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7話
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「あっはは……俺初めて見た、セックスで熱出すやつ」
「うるっさい…マジでうるさい、情けなくて死にそうなんだから笑わないでって………」
翌朝、やたらと身体が重くて起き上がれなかった。
体力を使ったし疲れているのかな、と思って無理に起きて朝食の準備をしようとして、足元がフラフラして僕はぶっ倒れた。
その音で夏樹が起きてきて、ベッドに引きずり戻されて、なんかお前熱くない?と体温計を渡され、熱を出していたことが発覚したのだ。
ちなみに他の不調は一切なし、どこも痛くないし咳も出ないし食欲もある。
お前これ知恵熱じゃん!童貞捨てたから!?と夏樹が大笑いしていた。
「…風邪かもしれないし、夏樹帰っていいよ。移したくないし」
「遠慮しないでいいよ。風邪だったら多分、昨日のでもう移ってると思うし。楓も食欲あるならなんか朝飯作るけど」
「作れるの?夏樹」
「作れるよ…一応一人暮らししてるからね俺だって」
そう言って、ちょっと楽しそうに夏樹がキッチンに向かっていった。
いつもご飯は僕が用意していて、夏樹もそれが当たり前みたいに過ごしていたから意外だった。
扉の向こうからじゅうじゅう火を使う音がする。多分卵を焼いているな。ちゃんと奥の賞味期限が近いものから使ってくれているかな。
やたらとご機嫌な夏樹の鼻歌が聞こえてくる。
知っている曲だった。高校生の時に2人で夏フェスに行った時に僕が観に行ったバンドの曲だ。
確か夏樹はそのバンドのことは別に好きじゃなくて、ただ僕に連れられていただけだった。鼻歌で歌えるくらい聴くようになっていたことは知らなかった。
うとうと微睡みながら聴いていたら、いつのまにか出来上がっていたらしい。
夏樹がテーブルに料理を並べていた。
ウィンナーと卵焼き、インスタントの味噌汁とパックのご飯だった。
冷凍してあるご飯はあったんだけど、夏樹が用意してくれたのだからもうなんでもよかった。
「さすがに、楓の卵焼きほど綺麗にはできないや」
「いや充分綺麗じゃん、よく作るの?」
「全然!見様見真似でやった」
ほんの少し焦げた卵焼きは、確かに僕が作る卵焼きより一層が厚くて隙間があって不恰好だったけど、十分綺麗な見た目だった。
夏樹は何をやっても最初から70点くらい出来るタイプで、料理も同じみたいだった。嬉しかったけど、悔しいなあと思った。
手を伸ばして、まだ温かい卵焼きを取る。持ち上げるとほんのちょっと形が崩れた。
ぼろぼろになる前に口に運ぶ。
「…あれ、甘くないんだ」
「うん、楓ん家の卵焼きってしょっぱかったじゃん。そっちのが好きでしょ」
「そうだったけど、…よく覚えてるね」
「まあね。味どう?」
「美味いよ。普通に美味い」
「よかった~楓に言われると安心する!」
焼き目のついた卵焼きは、本音を言えばちょっと塩辛い。僕が本当に好きなのは、塩はひとつまみより少ないくらいの薄味の卵焼きだった。
でも、夏樹が僕の好みを覚えていたのが嬉しかった。
…じゃあ僕が夏樹に合わせて味付けしていたことも、こいつはもしかしたら気が付いていたのかもしれないんだ。
「ウインナー脂っこい、失敗したかも」
「あはは、これ焼くなら油しかない方がいいんだよ、ギトギトになっちゃうから」
「へえー。いろいろ考えて料理してんだね、楓って」
「別に…慣れだよ」
食べ終えた食器を片付けようとしたが、俺がやると言って夏樹に寝かされた。また鼻歌が遠くから聞こえる。なんだからやけに機嫌が良いようだった。
身体も頭も重たくて、ベッドに入ってぼーっとしていた。
夏樹とあんなことをしたのに、いつも通りでいられたのは、熱で思考が散漫になっているからかもしれないなと思った。あとで熱が下がったら、シーツも洗わないといけない。
しばらくして夏樹が部屋に戻ってきた。
手にタオルを持っていて、どうするんだろうと思って見ていたら額に乗せられる。濡らしたタオルは冷たくて気持ちよかった。
