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第四十三話 精霊たちの活躍とウルシアの予告
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「あぁぁ…」
私は言葉にならない声を漏らす。魂が口から出ちゃわないかな?
「さぁ、残り後少し!全浮遊精霊チームが一歩リードか!?初級精霊よ、頑張れ!」
いや、もう大丈夫です!と声を大にして言いたいが…皆が一生懸命に集めてくれている所へ、私が水を差すのも躊躇われる。
そうして葛藤している間にも、ドンドンと積み上げられていく薬草の山。既に、私の身長は追い越している。今雪崩が起きれば、私は飲み込まれちゃうな。
「奴ら、もはや吾輩たちのことなど、眼中にないのではないか?」
尋常ではない薬草の山を前に、目が据わり初めているジョウ。だけど元々は、私の役に立つことで得るポイント稼ぎが目当てだったんだし。ブレてないといえばブレていない…のか?
♢
「はい、終了~!」
「カンカンカンカン~!」と鳴り響く鐘の音。こんなことまで仕込んでくるとは、あの司会の精霊…やるな。
どざざっ!?
ばさささっ!?
「これ、薬草の音だよにぇ?」
「そうだが、薬草という名の土石流だろう」
確かに!これに埋もれたら、窒息間違いなしだ。ジョウが口から歯を覗かせ、嫌そうに引くついている。
子どもの姿をした中級精霊たちが、今度は薬草の仕分けを行っている。さっきまで、浮遊精霊や低級精霊のお守りをしていたのに…ご苦労さまです。
「さぁ、まずは各本数から発表するよ!?
マーナ草 15892本、ヒール草 14253本、エネル草 8532本、オール草 30086本、月涙草 163本、神浄草73本、竜護草 182本、優包草 145本だ!次はお待ちかね!成績発表だよ~!
1位 木精霊初級チーム 6365点!彼らには、優勝の副賞として、中級精霊の名誉が与えられます!」
「「「「おおぉ~!?」」」」
「盛り上がってるにぇ」
「そうだな」
順位を発表するごとにチームが沸き上がる。蚊帳の外の存在になっている私たちは、それを眺めながら呟く。
「続いて2位は、全浮遊精霊チーム 5932点! 3位 水精霊初級チーム 4124点! 4位 土精霊初級チーム 4036点……」
次々と発表がされる中、中級精霊がチームの代表者たちに、キラキラと光るなにかを与えていた。
「あれ、なにかにゃ?」
「ん?……あぁ。あれは、進化の玉だな」
「進化の玉!?そんなのがあるの!?」
ジョウが徳を積むとか言うから、善行を積むのかと思いきや、言葉通りの得点稼ぎだった。
「勘違いするなよ?基本は善行だぞ?今回のようなボーナスポイントを得る機会は、そうそうないのだからな?今回は特別だ」
『そうですね。最も、これからは、このような機会が増えそうですが…』
「…ウルシア様!?」
聞き覚えのある声に、私は空を仰ぎ見た。すると、木の枝に腰かけるウルシア様がいた。
『しーっ!今、精霊たちにバレると大騒ぎになっちゃうから!』
口に人差し指を当て、静かに!とジェスチャーをするウルシア様に、「?」が浮かぶ。
「なにかご用でしょうか?」
ジョウが一歩踏み出し、ウルシア様に質問した。
『…まもなく、聖国の猊下や薬師ギルド、聖域を悪用した者に連なる罪人を堕とします』
どうやってやるんだろう?堕とすって、地獄に?
『空中に姿を投影し、全土に真実を告げます。その後、猊下とそれに連なる物たちに神罰を与えるんですよ』
私の思考を読み取って、ウルシア様が答えるが…神罰の内容は明かさない。
きっと、私が知らないほうがいいんだろうな。世の中には、知らないほうが幸せなこともあるし。
『ふふっ…ミオは、相変わらず心の声がダダ漏れね』
フワリと笑うウルシア様に、私は苦笑いを返すしか出来ない。
「でもそうにゃると、教会も薬師ギルドも機能しにゃくにゃるのかにゃ?」
『…教会や薬師ギルドも、一枚岩ではありません。猊下により抑えられていた勢力が、動き出すでしょう。それに各支部の運営は、ある程度は独断でも可能です」
ふむ、猊下に抑えられていた勢力かぁ。
『そうです。彼らは善良な心の持ち主です。このままの心持ちで仕えてもらえると良いのですが…』
猊下の惨状を見せられて、猊下と同じ轍を踏もうとする勇気はないんじゃないかな?
