34 / 151
第三十四話 仲間誘致大作戦②
しおりを挟む
「ポーションの備蓄?確かに高騰しているが、そもそも高級ポーションの素材の一部は『聖域でしょう?』あぁ、そうだ!だが今は…全く輸入がない」
師匠の割り込みに、苛立ちが見られたローリー様だったが、語尾に落ち着きが見られた。
十中八九猊下が原因だが、師匠は彼にどこまで話しているのか。取り敢えず、ない袖は振れないからね。輸入がないのも当たり前だ。
師匠たちが様子を見に行った聖国の薬師ギルド本部は、師匠が早々に見切りを付けるほど機能していない。あの出張は、ポーション供給に痺れを切らしたローリー様からの要請も含まれていたのかもしれない。
「だが、何故そこまでポーションに拘るんだ?ミディアンナの為かい?」
ローリー様の質問に、私は順番に説明を始める。
「姪御さんにょ診察結果次第では、聖域に採取へ行く必要も出るでしょう。しかし、私はポーション不足が招く弊害を恐れているにょです」
私の言葉に、ローリー様は首を傾げた。
「弊害?今までもポーション不足は発生したが、薬草が育てば解決する話だ。なにをそんなに心配する必要がある?」
現在、聖国の正式発表では、[薬草が育つのを待っている]との文言があるらしい。だが、真実は違うんだよね。ウルシア様が猊下を出禁にしている今、高級ポーションが下界から消える日が絶対に来る。
ポーションは、市井の人々の生活と切り離せない日用の医薬品だ。これがあるとないとでは、生活の幅に大きな差が出る。まぁ、問題はそれだけではないのだが…。
「ローリーには伝えていませんでしたが、今の猊下は、ウルシア様から拒絶されています。よってポーションの搬入が滞り出す前から、聖域へは出禁になっています。薬草の育生待ちの公表は、その場凌ぎです」
私がどう伝えるべきか、二の句が継げないでいると、師匠が代わりにぶっ込んだ。
「…はぁ!?教会の猊下は、聖国の最高権力者だぞ!それが、出禁!?」
「今の猊下は、聖域での禁忌に近い罪を仕出かしちゃったんです。それに怒った女神ウルシア様により、出禁ににゃってます」
「その証拠は!?」
ダンッと机を叩き、前のめりになるローリー様に、師匠は溜息を付きながら、顔面を押し返した。
「ローリーには、聖国の現状を伝えたでしょう?それが全てですよ。もうすぐサミュエルも帰還します。彼からも詳しく聞くといいでしょう」
師匠に言及されたローリー様は、「嘘だろ…」と愕然としている。私たちの言葉に、偽りなどはない。大きな問題だから、信じたくない気持ちも分かるけど、早目に対策しないと、取り返しがつかなくなる。
「私達は加護持ちですから、聖域の出入りはフリーパスです。猊下のように申請をする必要はなく、自由に出入り可能です。ミオによれば、薬草の群生地は1/4を残せば、翌日には元通りだそうですよ。私には転移、ジョウには飛行手段がありますので、移動にも事欠きません」
「それじゃあ…」
ポーション不足の問題は、金で解決出来ないややこしい問題だ。金がなさすぎるのも困るが…どちらにしろ頭の痛い種だったはず。そんな問題が解決するかもしれないと聞いて、僅かに希望の光が宿った瞳を輝かせる。
「来たるポーション高騰による不足の混乱に備え、備蓄する事になんの問題もありません」
きっぱりと言い切る師匠に、ローリー様は喜色満面だ。高騰し続けるポーションの代替え品もままならず、暗い未来しか見えなかったはず。そこに小さな光が宿ったのだ。喜ぶのも当然だ。
「…ということで、まずやるべきはポーションにょ備蓄にゃんです!幸い、秘密裏にポーション作成を行える人員に心当たりがあるという師匠に頼り、彼らにポーション作成を頼みます。現物はこちらで引き取りますが、あちらが現物を希望すれば、報酬にょ代わりで二割の譲渡を考えています。作成したポーションは一度こちらに集めますにょで、平等にアターキルの各地域へ振り分けて頂きたいにょです」
師匠の後を引き継いて言葉を紡ぐ私に、ローリー様は唇を舐め言葉を発する。
「…私が主導かい?」
その声は、先ほど違い震えていた。問題解決が目先に来て喜びはしたものの、重大さに気付くのも早かった。流石は、辺境伯様。
「はい、そうです」
「しかしそれだと、私の手柄になってしまうぞ?」
なにか企んでないか?と眉を潜めるローリー様に、私は満面の笑みを浮かべ告げた。
「はい!全くかまいません。私は安全に暮らすことが目的ですので、余計な柵はいりません」
「安全と余計な柵か……」
しょっぱい顔をしてこちらを見るローリー様だが、貴方には役立つ人脈が出来るのではないだろうか?
