【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)

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第十二話 テイム以外の方法

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 エイルとルイが冒険者ギルドを出発した頃、ローハンはある問題で頭を悩ませていた。

「どうしました?」
「ん?嬢ちゃんの家族・・についてどうするか、解決策を考えてたんだ……」

 ローハン隊長は、顎髭を指で弄りながら神妙に告げた。

「テイムは出来にゃいですよ?」

 私はテイムスキルないもの。無理なものは無理。これ以上、スキルを増やしてなるものか。

「だろ?テイム以外の特別措置が一つだけあるが…これは、二人次第ということになる」
「なんですか?」

 少しだけ剣が入り始めた空気感に、ローハン隊長は慌てる。
 
「落ち着いてくれ!……だがこれだけで色々と予想するとなると、やはり能力値は高いな。嬢ちゃんは、【リード】というスキルを知ってるか?」

 リード?初めて聞くスキル名だ。私は首を振り、否を示す。

「【リード】は、テイムと似た性質のスキルなんだ。街で商売をしている魔獣屋などは、テイムではなく【リード】を使った商売のやり方を重宝している」
「魔獣屋?」
「テイム目的の魔獣を扱う商会だな」

 ペットショップ的な店かな?
 ローハン隊長は、【リード】のスキルについて説明してくれた。

・魔獣屋は、魔獣を繁殖・飼育を専門に行うテイマーから買い受け、新たなテイマーに販売する繋ぎを商いとした商会。
・【リード】は、その際のテイマーが魔獣と結んでいる制約を読み取り、権利を譲渡するスキル。

 やり方は二通り。
 スキルそのままを発動するか、魔法紙にスキルの陣を焼き付け、リード紙を作成するかの二択。
 リード紙にすれば、条件を記載の上でスキルが無くとも行使が可能。魔法紙にスキルの陣を焼き付けるのは、【リード】のスキル保持者か、テイマーギルドで申請・手数料を払うかのどちらだそう。

「それで、エイルがその【リード】のスキルを持っているだが……頼んでみねぇか?ギルドに頼むのは、情報拡散上、止めておいたほうがいいしな」
「ローハン隊長が仰った、私たち次第というのは……」
「一時的とは言え、エイルがジョウの静止権を持つことにもなる。主従関係がしっかりしているならいいんだが、少しでも不安要素がある奴は渋るのがいるんだよ」

 表情を歪ませて、後ろ首をポリポリ。実に面倒くさそう!でもご安心を。そもそも私とジョウは、主従関係云々の関係ではなく、私の護衛役である。リード紙に、しっかりとした条件を記載すれば、問題はないだろう。

「分かりました。エイルさんにおにぇがいしたいと思います」

 ジョウも異論を唱えないし、私はローハン隊長の案に乗ることにした。



「全く……急に鑑定を頼みに使いを寄越したかと思えば、次は従魔問題ですか?魔従のことなど、一っ言も書かれてませんでしたよね!?」
「ひょえ!?」

 バターン!と開け放たれた扉とともに聞こえてきた声は、初めて聞く声で。私は突然の音に驚き、妙な声が出てしまった。
 
「おい、エイル。なにを怒ってやがる。嬢ちゃんがびっくりしてるじゃないか」
「いいですか!?魔従族に、魔獣はセットという常識なんですよ!しかも本人たちはテイムスキルを持っていないのに、魔獣は大人しく従っている。摩訶不思議な所から来たのが、魔従族の由縁なんですよ!?」

 何故知らないのですか!?と力説する長髪のエルフさんは、ローハン隊長につかつかと歩み寄り、見下ろした。(銀髪から尖った耳が覗いている)

 彼が賢者様エイル様か。ローハン隊長の予想通り、興奮してますな。その原因は、ローハン隊長の手紙にあるようだけど…さすがエルフ。地獄耳ですな。
 ルイさんは、お疲れさまです。エイルさんの後ろにいたルイさんは、ゲンナリした表情をされている。

「あ~……でだ。そのテイムが入領に際しては大事になってくるだろ?嬢ちゃんには了承を貰ってるからお前が持ってるリードスキルを『お使いください!』……だとよ」
「ありがとうございます」

 すっごい辟易とした表情で繰り出された「だとよ」には、とてつもない疲労感が垣間見えた。ローハン隊長、早くも疲労感満載ですね。
 テンションの高いエイルさんに、早々嫌気をさしているみたいだ。



「エイルがリードを行使してくれるなら、嬢ちゃんの今後も安泰だ。良かったな、嬢ちゃん。野宿しないで済むぞ?」
「鑑定が終了するまでの間ですが、よろしくお願いしますね」
「え?」
 私はローハン隊長とエイルさんの言葉の意味が分からず、首を傾げた。

「ローハン!貴方、彼女にちゃんと説明をしてないんですか!?」
「…そうだったか?だが鑑定する間、メダルはお前の手にあるんだ。離れる訳にはいくまい。身分証明の保証をお前が確約するまでは、嬢ちゃんはエイルの家で世話になるんだ」
「確かに鑑定結果が出るまで、私は宙ぶらりんですもんね」
 言われてみれば、鑑定するから入都OKというわけではないね。私の早とちりもあるが、ローハン隊長もちゃんと説明して欲しい。惚けても無駄だ。職務怠慢である。

「改めまして、お嬢さん。私は、エイル・リュタ・ラ・マグワイアと申します。この国の賢者をさせていただいてます」
「私は、ミオ・テラオといいます。こっちは、私の護衛にょジョウです。よろしくお願いします」
「ウォン!」

 にこやかに自己紹介をするエイルさんに、私も挨拶をした。

「はい、よろしくお願いしますね……しかし、ジョウの黒い毛並みは、最近どこかで見たような?」

 はて?と首を傾げるエイルさんに、私とジョウも揃って首を傾げる。

「お前ら、さっそく仲良しか?だがお前が外に出たのなんざ、魔導船に乗って会議に行った時くらいじゃないか?」

 ため息を吐きながら、やれやれといいたげなローハン隊長だが、貴方は自業自得である。しっかり反省するように。

「そうですよ!あの時に、羽根を生やした騎獣が航路を塞いでたんですよ!従騎士はまだ幼子だったと魔導船の操縦士が騒いでいたんですよ」

 ハッとしたエイルさんは、またも興奮して騒ぎ出す。騎獣はまだしも、従騎士を確認出来た者がいなかったので、見間違いで終わったんですがね……と、私をじっと見ながら話すのやめてもらえます?美人の真顔は、怖いものがあるんで。
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