『……』
ん?ウルシア様?
返事がないウルシア様を探して、木の枝の辺りを見たが、彼女の姿はなかった…あれ?
「あの…ミオ様」
そんな時におずおずと話しかけられた声音に、私は振り返る。そうすれば、例の木の精霊ドリアンだった。
「ドリアン?どうしたの?」
あぁ…彼が近づいてきたから消えたんだね、ウルシア様。
「採取が終了したのでお知らせに来ました。今は、薬草に付いた土などの汚れを洗浄しておりますので、少しお待ち下さい」
「そこまでしてくれるの!?ありがとう」
ちらっと薬草が積まれていた辺りを見れば、水の膜に入った薬草が見えた。それを操る私と同じくらいの背丈の子たちも。
「おかげさまで、中級精霊を増やすことが出来ました。1位を逃した子たちも、ボーナスポイントは取得出来ましたし…大きな成長をありがとうございます」
そう言って深く頭を下げたドリアンに、私は大きく首を振った。
「それは、あの子たちが頑張った成果だよ!?それに洗浄までしてくれるにゃんて、とっても助かるよ」
「勿体ないお言葉です。では、お約束のこちらをお受け取り下さい」
ドリアンは、なにもない場所から紙を取り出して、私に差し出した。
「ありがとう、ドリアン」
それを受け取った私は、ジョウの言葉を思い出す。
――いいのではないか?我輩としては、時空間を操る精霊だな。時空精霊は、時を止めることは出来んが、対象にスローモーションをかける事は出来る。対象者のみの制限付きだが、かなり有効な手札だ。空間については、万が一ミオが連れ去られた時に、その場所に空間を繋げてもらうことが可能だからな―――
うん…時空属性の精霊。意外とアリだ。
私はまだ見ぬ仲間を想像しつつ、ドリアンに微笑んだのだった。
私は言葉にならない声を漏らす。魂が口から出ちゃわないかな?
「さぁ、残り後少し!全浮遊精霊チームが一歩リードか!?初級精霊よ、頑張れ!」
いや、もう大丈夫です!と声を大にして言いたいが…皆が一生懸命に集めてくれている所へ、私が水を差すのも躊躇われる。
そうして葛藤している間にも、ドンドンと積み上げられていく薬草の山。既に、私の身長は追い越している。今雪崩が起きれば、私は飲み込まれちゃうな。
「奴ら、もはや吾輩たちのことなど、眼中にないのではないか?」
尋常ではない薬草の山を前に、目が据わり初めているジョウ。だけど元々は、私の役に立つことで得るポイント稼ぎが目当てだったんだし。ブレてないといえばブレていない…のか?
♢
「はい、終了~!」
「カンカンカンカン~!」と鳴り響く鐘の音。こんなことまで仕込んでくるとは、あの司会の精霊…やるな。
どざざっ!?
ばさささっ!?
「これ、薬草の音だよにぇ?」
「そうだが、薬草という名の土石流だろう」
確かに!これに埋もれたら、窒息間違いなしだ。ジョウが口から歯を覗かせ、嫌そうに引くついている。
子どもの姿をした中級精霊たちが、今度は薬草の仕分けを行っている。さっきまで、浮遊精霊や低級精霊のお守りをしていたのに…ご苦労さまです。
「さぁ、まずは各本数から発表するよ!?
マーナ草 15892本、ヒール草 14253本、エネル草 8532本、オール草 30086本、月涙草 163本、神浄草73本、竜護草 182本、優包草 145本だ!次はお待ちかね!成績発表だよ~!
