺麗で、公爵家のご令嬢。
何もかもがアニスと違っていた。
アニスのないものをたくさん持っていた。
自分と違わない年の少女だというのに、自分とのこの差はなんなのか。
自信満々で着てきたワンピースがとてもみすぼらしく、恥ずかしく思えて仕方がなかった。
悔しい、悔しい。
そんな感情がアニスの心を占める。
様子のおかしいアニスを、ティアは心配してくれたが、それすらうっとうしく思わず手を叩いてしまった。
母に怒られるが、とても謝る気にならなかった。
彼女が悪い。
まるで見せつけるかのようにそんな豪華なドレスを着てくるなんて。
まるでアニスを嘲笑っているかのように感じた。
それからなあなあで終わらせ、部屋に案内されたアニスは再度驚く。
以前の家など比べるべくもない綺麗な部屋。
調度品の一つ一つがとても可愛らしく、年頃の女性を意識して揃えられていた。
「こちらはアニス様のお部屋になります」
そう侍女が言ったことで、自分一人だけの部屋だと理解する。
今までは母と雑魚寝で、自分の部屋などなかった。
念願の自分だけの部屋。
先程の不機嫌が嘘のように昇華されていく。
「これも、これも、これも、全部? 全部私が使って良いの?」
今までは使うことなどできなかった化粧品。
クローゼットには新品の服が何着も入っていた。
「そちらは旦那様がご用意なさった物です。どうぞ、お好きになさってください」
この時、部屋を用意したのはティアとダンテルのはずなのに、侍女が服を用意したのはダンテルと、ダンテルの名前だけを告げたのは、公爵の人間ではないレジーやアニスの物は父になったダンテルの私財からまかなわれたからだ。
あくまで、ダンテルの再婚相手の連れ子でしかないのだが、大喜びしているアニスにその言葉の裏を読む力はなかった。
とてもじゃないが一個人の家とは思えない。
ここに住む人から見たら、アニスがこれまで住んでいた家などトイレと同じ位の大きさなのではないかとすら思えた。
アニスは少し悔しくなった。
自分がつらい生活を送っていた間、こんな夢のような世界で贅沢三昧をしている人間がいるんだと嫌でも理解させられて。
案内された部屋は一つ一つが豪華で、アニスの目を釘付けにした。
これからはここが自分の家になるのだ。
まるで夢のようだと吐息が漏れるのを止められない。
見ているだけで時間はあっという間に過ぎ、母と再婚した新しい父であるダンテルが入ってきた。
美丈夫な男性は、挨拶のために何度か会ったが、その度に惚れ惚れとした。
よくこんな男性を惚れさせたと、心の中で母に拍手を送る。
そんなダンテルと一緒に入ってきたのは同じ年頃の少女。
ティアという少女が母と挨拶しているのを、アニスはぽかんとした顔で見る。
アニスはそれなりに自分の容姿に自信があった。
近所でもよく可愛いと言われ、常に彼氏が尽きることはなかった。
それはアニスの自信となり、よく彼氏に貢がせていたものだ。
今アニスが着ているのも、そんな彼氏の一人に貢がせたワンピースで、アニスが持っている服の中では一番上等な物だった。
だが、目の前の少女はアニスを嘲笑うように、比べものにならない美しいドレスを着ていた。
その容姿もまた目を見張るもので。
絹糸のように艶やかな金糸の髪と、エメラルドグリーンの瞳。
まるで花の妖精と言われても納得してしてしまうほどに、可憐で可愛らしい子だった。
途端に湧き上がる感情。
ずるい、ずるい、ずるい。
こんなに可愛くて、ドレスまで綺麗で、公爵家のご令嬢。
何もかもがアニスと違っていた。
アニスのないものをたくさん持っていた。
自分と違わない年の少女だというのに、自分とのこの差はなんなのか。
自信満々で着てきたワンピースがとてもみすぼらしく、恥ずかしく思えて仕方がなかった。
悔しい、悔しい。
そんな感情がアニスの心を占める。
様子のおかしいアニスを、ティアは心配してくれたが、それすらうっとうしく思わず手を叩いてしまった。
母に怒られるが、とても謝る気にならなかった。
彼女が悪い。
まるで見せつけるかのようにそんな豪華なドレスを着てくるなんて。
まるでアニスを嘲笑っているかのように感じた。
それからなあなあで終わらせ、部屋に案内されたアニスは再度驚く。
以前の家など比べるべくもない綺麗な部屋。
調度品の一つ一つがとても可愛らしく、年頃の女性を意識して揃えられていた。
「こちらはアニス様のお部屋になります」
そう侍女が言ったことで、自分一人だけの部屋だと理解する。
今までは母と雑魚寝で、自分の部屋などなかった。
念願の自分だけの部屋。
先程の不機嫌が嘘のように昇華されていく。
「これも、これも、これも、全部? 全部私が使って良いの?」
今までは使うことなどできなかった化粧品。
クローゼットには新品の服が何着も入っていた。
「そちらは旦那様がご用意なさった物です。どうぞ、お好きになさってください」
この時、部屋を用意したのはティアとダンテルのはずなのに、侍女が服を用意したのはダンテルと、ダンテルの名前だけを告げたのは、公爵の人間ではないレジーやアニスの物は父になったダンテルの私財からまかなわれたからだ。
あくまで、ダンテルの再婚相手の連れ子でしかないのだが、大喜びしているアニスにその言葉の裏を読む力はなかった。
101
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果
京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。
ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。
知りませんでした?私再婚して公爵夫人になりました。
京月
恋愛
学生時代、家の事情で士爵に嫁がされたコリン。
他国への訪問で伯爵を射止めた幼馴染のミーザが帰ってきた。
「コリン、士爵も大変よね。領地なんてもらえないし、貴族も名前だけ」
「あらミーザ、知りませんでした?私再婚して公爵夫人になったのよ」
「え?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる