ぼくらの国防大作戦

坂ノ内 佐吉

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第四章

Chapter.11 作戦A

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 作戦A

 夜になり、幸来紗と一日観光した美智はホテルに戻った。
「ただいま、みんな」
「おかえり、みっちー」、「おかえり」智成に続いて周人が言う。
 三人はホテルのレストランで腰を下ろした。
「あれ、ゆってぃは?」
「下痢して寝込んでる。少しでも動くと出てきちゃうってさ」
 智成は、少し笑いながら言う。
「あら、お気の毒。とりあえずお腹すいたから、なんか注文しようよ。結果報告はゆってぃがいる時の方がいいでしょ」
 三人がカレーを食べていると、友杏が降りてきた。顔はゲッソリしている。
「友杏さん、大丈夫ですか?」周人が心配そうに訊ねる。
「今はなんとかね。もう、最悪だわ。入れたものがそのまま出ていく……」
 友杏はチャイを注文し、四人は本題に入る。
「それで、どうだった? みっちー」智成は待ち遠しそうに訊ねる。
「いや、いや、やっぱり無理だよ。そもそも、まだ信じてないもん。でも、あの手紙は渡しておいたから、この後、スムーズに信じてくれればいいけど」
「あの手紙を見れば信じるよ。もうちょっと気長に待とう」
 友杏はお腹をおさえながら、チャイをすする。
「そんな、いきなり信じられるような話じゃないしな」智成が言うと、周人が
「想定内だよ」と続いて言う。
「話した感じ、周人くんを愛したとしても、幸来紗を説得するのも、思ってたより難しいかも。あの子自身が相当リベラルだから。そして、お父さんは更にリベラル。更に難題だよ」
「ちゃんと話をすれば分かってくれるんじゃないかな?」周人が言うと、
「それが本当に愛する人の言う事なら可能かもね」と美智は周人を上目遣いで見る。
「未来の話は多分信じると思うから、今は反応を待ちましょう。時間はあるからさ、焦らず確実に任務を遂行していこうよ」友杏が言うと、三人は頷く。

 幸来紗は宿舎に帰ると、美智からもらった手紙を開けた。
『親愛なる幸来紗へ。突然、変なこと言ったから、びっくりしたでしょ。頭がおかしくなったんじゃないかって思ったでしょ? 安心して。私は大丈夫だから。とても信じられることじゃないのは分かるんだけど、本当のことなの。下に明日から一週間、世界中で起こる出来事(松田さんから聞いた情報)を書いておくね。信じられないと思うけど、当たるから確認してみて欲しい。なんか、信じさせようとしてるみたいで押しつけがましくてごめんね』
 そう書かれた後には、世界中で一週間以内に起こる出来事が書いてある。幸来紗はため息をついて、手紙をしまった。
 翌日の夜、幸来紗は宿舎のパソコンでネットニュースを開いた。手紙に、その日の起こることは、『テロ組織○〇○が人質34人を解放』と書かれていた。
幸来紗は同じ記事を探すと目を見開いた。
「当たってる……。もう嘘でしょ」とつぶやく。 
 ―偶然かも、テロ組織○○○が人質を解放しそうな気配はあった。でも、人数まで当たるなんて。
 翌日の夜も、幸来紗はニュースを確認する。手紙には『山口県の保育園で、保育士が園児に刃物を向ける。保育士はしつけのためだったと供述』と書かれてあり、またも、幸来紗は同じ内容のニュースを発見する。
 ―もう、なんなの。こんな小さなニュースまで。
 