まぁ、面倒い事に変わりないから、気持ちは分かる。だが、貴族とはそういうものである。要は、需要と供給の違い。立場が違えば、欲しいものも変わるものだ。
「ポーションの不足問題は、解消の目処が立ちそうですね、ミオ」
「エイル!?私はまだ協力出来るとは…そもそも今日は、認定証のサインの可否の為の面会だぞ?」
師匠の言葉に焦るローリー様の気持ちも立場も分かる。流石に、すぐには承認出来ないよね?
「確かにそうでしたにぇ。ですが、私たちが取るべき行動を変える事は致しません」
「ミオが犠牲にならなくても、他の『他にょ加護持ちにゃど、どこにいるにょですか?』…そんなに酷い状態になることはないだろう?低級・中級は作れるのだ!だから…」
「なにも市井の人々だけを心配しているにょではありません。市井の人にとって、ポーションは教会にいる高額な治癒師の代わりなんですが、それはこの領地で活躍する冒険者や兵士にとっても同じこと。『あっ…』…それが完全に途絶えると知られれば、どうなるか想像に容易いでしょう?」
私は自分で言いながら、自身の身体を抱きしめる。だって、確実に市場は混乱に陥るから。最悪の場合、私の願う安心な生活とは真逆の事態が起きる。
「ミオ、すまなかった…大丈夫かい?」
心配気に眉を寄せ、私を覗くローリー様。私はローリー様へ伝えるべく、口を開く。
「どうかお願いします。領民の…人々の安寧の為に力を貸して下さい」
「ミオ…」
私の必死な表情に、ローリー様が切なげな表情を浮かべた。やはり、ポーション不足という問題の前に立ち塞がる聖国や薬師ギルドに、恐れを抱いているようだった。
「私は、大叔父のピアチェルトへ協力を仰ぐつもりでいます」
そんな彼に、師匠は静かな声で告げた。ユリウスって誰だろう?
「ピアチェルト・マグワイア!?…って、本気か!?エイル…お前、あの方が大の苦手だったじゃないか!?」
驚愕の表情を浮かべる彼に、師匠は無の表情で頷く。
「苦手なのは、今も変わりません。あの飄々とした掴みどころの無さは、気味が悪いです。ですがそんな些細な事を気にしていては、この困難は乗り越えられません。もはやこの問題は、そんな一線を軽く越えているのですよ、ローリー」
「…彼を頼る理由を聞いてもいいか?彼は確かもうすぐ、クリーク連合国首長の任期が明けるが…」
「えぇ。確かに奴の任期が明けるのは、二週間もありません。その奴が首長の座にいる間に、ダークエルフの協力体制を整えなければなりません。だから、時間がないのです」
「な!?ポーション作成の人員に心当たりがあるって、まさかダークエルフの孤児か!?」
「えぇ、そうです。彼らは製薬に特化した能力持ちです。きっと、聖域の素材の良さを何倍にも引き上げてくれることでしょう」
素晴らしいポーションが出来ますよ。出来上がり次第では、希釈も可能でしょう…と微笑む師匠に、私は『ダークエルフの孤児』というワードを聞くか迷った。だが答えは、身近な人間の言葉で明かされる。
「我々人族の奴隷狩りで、ダークエルフは孤児になった者が多いんだぞ!?そんな者が製薬するポーションなど大丈夫なのか?」
「彼らも、伊達に故郷を追われ続けたわけではありません。奴隷狩りをする人族が『悪』なのであって、私たちが『悪』でないことの区別はつきます」
どうやら、人族とダークエルフ間で問題を抱えているらしい。そんな人種を使う師匠に、正気か?と食ってかかるローリー様の気持ちも分からないではないが…師匠が選んだのだ。他に人員のツテはないと思う。そんな考えをしている時だった。
――我らが女神!ウルシア様が登場したのは。
『聖国を気にする必要はないわ。猊下には、神罰を下されることが決定したから』
「「「ウルシア様っ!?」」」
大陸が奉る女神ウルシアの降臨に、室内にいた男性三人は、流れるように床に膝を着いた。
『ロレンツォ・アターキル』
「はっ!」
『是非、ミオの手助けをしてあげて頂戴。私も聖国を見ていましたが、猊下は遂に一線を越えました。我々も…もはや手を出さざるを得ない状況になったのです。聖国や薬師ギルド本部のことは我々に任せ、ミオやエイルたちに協力をお願いします』
「畏まりました!」
『貴方には、辺境伯としての仕事がありますからね。ポーション作成はミオたちに任せ、サポートをお願いしますね』
「畏まりました!」
『では、ミオの認定証にサインをお願いしますね?』
「畏まりました!…え?」
もはやオウム返しである。最後に我に返った時には、全てが遅かった。ローリー様の返答に満足したウルシア様が微笑み『頼みましたよ?』と言い残して、消えたのだ。
(どうやら、認定証のサインは貰えそうだな?)
(わ~い…ははは)
乾いた笑いが漏れるのも仕方ないよね?だって、この空気をどうしよう?
まさかのオチの要求に、三人が固まったままじゃん!?
最後の最後にウルシア様のゴリ押しとか、アリなんかいな?
♢
「うひひひひ……なんだ、なにもないではないか。神約だの伝えておいて、大袈裟な!?」
ぶちぃ!?…と薬師も真っ青な無茶苦茶な採取のやり方をしているのは、例の猊下である。
そう……彼は、なんの音沙汰もない神に痺れを切らし、無断で聖域へと足を踏み入れたのだ。
「これで我が資産がまた増える!…ぶひひひ!?ぶひひひ!?」
そんな汚い笑いが、聖域の空に溶けていった。
師匠の割り込みに、苛立ちが見られたローリー様だったが、語尾に落ち着きが見られた。
十中八九猊下が原因だが、師匠は彼にどこまで話しているのか。取り敢えず、ない袖は振れないからね。輸入がないのも当たり前だ。
師匠たちが様子を見に行った聖国の薬師ギルド本部は、師匠が早々に見切りを付けるほど機能していない。あの出張は、ポーション供給に痺れを切らしたローリー様からの要請も含まれていたのかもしれない。
「だが、何故そこまでポーションに拘るんだ?ミディアンナの為かい?」
ローリー様の質問に、私は順番に説明を始める。
「姪御さんにょ診察結果次第では、聖域に採取へ行く必要も出るでしょう。しかし、私はポーション不足が招く弊害を恐れているにょです」
私の言葉に、ローリー様は首を傾げた。
「弊害?今までもポーション不足は発生したが、薬草が育てば解決する話だ。なにをそんなに心配する必要がある?」
現在、聖国の正式発表では、[薬草が育つのを待っている]との文言があるらしい。だが、真実は違うんだよね。ウルシア様が猊下を出禁にしている今、高級ポーションが下界から消える日が絶対に来る。
ポーションは、市井の人々の生活と切り離せない日用の医薬品だ。これがあるとないとでは、生活の幅に大きな差が出る。まぁ、問題はそれだけではないのだが…。
「ローリーには伝えていませんでしたが、今の猊下は、ウルシア様から拒絶されています。よってポーションの搬入が滞り出す前から、聖域へは出禁になっています。薬草の育生待ちの公表は、その場凌ぎです」
私がどう伝えるべきか、二の句が継げないでいると、師匠が代わりにぶっ込んだ。
「…はぁ!?教会の猊下は、聖国の最高権力者だぞ!それが、出禁!?」
「今の猊下は、聖域での禁忌に近い罪を仕出かしちゃったんです。それに怒った女神ウルシア様により、出禁ににゃってます」
「その証拠は!?」
ダンッと机を叩き、前のめりになるローリー様に、師匠は溜息を付きながら、顔面を押し返した。
「ローリーには、聖国の現状を伝えたでしょう?それが全てですよ。もうすぐサミュエルも帰還します。彼からも詳しく聞くといいでしょう」
師匠に言及されたローリー様は、「嘘だろ…」と愕然としている。私たちの言葉に、偽りなどはない。大きな問題だから、信じたくない気持ちも分かるけど、早目に対策しないと、取り返しがつかなくなる。
「私達は加護持ちですから、聖域の出入りはフリーパスです。猊下のように申請をする必要はなく、自由に出入り可能です。ミオによれば、薬草の群生地は1/4を残せば、翌日には元通りだそうですよ。私には転移、ジョウには飛行手段がありますので、移動にも事欠きません」
「それじゃあ…」
ポーション不足の問題は、金で解決出来ないややこしい問題だ。金がなさすぎるのも困るが…どちらにしろ頭の痛い種だったはず。そんな問題が解決するかもしれないと聞いて、僅かに希望の光が宿った瞳を輝かせる。
「来たるポーション高騰による不足の混乱に備え、備蓄する事になんの問題もありません」
きっぱりと言い切る師匠に、ローリー様は喜色満面だ。高騰し続けるポーションの代替え品もままならず、暗い未来しか見えなかったはず。そこに小さな光が宿ったのだ。喜ぶのも当然だ。
「…ということで、まずやるべきはポーションにょ備蓄にゃんです!幸い、秘密裏にポーション作成を行える人員に心当たりがあるという師匠に頼り、彼らにポーション作成を頼みます。現物はこちらで引き取りますが、あちらが現物を希望すれば、報酬にょ代わりで二割の譲渡を考えています。作成したポーションは一度こちらに集めますにょで、平等にアターキルの各地域へ振り分けて頂きたいにょです」
師匠の後を引き継いて言葉を紡ぐ私に、ローリー様は唇を舐め言葉を発する。
「…私が主導かい?」
その声は、先ほど違い震えていた。問題解決が目先に来て喜びはしたものの、重大さに気付くのも早かった。流石は、辺境伯様。
「はい、そうです」
「しかしそれだと、私の手柄になってしまうぞ?」
なにか企んでないか?と眉を潜めるローリー様に、私は満面の笑みを浮かべ告げた。
「はい!全くかまいません。私は安全に暮らすことが目的ですので、余計な柵はいりません」
「安全と余計な柵か……」
しょっぱい顔をしてこちらを見るローリー様だが、貴方には役立つ人脈が出来るのではないだろうか?
まぁ、面倒い事に変わりないから、気持ちは分かる。だが、貴族とはそういうものである。要は、需要と供給の違い。立場が違えば、欲しいものも変わるものだ。
「ポーションの不足問題は、解消の目処が立ちそうですね、ミオ」
「エイル!?私はまだ協力出来るとは…そもそも今日は、認定証のサインの可否の為の面会だぞ?」
師匠の言葉に焦るローリー様の気持ちも立場も分かる。流石に、すぐには承認出来ないよね?
「確かにそうでしたにぇ。ですが、私たちが取るべき行動を変える事は致しません」
「ミオが犠牲にならなくても、他の『他にょ加護持ちにゃど、どこにいるにょですか?』…そんなに酷い状態になることはないだろう?低級・中級は作れるのだ!だから…」
「なにも市井の人々だけを心配しているにょではありません。市井の人にとって、ポーションは教会にいる高額な治癒師の代わりなんですが、それはこの領地で活躍する冒険者や兵士にとっても同じこと。『あっ…』…それが完全に途絶えると知られれば、どうなるか想像に容易いでしょう?」
私は自分で言いながら、自身の身体を抱きしめる。だって、確実に市場は混乱に陥るから。最悪の場合、私の願う安心な生活とは真逆の事態が起きる。
「ミオ、すまなかった…大丈夫かい?」
心配気に眉を寄せ、私を覗くローリー様。私はローリー様へ伝えるべく、口を開く。
「どうかお願いします。領民の…人々の安寧の為に力を貸して下さい」
「ミオ…」
私の必死な表情に、ローリー様が切なげな表情を浮かべた。やはり、ポーション不足という問題の前に立ち塞がる聖国や薬師ギルドに、恐れを抱いているようだった。
「私は、大叔父のピアチェルトへ協力を仰ぐつもりでいます」
そんな彼に、師匠は静かな声で告げた。ユリウスって誰だろう?
