ただの遊び相手が欲しくてかまちょしてたら専属メイドになった~ただ、遊んでもらってただけなのに!!!~

陽控優亜

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無礼者!!!

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「ぶ、無礼者!!!」
坊ちゃまの初めて聞いた声はこの一言だった。
「わあぁ!!!」
思わず坊ちゃまに抱き着く。
「は、離れろ!!」
声を出せないのかと思ったけど違ったみたい。
いい匂い。
「匂いをかぐな!!」
首根っこを掴まれて離される。
顔が真っ赤だけど熱いのかな??
というか、ここは寝室??
坊ちゃまの部屋なのかな。
きょろきょろと見てみるけれどあまり物がない、シンプルな部屋。
そして薄暗い。
私はベットから降りると走って部屋中にあるカーテンを開けまくった。
ついでに窓も。
あ、坊ちゃまの匂いは、お花の匂いだ。
窓から入ってくるそよ風。
それは、花や木。森の匂いだった。
「何、勝手に開けてるの」
明るくなった部屋の真ん中。
プラチナブロンドの長い髪に、アクアブルーの瞳。
絵本の中の王子様みたいにかっこいい。
「坊ちゃまは、いったい誰の王子様なんでしょうね」
私が笑って言えば少し怒ったように坊ちゃまは言った。
「僕は王子じゃない。この国にはすでに王子がいるのだから」
そうなんだ。
でも。
「それじゃぁ、坊ちゃまは私だけの王子様ですね!!」
笑って言えば坊ちゃまは何も言わず私の頭をぐしゃぐしゃにした。
前がよく見えなくてかき分けたら目を隠されて。
「誰にもそれを言うなよ」
小さな声で坊ちゃまは言った。
顔は見えない。
声からは感情がわからない。
ただ、坊ちゃまの声が聞けるのが。
頭を触ってくれるのが。
すごくうれしかった。
「はい!!」
置かれてる手を握って元気に返事する。
これからも、坊ちゃまと話していたい。
遊んでほしい。
私は。



「ジャスミン!!早くこれを運んで!!」
「ジャスミン、落とすんじゃないよ!!」
「ぼさっとするな、クソガキが!!」
ばたばたと走り回る。
今日は、坊ちゃまのところに行けるかな。
ううん、絶対に行く。
毎日増えていく仕事。
小さな体で運べない重い荷物。
引きずることも出きずふらつきながら運ぶ。
運び終わったらまた別のもの。
使用人の中で一番小さく、奥様が好意で雇ってくれたのもあり、他の人からは嫌われてる。
わぞと転ばされたり、お昼ごはんが抜きだったり。
あとは、水をかけられたり。
手が赤くなる。
肌が弱いのもあってあまり重いものは持てない。
腕も手も震える。
「痛いっ」
手のひらの皮がむけてる。
慌てて手をエプロンに巻き付ける。
これで、荷物に血はつかない。
これさえ運び終われば坊ちゃまのところに行ける。
急いで運んで坊ちゃまのいる小さな屋敷へと行く。
「お前、気持ち悪いんだよ!!」
大きな声が聞こえて、坊ちゃまが突き飛ばされていた。
「坊ちゃま!!!」
私が駆けつけると知らない人たちがいた。
この人たちが。
坊ちゃまは何も言わない。
何も言わずにうつむいてる。
感情のない目。
許さない。
私は血だらけの手を知らない人たちの顔や服につける。
「うえあぁ!!」
「血!!」
「いやぁ!!お気に入りのドレスが!!」
誰もが後ずさる中私は大きな声で言った。
「無礼者!!!」
私は涙が出てきた。
「次、こんなことしようものなら私が相手よ!!あなたたちみたいな令息・令嬢なんて弱いんだから!!こんな卑怯な真似しかできない人間が上に立つだなんて誰も願わないわ!!!」
私の声に手の血に。
顔を青くする人たち。
私が血がでてる手を突き出せば逃げ出した。
「坊ちゃま、大丈夫で、」
私が振り返っていう途中、坊ちゃまに持ち上げられた。
???
そのまま坊ちゃまの屋敷に連れていかれソファに下ろされる。
どこかに行ったかと思えばすぐに戻ってきて、私の手に薬を塗り始めた。
「自分でできます!!」
手をひっこめようとするけれど、坊ちゃまは離してくれない。
「どこで、覚えたんだ」
ぽつりと坊ちゃまが呟いた。
何かわからず黙っていると坊ちゃまはふと笑い私を見る。
「あぁ。僕から覚えたのか」
くすくすと笑う姿はとても可愛らしくて。
握られてる手がすごく温かい。
「私はこれから、たくさん言葉を覚えます。坊ちゃまに会う言葉も見つけます。これからもたくさんお話ししたいから。だから、これからも坊ちゃまの真似はします!!」
私はそこまでいうと眉間にしわを寄せて少し不機嫌そうに顔をしかめて。
すると坊ちゃまも笑いながら私のおでこに坊ちゃまのおでこをくっつけて。
「「この無礼者!!!」」
2人同時におかしくて一緒に笑った。
私にとってのおまじない。
坊ちゃまとの楽しい思い出の言葉。
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