 九日目、幸来紗は休みで、美智のホテルを訪ねた。周人は幸来紗がホテルに入るところを偶然見かけるが、気づかれないように隠れる。美智はホテルのレストランで座って待っていると、幸来紗が入ってきて、テーブルを挟んで腰を下ろす。
「おはよう。幸来紗」
「おはよう。なんか、いいホテルに泊まってるじゃん!」
「うん、思っていたよりインドの物価が安かったから奮発しちゃった。ベトナムなんかでは、一泊、千円もしない安宿ばっかり泊ってたのにね。幸来紗、お嬢さんなのに、いいホテルに泊まったらその国らしさが分からないよ、とか言っちゃって、まったく贅沢しようとはしなったよね」
「そうだったね」二人は昔を懐かしみ笑った。
「そんなことより、なんなのあの手紙。当たってるじゃん!」
 幸来紗は、少し興ざめした表情に変わった。
「ごめん。びっくりしたよね。でも、確実に信じるかなって思って」
「あんなの当てられたら、信じざるを得なくなっちゃうよ。それで、今日は千葉県で工場火災があるって?」
「そうだっけ、もうニュースで出てるかな? 日本は1時くらいか」
 美智はスマホで検索する。
「ビンゴ!」美智は、指を鳴らしながら言う。
「やっぱり当たってるんだ…… はいはい、分かった。もう信じますよ」
「信じられないと思うけど、この間、私が話したこともすべて真実なんだよ」
 幸来紗は、まだ完全には頭が整理できていないような様子だ。
「とりあえず、ご飯食べようよ。ここのカレー、けっこう美味しいよ」
 美智は、幸来紗の心境に配慮して、リラックスさせようとする。
 カレーを食べ終わり、チャイを飲んでいると、幸来紗から話を切り出す。
「それでさ、この間、国防を強化するべきだって、美智は言ったじゃん。もっと具体的には何か考えがあるの?」
「そうだな…… 国家予算に対する国防費の割合を上げるとか…… あと、美智は反対しそうだけど、核保有するとか」美智は、喉が詰まる感じがしたが、核の話題を出した。
「えっ、核保有? そんなの絶対にダメだよ。私、ひいおばあちゃんを原爆で亡くしてるの知ってるでしょ? お父さんから見たら祖母を亡くしたんだよ。原爆を憎んでる超核反対派だよ」
「う、うん、そうだよね…… でもね、幸来紗、歴史を見ると、核が開発されてから戦争の頻度は減って、犠牲者も減ってるみたいだよ。核抑止力で核を持ってる国に対しては攻撃できないって」
「……そうなんだ。でも、それには賛成できないな。あと、国防を強化すればいいっていうのも、コンチャウとかの敵対心を煽ると思うよ。少なくともお父さんはそう考えていて、絶対に折れないと思う。私は小さい頃から、その思想をさんざん言い聞かされて育った。洗脳もあるかもしれないけど、私も同じ考えだから」
 幸来紗は拒否感を抱いているような反応をする。
「うん、分かった。あの歴史書、あの後も読んだ?」
「あの手紙の事件が当たっているのを知った後、読み直したけど、妙に説得力あるよね。……もう、美智のこと信じているから。美智があんな話をし始めた時は、本当に頭がおかしくなっちゃったと思って心配したんだよ」
 幸来紗は安堵の表情を浮かべる。
「ありがとう。まあ、考え変わったら言ってね」
「そうだ、学校の責任者に、手伝ってくれる友達がいるんだけど、って伝えたら、週に3日くらいまでなら問題ないって、私の英語の授業の助手でもいいし、レクリエーションをやるとか、何か日本の遊びとか教えてあげてもいいって」幸来紗は、話を切り替える。
「本当? 少し緊張するけど、いっちょやってみるかな」美智は、調子に乗って言う。
「幸来紗、この後、どうする? また、どこか案内してよ」
「そうだね、じゃあ行こうか。死体が焼けていくところ見てみたい? ガンジス河で見れるよ」
「本当に? それは貴重な体験だな。行こう。行こう」
 二人はホテルを後にした。

 夕方、美智はホテルに戻り、四人はミーティングするためにレストランに集まる。
「朝、幸来紗ちゃんがホテルに来た時さ、見かけたよ。見つからないように、すぐ隠れたけど」
 周人が美智に知らせる。
「まだ、君たちはインドに来ていないことになってるからね。気を付けて。……それで、みっちー、幸来紗ちゃんはどうだった?」友杏が訊く。
「完全に私の話は信じたけどね。でも、やっぱ無理だよ。もうちょっと押そうと思ったけど、説得させられるだけの知識もないし、やめといた」
 ひとりだけの力じゃ無理だと、美智は、ほぼあきらめている。
「押さないでいいよ。こんな非現実的な話、あんまり押すとパニクる恐れがあるでしょ」智成は言う。
「そうか……、じゃあ、次のステップに移行しますか」
 本腰を入れるように言う友杏に対し、三人は小さく頷いた。
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