1位 木精霊初級チーム 6365点!彼らには、優勝の副賞として、中級精霊の名誉が与えられます!」
「「「「おおぉ~!?」」」」
「盛り上がってるにぇ」
「そうだな」
順位を発表するごとにチームが沸き上がる。蚊帳の外の存在になっている私たちは、それを眺めながら呟く。
「続いて2位は、全浮遊精霊チーム 5932点! 3位 水精霊初級チーム 4124点! 4位 土精霊初級チーム 4036点……」
次々と発表がされる中、中級精霊がチームの代表者たちに、キラキラと光るなにかを与えていた。
「あれ、なにかにゃ?」
「ん?……あぁ。あれは、進化の玉だな」
「進化の玉!?そんなのがあるの!?」
ジョウが徳を積むとか言うから、善行を積むのかと思いきや、言葉通りの得点稼ぎだった。
「勘違いするなよ?基本は善行だぞ?今回のようなボーナスポイントを得る機会は、そうそうないのだからな?今回は特別だ」
『そうですね。最も、これからは、このような機会が増えそうですが…』
「…ウルシア様!?」
聞き覚えのある声に、私は空を仰ぎ見た。すると、木の枝に腰かけるウルシア様がいた。
『しーっ!今、精霊たちにバレると大騒ぎになっちゃうから!』
口に人差し指を当て、静かに!とジェスチャーをするウルシア様に、「?」が浮かぶ。
「なにかご用でしょうか?」
ジョウが一歩踏み出し、ウルシア様に質問した。
『…まもなく、聖国の猊下や薬師ギルド、聖域を悪用した者に連なる罪人を堕とします』
どうやってやるんだろう?堕とすって、地獄に?
『空中に姿を投影し、全土に真実を告げます。その後、猊下とそれに連なる物たちに神罰を与えるんですよ』
私の思考を読み取って、ウルシア様が答えるが…神罰の内容は明かさない。
きっと、私が知らないほうがいいんだろうな。世の中には、知らないほうが幸せなこともあるし。
『ふふっ…ミオは、相変わらず心の声がダダ漏れね』
フワリと笑うウルシア様に、私は苦笑いを返すしか出来ない。
「でもそうにゃると、教会も薬師ギルドも機能しにゃくにゃるのかにゃ?」
『…教会や薬師ギルドも、一枚岩ではありません。猊下により抑えられていた勢力が、動き出すでしょう。それに各支部の運営は、ある程度は独断でも可能です」
ふむ、猊下に抑えられていた勢力かぁ。
『そうです。彼らは善良な心の持ち主です。このままの心持ちで仕えてもらえると良いのですが…』
猊下の惨状を見せられて、猊下と同じ轍を踏もうとする勇気はないんじゃないかな?
『……』
ん?ウルシア様?
返事がないウルシア様を探して、木の枝の辺りを見たが、彼女の姿はなかった…あれ?
「あの…ミオ様」
そんな時におずおずと話しかけられた声音に、私は振り返る。そうすれば、例の木の精霊ドリアンだった。
「ドリアン?どうしたの?」
あぁ…彼が近づいてきたから消えたんだね、ウルシア様。
「採取が終了したのでお知らせに来ました。今は、薬草に付いた土などの汚れを洗浄しておりますので、少しお待ち下さい」
「そこまでしてくれるの!?ありがとう」
ちらっと薬草が積まれていた辺りを見れば、水の膜に入った薬草が見えた。それを操る私と同じくらいの背丈の子たちも。
「おかげさまで、中級精霊を増やすことが出来ました。1位を逃した子たちも、ボーナスポイントは取得出来ましたし…大きな成長をありがとうございます」
そう言って深く頭を下げたドリアンに、私は大きく首を振った。
「それは、あの子たちが頑張った成果だよ!?それに洗浄までしてくれるにゃんて、とっても助かるよ」
「勿体ないお言葉です。では、お約束のこちらをお受け取り下さい」
ドリアンは、なにもない場所から紙を取り出して、私に差し出した。
「ありがとう、ドリアン」
それを受け取った私は、ジョウの言葉を思い出す。
――いいのではないか?我輩としては、時空間を操る精霊だな。時空精霊は、時を止めることは出来んが、対象にスローモーションをかける事は出来る。対象者のみの制限付きだが、かなり有効な手札だ。空間については、万が一ミオが連れ去られた時に、その場所に空間を繋げてもらうことが可能だからな―――
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