「ピアチェルト・マグワイア!?…って、本気か!?エイル…お前、あの方が大の苦手だったじゃないか!?」
驚愕の表情を浮かべる彼に、師匠は無の表情で頷く。
「苦手なのは、今も変わりません。あの飄々とした掴みどころの無さは、気味が悪いです。ですがそんな些細な事を気にしていては、この困難は乗り越えられません。もはやこの問題は、そんな一線を軽く越えているのですよ、ローリー」
「…彼を頼る理由を聞いてもいいか?彼は確かもうすぐ、クリーク連合国首長の任期が明けるが…」
「えぇ。確かに奴の任期が明けるのは、二週間もありません。その奴が首長の座にいる間に、ダークエルフの協力体制を整えなければなりません。だから、時間がないのです」
「な!?ポーション作成の人員に心当たりがあるって、まさかダークエルフの孤児か!?」
「えぇ、そうです。彼らは製薬に特化した能力持ちです。きっと、聖域の素材の良さを何倍にも引き上げてくれることでしょう」
素晴らしいポーションが出来ますよ。出来上がり次第では、希釈も可能でしょう…と微笑む師匠に、私は『ダークエルフの孤児』というワードを聞くか迷った。だが答えは、身近な人間の言葉で明かされる。
「我々人族の奴隷狩りで、ダークエルフは孤児になった者が多いんだぞ!?そんな者が製薬するポーションなど大丈夫なのか?」
「彼らも、伊達に故郷を追われ続けたわけではありません。奴隷狩りをする人族が『悪』なのであって、私たちが『悪』でないことの区別はつきます」
どうやら、人族とダークエルフ間で問題を抱えているらしい。そんな人種を使う師匠に、正気か?と食ってかかるローリー様の気持ちも分からないではないが…師匠が選んだのだ。他に人員のツテはないと思う。そんな考えをしている時だった。
――我らが女神!ウルシア様が登場したのは。
『聖国を気にする必要はないわ。猊下には、神罰を下されることが決定したから』
「「「ウルシア様っ!?」」」
大陸が奉る女神ウルシアの降臨に、室内にいた男性三人は、流れるように床に膝を着いた。
『ロレンツォ・アターキル』
「はっ!」
『是非、ミオの手助けをしてあげて頂戴。私も聖国を見ていましたが、猊下は遂に一線を越えました。我々も…もはや手を出さざるを得ない状況になったのです。聖国や薬師ギルド本部のことは我々に任せ、ミオやエイルたちに協力をお願いします』
「畏まりました!」
『貴方には、辺境伯としての仕事がありますからね。ポーション作成はミオたちに任せ、サポートをお願いしますね』
「畏まりました!」
『では、ミオの認定証にサインをお願いしますね?』
「畏まりました!…え?」
もはやオウム返しである。最後に我に返った時には、全てが遅かった。ローリー様の返答に満足したウルシア様が微笑み『頼みましたよ?』と言い残して、消えたのだ。
(どうやら、認定証のサインは貰えそうだな?)
(わ~い…ははは)
乾いた笑いが漏れるのも仕方ないよね?だって、この空気をどうしよう?
まさかのオチの要求に、三人が固まったままじゃん!?
最後の最後にウルシア様のゴリ押しとか、アリなんかいな?
♢
「うひひひひ……なんだ、なにもないではないか。神約だの伝えておいて、大袈裟な!?」
ぶちぃ!?…と薬師も真っ青な無茶苦茶な採取のやり方をしているのは、例の猊下である。
そう……彼は、なんの音沙汰もない神に痺れを切らし、無断で聖域へと足を踏み入れたのだ。
「これで我が資産がまた増える!…ぶひひひ!?ぶひひひ!?」
そんな汚い笑いが、聖域の空に溶けていった。
675
あなたにおすすめの小説
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する
ありぽん
ファンタジー
25歳の高橋舞は、気がつくと真っ白な空間におり、そして目の前には土下座男が。
話しを聞いてみると、何とこの男は神で。舞はこの神のミスにより、命を落としてしまったというのだ。
ガックリする舞。そんな舞に神はお詫びとして、異世界転生を提案する。そこは魔法や剣、可愛い魔獣があふれる世界で。異世界転生の話しが大好きな舞は、即答で転生を選ぶのだった。
こうして異世界へ転生した舞。ところが……。
次に目覚めた先は、まさかの海のど真ん中の浮島。
しかも小さな子どもの姿になっていてたのだ。
「どちてよ!!」
パニックになる舞。が、驚くことはそれだけではなかった。
「おい、目が覚めたか?」
誰もいないと思っていたのだが、突然声をかけられ、さらに混乱する舞。
実はこの島には秘密があったのだ。
果たしてこの島の正体は? そして舞は異世界で優しい人々と触れ合い、楽しく穏やかな日々を送ることはできるのか。