「俺冷えピタよりこっちのが好きなんだよね。なんか気持ちよくない?」
「気持ちいい。あは、今日は色々やってくれるね」
「…そりゃ、弱ってるところ見たらさ」
夏樹が端に腰をかけて、その重みでベッドが軋んだ。
そのまま退屈そうにスマホを触り出す。
「帰っても大丈夫だよ、別に」
「いいよ。お前体調悪い時1人になるのすごい嫌がってたじゃん。帰らないでって泣かれたことあったし」
「いつの話?それ」
「中学くらい?…リエちゃんが仕事忙しくて全然帰ってこなかった時期だよ」
リエとは僕の母親のことだった。
夏樹は僕の母親とも何故か仲が良くて、いつの間にか名前で呼んでいた。
バイトでもやたらと主婦層の社員に可愛がられていたので、年上と距離を詰めるのが上手いのかもしれない。
僕の家は、海外出張の多い父親はほとんど家にいなくて、母親も仕事人間で家を空けることが多かった。
家族仲が悪いわけでは無かったが、いわゆる鍵っ子だった僕は夏樹にも、夏樹の家族にもよく世話をしてもらっていた。
「それにまあ…俺のせいみたいなところあるし。お前すごいよ、普通友達とヤったらその後結構気まずくなるのに、先手打って熱出しちゃうんだもんな。面白くてどうでもよくなっちゃったじゃん」
「おもしろって言ったなお前」
「おもしろいだろ初エッチでその後熱出すって…あはは、俺が相手で良かったね。あっ添い寝してあげよっか?」
「添い寝って……まあ、嬉しいけど」
「嬉しいのかよ」
けらけら笑いながら夏樹がベッドに潜りこんできた。
一気に狭くなったかわりに、すぐに布団の中が温まる。多分夏樹は体温が高いんだと思う。すごいなあと思ったら、一気にまた眠気が襲ってきた。
しばらく隣でスマホゲームをしていた夏樹が、手を止めて寝返りを打つ。僕の方を向いてきたから少し驚いた。
「……なに、どうしたの」
「別に、なんとなく」
近い距離から視線を感じて少し緊張したけど、それより今は眠気の方が勝るみたいで、瞼が落ちていく。
目を瞑っていても、夏樹がずり落ちたタオルを戻すのが分かった。優しくされるのが心地よくて、いつのまにか眠っていた。
「うるっさい…マジでうるさい、情けなくて死にそうなんだから笑わないでって………」
翌朝、やたらと身体が重くて起き上がれなかった。
体力を使ったし疲れているのかな、と思って無理に起きて朝食の準備をしようとして、足元がフラフラして僕はぶっ倒れた。
その音で夏樹が起きてきて、ベッドに引きずり戻されて、なんかお前熱くない?と体温計を渡され、熱を出していたことが発覚したのだ。
ちなみに他の不調は一切なし、どこも痛くないし咳も出ないし食欲もある。
お前これ知恵熱じゃん!童貞捨てたから!?と夏樹が大笑いしていた。
「…風邪かもしれないし、夏樹帰っていいよ。移したくないし」
「遠慮しないでいいよ。風邪だったら多分、昨日のでもう移ってると思うし。楓も食欲あるならなんか朝飯作るけど」
「作れるの?夏樹」
「作れるよ…一応一人暮らししてるからね俺だって」
そう言って、ちょっと楽しそうに夏樹がキッチンに向かっていった。
いつもご飯は僕が用意していて、夏樹もそれが当たり前みたいに過ごしていたから意外だった。
扉の向こうからじゅうじゅう火を使う音がする。多分卵を焼いているな。ちゃんと奥の賞味期限が近いものから使ってくれているかな。
やたらとご機嫌な夏樹の鼻歌が聞こえてくる。
知っている曲だった。高校生の時に2人で夏フェスに行った時に僕が観に行ったバンドの曲だ。
確か夏樹はそのバンドのことは別に好きじゃなくて、ただ僕に連れられていただけだった。鼻歌で歌えるくらい聴くようになっていたことは知らなかった。
うとうと微睡みながら聴いていたら、いつのまにか出来上がっていたらしい。
夏樹がテーブルに料理を並べていた。
ウィンナーと卵焼き、インスタントの味噌汁とパックのご飯だった。
冷凍してあるご飯はあったんだけど、夏樹が用意してくれたのだからもうなんでもよかった。
「さすがに、楓の卵焼きほど綺麗にはできないや」
「いや充分綺麗じゃん、よく作るの?」
「全然!見様見真似でやった」
ほんの少し焦げた卵焼きは、確かに僕が作る卵焼きより一層が厚くて隙間があって不恰好だったけど、十分綺麗な見た目だった。
夏樹は何をやっても最初から70点くらい出来るタイプで、料理も同じみたいだった。嬉しかったけど、悔しいなあと思った。
手を伸ばして、まだ温かい卵焼きを取る。持ち上げるとほんのちょっと形が崩れた。
ぼろぼろになる前に口に運ぶ。
「…あれ、甘くないんだ」
「うん、楓ん家の卵焼きってしょっぱかったじゃん。そっちのが好きでしょ」
「そうだったけど、…よく覚えてるね」
「まあね。味どう?」
「美味いよ。普通に美味い」
「よかった~楓に言われると安心する!」
焼き目のついた卵焼きは、本音を言えばちょっと塩辛い。僕が本当に好きなのは、塩はひとつまみより少ないくらいの薄味の卵焼きだった。
でも、夏樹が僕の好みを覚えていたのが嬉しかった。
…じゃあ僕が夏樹に合わせて味付けしていたことも、こいつはもしかしたら気が付いていたのかもしれないんだ。
「ウインナー脂っこい、失敗したかも」
「あはは、これ焼くなら油しかない方がいいんだよ、ギトギトになっちゃうから」
「へえー。いろいろ考えて料理してんだね、楓って」
「別に…慣れだよ」
食べ終えた食器を片付けようとしたが、俺がやると言って夏樹に寝かされた。また鼻歌が遠くから聞こえる。なんだからやけに機嫌が良いようだった。
身体も頭も重たくて、ベッドに入ってぼーっとしていた。
夏樹とあんなことをしたのに、いつも通りでいられたのは、熱で思考が散漫になっているからかもしれないなと思った。あとで熱が下がったら、シーツも洗わないといけない。
しばらくして夏樹が部屋に戻ってきた。
手にタオルを持っていて、どうするんだろうと思って見ていたら額に乗せられる。濡らしたタオルは冷たくて気持ちよかった。
「俺冷えピタよりこっちのが好きなんだよね。なんか気持ちよくない?」
「気持ちいい。あは、今日は色々やってくれるね」
「…そりゃ、弱ってるところ見たらさ」
夏樹が端に腰をかけて、その重みでベッドが軋んだ。
そのまま退屈そうにスマホを触り出す。
「帰っても大丈夫だよ、別に」
「いいよ。お前体調悪い時1人になるのすごい嫌がってたじゃん。帰らないでって泣かれたことあったし」
「いつの話?それ」
「中学くらい?…リエちゃんが仕事忙しくて全然帰ってこなかった時期だよ」
リエとは僕の母親のことだった。
夏樹は僕の母親とも何故か仲が良くて、いつの間にか名前で呼んでいた。
バイトでもやたらと主婦層の社員に可愛がられていたので、年上と距離を詰めるのが上手いのかもしれない。
僕の家は、海外出張の多い父親はほとんど家にいなくて、母親も仕事人間で家を空けることが多かった。
家族仲が悪いわけでは無かったが、いわゆる鍵っ子だった僕は夏樹にも、夏樹の家族にもよく世話をしてもらっていた。
「それにまあ…俺のせいみたいなところあるし。お前すごいよ、普通友達とヤったらその後結構気まずくなるのに、先手打って熱出しちゃうんだもんな。面白くてどうでもよくなっちゃったじゃん」
「おもしろって言ったなお前」
「おもしろいだろ初エッチでその後熱出すって…あはは、俺が相手で良かったね。あっ添い寝してあげよっか?」
「添い寝って……まあ、嬉しいけど」
「嬉しいのかよ」
けらけら笑いながら夏樹がベッドに潜りこんできた。
一気に狭くなったかわりに、すぐに布団の中が温まる。多分夏樹は体温が高いんだと思う。すごいなあと思ったら、一気にまた眠気が襲ってきた。
しばらく隣でスマホゲームをしていた夏樹が、手を止めて寝返りを打つ。僕の方を向いてきたから少し驚いた。
「……なに、どうしたの」
「別に、なんとなく」
近い距離から視線を感じて少し緊張したけど、それより今は眠気の方が勝るみたいで、瞼が落ちていく。
目を瞑っていても、夏樹がずり落ちたタオルを戻すのが分かった。優しくされるのが心地よくて、いつのまにか眠っていた。
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