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第二章
第二十五話 おやつ配達便①
『えっさえっさ! えっさえっさ!』
甘味を求める声が騒がしいダナン伯爵邸を離れ、ロックス伯爵領へ到着したジョウの眷属は、目的地への経路を順調に進んでいた時、ふと思い出す。
(そう言えば……エイル殿たちは、あの後どうしたのだろう?)
眷属である彼は、ジョウの記憶も同調している。つまり、あの昨夜の密談(19話)も、全て記憶にあるのだ。
❖夜も更けた昨晩のこと――
ミオに内緒で行われた前夜(19話)の話し合いは、ウルシア様の出現により、宰相の権限を完全に超えてしまった。
そのため、ウルシア様帰還後に、エイルの転移で王城に場所を移した。
フリータール国王――フィリップス・フォン・フリータールは、真夜中にも関わらず叩き起こされ、ロックス伯爵家で起きた事の経緯を聞かされる。
フリータール王家の臣下――ロックス伯爵の反逆行為とも思える内容に、フィリップスはお腹一杯だった。
それなのに、賢者――エイルは、ウルシア様の簡易版神託という羊皮紙を顔の前に掲げられては、彼も、悠長なことを言う暇はなかっただろう。
「余にしか見えぬ神託と言われたら、叩き起こされるのも致し方ない。しかしこれら全てを承諾するのは……」
「ウルシア様の意に逆らうと?」
「違う! そうは言っておらん! これら全てを承諾するのは簡単だ。だが、その後が問題なのだ。魔従族が使用した言葉を引用する訳ではないが、正に『言うは易く行うは難し《いうはやすく、おこなうはかたし》』だ!」
「それは、国王である貴方と宰相であるダニーロたちの仕事でしょう?」
「……」
一応同席している辺境伯ロレンツォだが、ここで口を挟むのは藪蛇である。ひいては、こちらに火の粉が飛びかねない。
「せめて……この神託が余以外にも見えれば、貴族たちを説得する手段にもなるというのに」
しょぼんとした様子で、丸められた簡易版神託を手に取る王――フィリップス。
「……」
「え!?」
するすると開いた羊皮紙を視界に収めたダニーロが声を上げた。
「どうした? 宰相」
「みっ! 見えますぞ!?」
「……ほんとか?」
「はい! 先ほどは、確かに見えなかったのに! 今は、はっきりと記された文字が見えますぞ!」
好奇心旺盛な男性たち――エイル、ダニーロ、ロレンツォは、寝惚け眼なフィリップスが神託を見る際、フィリップスの後ろに陣取り、一緒に見たのだが……フィリップス以外は真っ白な羊皮紙にしか見えなかったのである。
『フィリップスの要望に応えて、皆に見えるようにしたわよ! これで、お願いね!』
「「「「「…っ!?」」」」」
国王フィリップス、宰相ダニーロ、賢者エイル、辺境伯ロレンツォ、ジョウの脳内に響いた言葉に、国王フィリップス以外が床に膝を着いた。
「え? 余の頭に喋りかけるのは、誰なんだ?」
「陛下! 女神ウルシア様の声ですぞ!?」
「なに!? ……お力添え頂きありがとうございます! これで、貴族たちを説得できます」
床に膝を着く三人とは違い、頭を下げて感謝を述べるフィリップス。
『声だけなんだから、楽にしてちょうだい。でもこれで、目一杯活用できるでしょう?』
「勿体ないお言葉!」
羊皮紙に現れた神託の文言は、今は誰の目にも見えている。これで、隙あらば文句を言う貴族もいないだろう。
彼にしてみれば、仕事がやりやすくなったのだ。感謝しかなかった。
『ふふふっ!? そんなに肩肘張らなくても、エイルの高級ポーションの前例があるんだもの。遠慮はいらないわ』
「……へ?」
呆けた声を上げるフィリップスの脳内に、明快に笑うウルシアの声が響き。
「そうだった……私もその経験者だった」
脳内に響くウルシアの声に、走馬灯のように思い出した宰相ダニーロ。
「「……」」
映像元の辺境伯ロレンツォと、ウルシアに使用許可を願い出たエイルは、明後日の方向を向いて、我関せずの姿勢を通すらしい。
(声だけとはいえ、先ほども来られたばかりだというのに――ウルシア様も、ミオのことが気になって仕方ないようだな)
国王フィリップスに気付かれぬように、小さく鼻を鳴らすジョウ。
今夜のジョウは、ミオに内緒で行動しているため、国王に会うことを嫌がった。そのため、ジョウはエイルのマントに隠れる大きさへ身体を縮ませているのだ。
「「「「……」」」」
寝耳に水のフィリップスと、体験済みのダニーロ。
偶然の副産物とはいえ、女神を隠し撮りしたことになるロレンツォ。そしてその映像を、ここぞとばかりに使い倒したエイル。
なんとも言えない空気が、室内に流れるのだった。
甘味を求める声が騒がしいダナン伯爵邸を離れ、ロックス伯爵領へ到着したジョウの眷属は、目的地への経路を順調に進んでいた時、ふと思い出す。
(そう言えば……エイル殿たちは、あの後どうしたのだろう?)