ドラゴンともふ魔獣に懐かれて〜転生幼女は最強ドラゴン騎士家族と幸せに暮らします〜
ありぽん
ファンタジー
神様のミスで命を落としてしまった高橋結衣(28)。そのお詫びとして彼女は、様々な力を授かり、憧れだった魔法と剣と魔獣の存在する、まるで異世界ファンタジーのような世界へと転生することになった。
しかし目を覚ました場所は、街の近くではなく木々が生い茂る森の中。状況が分からず混乱する結衣。
そんな結衣に追い打ちをかけるように、ゾウほどもある大きな魔獣が襲いかかってきて。さらにドラゴンまで現れ、魔獣と激突。数分後、勝利したドラゴンが結衣の方へ歩み寄ってくる。
転生して数10分で命を落とすのか。そう思った結衣。しかし結衣を待っていたのは、思いもよらぬ展開だった。
「なぜ幼児がここに? ここは危険だ。安全な俺たちの巣まで連れて行こう」
まさかのドラゴンによる救出。さらにその縁から、結衣は最強と謳われるドラゴン騎士の家族に迎え入れられることに。
やがて結衣は、神から授かった力と自らの知識を駆使し、戦う上の兄や姉を支え、頭脳派の兄の仕事を手伝い。可憐で優しい姉をいじめる連中には、姉の代わりに子ドラゴンやもふ強魔獣と共にざまぁをするようになって?
これは神様の度重なるミスによって、幼児として転生させられてしまった結衣が、ドラゴンやもふ強魔獣に懐かれ、最強のドラゴン騎士家族と共に、異世界で幸せいっぱいに暮らす物語。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
転生したらちびっ子になって、空を落ちていた件 〜もふもふたちのお世話はお任せあれ。ついでに悪もやっつけます!〜
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした高橋凛は、お詫びとして理想の世界へ転生することに。しかし気がつけば幼児の姿で、しかも空を落下中だった!?
バカ神、あいつまたミスったな!? そう思いながらも、凛はどうすることもできず、空を落ちていく。しかも更なるアクシデントが凛を襲い……。
が、そのアクシデントにより、優しい魔獣に助けられた凛は、少しの間彼の巣で、赤ちゃん魔獣や卵の世話を教わりながら過ごすことに。
やがてその魔獣を通じて侯爵家に迎え入れられると、前世での動物飼育の知識や新たに得た知識、そして凛だけが使える特別な力を活かして、魔獣たちの世話を始めるのだった。
しかし魔獣たちの世話をする中で、時には悪人や悪魔獣と対峙することもあったため、凛は、『魔獣たちは私が守る!!』と決意。入団はできないものの、仮のちびっ子見習い騎士としても頑張り始める。
これは、凛と魔獣たちが織りなす、ほんわかだけど時々ドタバタな、癒しとお世話の物語。
ひとりぼっちの千年魔女、転生したら落ちこぼれ令嬢だったので、家族を守るために魔法を極めます! 〜新たな家族ともふもふに愛されました!〜
空月そらら
ファンタジー
千年の時を孤独に生き、魔法を極めた大魔女。 彼女は唯一の弟子に裏切られ、命を落とした――はずだった。
次に目覚めると、そこは辺境伯家の屋敷。 彼女は、魔力コアが欠損した「落ちこぼれ」の幼女、エルシア(6歳)に転生していた。
「魔力がすぐに切れる? なら、無駄を削ぎ落とせばいいじゃない」
エルシアは前世の膨大な知識を駆使し、省エネ魔法を開発。
サボり魔だが凄腕の騎士を共犯者に仕立て上げ、密かに特訓を開始する。
すべては、今世で初めて知った「家族の温かさ」を守るため。
そして、迫りくる魔物の脅威と、かつての弟子がばら撒いた悪意に立ち向かうため。
「おねえちゃん、すごい!」
可愛い弟デイルと、拾った謎の**黒猫に懐かれながら、最弱の令嬢による最強の領地防衛戦が幕を開ける!
何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。
くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。
しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた!
しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!?
よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?!
「これ…スローライフ目指せるのか?」
この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる