義妹が勝手に嫉妬し勝手に自滅していくのですが、私は悪くありませんよね?

クレハ

文字の大きさ
7 / 9

癇癪

しおりを挟む
 レジーとアニスはあくまで父の再婚相手と連れ子であり、公爵家の一員ではない。

 しかし、ティアが公爵として独り立ちできるようになるまではこの公爵家で過ごす以上、身分は平民とは言え、それなりのマナーを身につけてもらわなければ困るのだ。

 でなければ、それは父の恥となり、公爵家の恥になる。

 ティアもダンテルも、二人を社交の場に出すつもりは一切なかったが、公爵家ではよく茶会や夜会などが行われる。

 その時に招待客と鉢合わせた時にきちんと対応できなければ、レジーとアニスも恥をかくことになるのだ。
 平民だからと、そのままにはしておけない。

 早速マナー講師が呼ばれた。

 その女性ナーラは、ティアの教師も務めた信頼できる人で、この度の要請に喜んで駆け付けてくれたのだ。

 彼女がいれば大丈夫だなと、ティアもダンテルも安心しきっていたのだが……。


 少し様子を見に行こうとティアが執事長と廊下を歩いていると、二人がいる部屋からガシャンとなにかが割れる音と、悲鳴が聞こえてきた。

 ティアは執事長と顔を見合わせる。


「なにかしら?」

「様子を見て参ります」


 そう言って執事長が扉を開けた瞬間、部屋の中からなにか飛んできた。
 それは音を立てて壁にぶつかりガシャンと割れた。

 見てみると、それはマナーの勉強のために使っていたティーカップだ。

 こういうことは形から入ろうと、公爵家の中でも高級な分類に入るティーセットを用意していた。

 執事長からそれとなく値段を聞いていたレジーは顔を青ざめさせていたが、それ故に身が引き締まるだろうと貸し与えた。

 そんなティーカップが無残な姿に。

 ティアからしたらたくさんある食器の中の一つだが、執事長は頭を抱えて声なき悲鳴を上げている。
 そして、怒りの矛先を、部屋の中へぶつける。


「なにをなさっておいでですか!?」


 ずんずん入っていく執事長を見て、部屋の外からティアが覗くと、部屋は惨たんたる有様だった。

 テーブルクロスにはお茶に濡れぐちゃぐちゃになり、カップやソーサーは床で割れている。

 そして、その原因を作ったであろう犯人……アニスは、レジーに後ろから羽交い締めにされている。

 そして、いつもぴっちりとまとめているナーラの髪は乱れに乱れまくっていた。
 誰かに髪を掴まれ振り回されたかのような有様だった。

 これにはティアも口を挟まぬわけにはいかない。

 慌てて床に座り込むナーラに駆け寄る。


「ナーラ、大丈夫ですか!?」

「お、お嬢様……。え、ええ。私はだ丈夫でございます」

「何があったのです?」

「それが、マナーの授業をしていたら、突然アニス様が癇癪を起こし、食器を投げて暴れ出しまして……」


 驚いて羽交い締めにされているアニスを見れば、「違うわよ!」と叫ぶ。


「その女がねちねちねちねち細かく私を虐めるから怒っただけでしょう!」


 それにはすかさずナーラが反論した。


「虐めているのではございません。マナーをお教えしているだけです」

「虐めよ虐め。持つ手の角度とか、大きな口で食べるなとか、そんなのどうでも良いじゃない! しゃべり方が悪いとかほっとけ! 一々口うるさいのよ」

「アニスさん。ナーラはマナーをお教えするために来て下さっているのです。確かに厳しい方ですが、決して虐めを行うような方ではありません。それに、だからと言って食器を投げつけるなど、誰かに当たりでもしたら……」


 懇々と諭すティアを、アニスは睨み付けた。


「うるさいわね! 私に命令しないで!」


 ティアは深い溜息を吐いた。
 興奮しているアニスに何を言っても聞き入れはしないだろう。

 同じ年齢のアニスから言うよりは、父から言った方が聞き入れるかもしれない。

 そう思ったティアは、座り込むナーラに手を貸して立たせた。


「ナーラ。申し訳ございません。今日はこれ以上続けるのは不可能なようです」

「そうでございますね」

「できれば続けて欲しいと思いますが、こんなことがあった以上無理強いはいたしません」

「少し考えさせてください……」


 すぐに断られなかったことに安堵し、ナーラを騒ぎを聞きつけてやって来た侍女に預けた。



しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果

京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。 ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

知りませんでした?私再婚して公爵夫人になりました。

京月
恋愛
学生時代、家の事情で士爵に嫁がされたコリン。 他国への訪問で伯爵を射止めた幼馴染のミーザが帰ってきた。 「コリン、士爵も大変よね。領地なんてもらえないし、貴族も名前だけ」 「あらミーザ、知りませんでした?私再婚して公爵夫人になったのよ」 「え?」

父は、義妹と義母の味方なのだと思っていましたが、どうも違っていたようです

珠宮さくら
恋愛
1話完結。短いです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...