眷属である彼は、ジョウの記憶も同調している。つまり、あの昨夜の密談(19話)も、全て記憶にあるのだ。
❖夜も更けた昨晩のこと――
ミオに内緒で行われた前夜(19話)の話し合いは、ウルシア様の出現により、宰相の権限を完全に超えてしまった。
そのため、ウルシア様帰還後に、エイルの転移で王城に場所を移した。
フリータール国王――フィリップス・フォン・フリータールは、真夜中にも関わらず叩き起こされ、ロックス伯爵家で起きた事の経緯を聞かされる。
フリータール王家の臣下――ロックス伯爵の反逆行為とも思える内容に、フィリップスはお腹一杯だった。
それなのに、賢者――エイルは、ウルシア様の簡易版神託という羊皮紙を顔の前に掲げられては、彼も、悠長なことを言う暇はなかっただろう。
「余にしか見えぬ神託と言われたら、叩き起こされるのも致し方ない。しかしこれら全てを承諾するのは……」
「ウルシア様の意に逆らうと?」
「違う! そうは言っておらん! これら全てを承諾するのは簡単だ。だが、その後が問題なのだ。魔従族が使用した言葉を引用する訳ではないが、正に『言うは易く行うは難し《いうはやすく、おこなうはかたし》』だ!」
「それは、国王である貴方と宰相であるダニーロたちの仕事でしょう?」
「……」
一応同席している辺境伯ロレンツォだが、ここで口を挟むのは藪蛇である。ひいては、こちらに火の粉が飛びかねない。
「せめて……この神託が余以外にも見えれば、貴族たちを説得する手段にもなるというのに」
しょぼんとした様子で、丸められた簡易版神託を手に取る王――フィリップス。
「……」
「え!?」
するすると開いた羊皮紙を視界に収めたダニーロが声を上げた。
「どうした? 宰相」
「みっ! 見えますぞ!?」
「……ほんとか?」
「はい! 先ほどは、確かに見えなかったのに! 今は、はっきりと記された文字が見えますぞ!」
好奇心旺盛な男性たち――エイル、ダニーロ、ロレンツォは、寝惚け眼なフィリップスが神託を見る際、フィリップスの後ろに陣取り、一緒に見たのだが……フィリップス以外は真っ白な羊皮紙にしか見えなかったのである。
『フィリップスの要望に応えて、皆に見えるようにしたわよ! これで、お願いね!』
「「「「「…っ!?」」」」」
国王フィリップス、宰相ダニーロ、賢者エイル、辺境伯ロレンツォ、ジョウの脳内に響いた言葉に、国王フィリップス以外が床に膝を着いた。
「え? 余の頭に喋りかけるのは、誰なんだ?」
「陛下! 女神ウルシア様の声ですぞ!?」
「なに!? ……お力添え頂きありがとうございます! これで、貴族たちを説得できます」
床に膝を着く三人とは違い、頭を下げて感謝を述べるフィリップス。
『声だけなんだから、楽にしてちょうだい。でもこれで、目一杯活用できるでしょう?』
「勿体ないお言葉!」
羊皮紙に現れた神託の文言は、今は誰の目にも見えている。これで、隙あらば文句を言う貴族もいないだろう。
彼にしてみれば、仕事がやりやすくなったのだ。感謝しかなかった。
『ふふふっ!? そんなに肩肘張らなくても、エイルの高級ポーションの前例があるんだもの。遠慮はいらないわ』
「……へ?」
呆けた声を上げるフィリップスの脳内に、明快に笑うウルシアの声が響き。
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今夜のジョウは、ミオに内緒で行動しているため、国王に会うことを嫌がった。そのため、ジョウはエイルのマントに隠れる大きさへ身体を縮ませているのだ。
「「「「……」」」」
寝耳に水のフィリップスと、体験済みのダニーロ。
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