44 / 154
第四十四話 エイルの垂涎
しおりを挟む聖域から帰ってきた私は、再び辺境伯邸を訪ねていた。
「師匠がこっちにいるみたいにゃんですけど…」
門の守衛さんにそう尋ねれば、彼らは快く通してくれた。
(全く…帰還早々、忙しないやつだ)
(まぁまぁ、ウルシア様のことも伝えなきゃいけないし…ね?辺境伯様には根回しをお願いしてたし、積もる話もあるんじゃないかな?)
私は愚痴を言うジョウを宥めながら、案内をしてくれる執事さんの後ろに続く。
「ミオ様とジョウ様がお越しでございます」
「入れ」
執事さんの申し出に、ロレンツォ様は直ぐに応えた。
「無事に帰ってきましたね」
家主を差し置いた第一声は、やはりというか、師匠だった。
「無事に戻りました」
「うむ」
尊大に答えるジョウに笑いつつ、私は辺境伯様へ「お邪魔します」と頭を下げた。
それに対して「エイルの弟子とは思えない丁寧さだな」と呟きながら、頭を撫でてくれた。
「それで、薬草は採取出来ましたか?ミオ」
「はい、師匠」
「一杯採取してくれたからな」
「ん?してくれた…ですか?」
「実は…」
ジョウの報告に首を傾げる師匠へ、私は精霊たちのことを掻い摘んで話した
「精霊から貰った魔法紙ですって!?見せていただけませんか!?」
精霊のことを話せば、興奮した様子で前のめりになる師匠。見せること自体は、なにも問題はない。私は頷きながら、ドリアンに貰った魔法紙を取り出した。
「……やはりこれは、妖虫お蚕様の紙!」
「ん?」
「やはり、すべすべで美しい白色ですねぇ!仄かに漂う妖力も心地良い!」
普通の魔法紙じゃないのは分かってたけど、妖虫『蚕』か。確かに『特別な魔法紙』だな。
「うへぇ…」
(相変わらずだな、エイルは)
頬で紙をスリスリしている様に、ローリー様とジョウはドン引きである。
「これって…あまりの魔法紙をいただくことは出来きますか!?」
「そんなに焦らにゃくても、聖域の精霊たちに頼めば貰えるんじゃにゃいですかにぇ?勿論、対価は必要でしょうけど」
現に、私は精霊のボーナスポイントを得る協力をした結果、魔法紙を手に入れたからね。
「後ほど、詳しく教えてくださいね!」
「分かりました。それで薬草にゃんですが、師匠に渡せばいいですか?」
ダークエルフさんに持っていく必要があるからね。
「はい。私がダークエルフの里に運びますので、こちらで預かりますよ」
と手を差し出してきたが、私はそれを苦笑いで見つめるしか出来ない。
「?」
それを見て首を傾げる師匠に、ジョウが言い放つ。
「そのような手で収まる量ではない。どこか倉庫のような場所はないか?」
「…倉庫ですか?失礼ですが、聖域の滞在時間は1日ですよね?そんなに採取出来るものでしょうか?」
ジョウの申告に疑問を抱いたローリー様が、質問をしてきた。
「先ほどミオが言ったであろう?精霊たちが採取に協力してくれたと…奴らの数が尋常ではなかったのだ」
精霊がボーナスポイントの為に、採取大会をしたことは言っていない。なんか…神聖な精霊のイメージを崩すことになりそうだったからね。
「数にすれば、マーナ草15892本、ヒール草14253本、エネル草8532本、オール草30086本、月涙草163本、神浄草73本、竜護草182本、優包草145本…だったか?」
すげぇ…よく覚えてるね?
「「…な!?」」
ジョウの申告数に絶句したローリー様と師匠の視線が、私に来た。私はそれを避けることで、肯定とするしかなかった。
603
あなたにおすすめの小説
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ドラゴンともふ魔獣に懐かれて〜転生幼女は最強ドラゴン騎士家族と幸せに暮らします〜
ありぽん
ファンタジー
神様のミスで命を落としてしまった高橋結衣(28)。そのお詫びとして彼女は、様々な力を授かり、憧れだった魔法と剣と魔獣の存在する、まるで異世界ファンタジーのような世界へと転生することになった。
しかし目を覚ました場所は、街の近くではなく木々が生い茂る森の中。状況が分からず混乱する結衣。
そんな結衣に追い打ちをかけるように、ゾウほどもある大きな魔獣が襲いかかってきて。さらにドラゴンまで現れ、魔獣と激突。数分後、勝利したドラゴンが結衣の方へ歩み寄ってくる。
転生して数10分で命を落とすのか。そう思った結衣。しかし結衣を待っていたのは、思いもよらぬ展開だった。
「なぜ幼児がここに? ここは危険だ。安全な俺たちの巣まで連れて行こう」
まさかのドラゴンによる救出。さらにその縁から、結衣は最強と謳われるドラゴン騎士の家族に迎え入れられることに。
やがて結衣は、神から授かった力と自らの知識を駆使し、戦う上の兄や姉を支え、頭脳派の兄の仕事を手伝い。可憐で優しい姉をいじめる連中には、姉の代わりに子ドラゴンやもふ強魔獣と共にざまぁをするようになって?
これは神様の度重なるミスによって、幼児として転生させられてしまった結衣が、ドラゴンやもふ強魔獣に懐かれ、最強のドラゴン騎士家族と共に、異世界で幸せいっぱいに暮らす物語。
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
モブっと異世界転生
月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。
ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。
目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。
サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。
死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?!
しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ!
*誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。
転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する
ありぽん
ファンタジー
25歳の高橋舞は、気がつくと真っ白な空間におり、そして目の前には土下座男が。
話しを聞いてみると、何とこの男は神で。舞はこの神のミスにより、命を落としてしまったというのだ。
ガックリする舞。そんな舞に神はお詫びとして、異世界転生を提案する。そこは魔法や剣、可愛い魔獣があふれる世界で。異世界転生の話しが大好きな舞は、即答で転生を選ぶのだった。
こうして異世界へ転生した舞。ところが……。
次に目覚めた先は、まさかの海のど真ん中の浮島。
しかも小さな子どもの姿になっていてたのだ。
「どちてよ!!」
パニックになる舞。が、驚くことはそれだけではなかった。
「おい、目が覚めたか?」
誰もいないと思っていたのだが、突然声をかけられ、さらに混乱する舞。
実はこの島には秘密があったのだ。
果たしてこの島の正体は? そして舞は異世界で優しい人々と触れ合い、楽しく穏やかな日々を送ることはできるのか。
何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。
くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。
しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた!
しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!?
よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?!
「これ…スローライフ目指せるのか?」
この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
役立たずと追放された辺境令嬢、前世の民俗学知識で忘れられた神々を祀り上げたら、いつの間にか『神託の巫女』と呼ばれ救国の英雄になっていました
☆ほしい
ファンタジー
貧しい辺境伯の三女として生まれたリゼット。魔力も持たず、華やかさもない彼女は、王都の社交界で「出来損ない」と嘲笑われ、挙句の果てには食い扶持減らしのために辺境のさらに奥地、忘れられた土地へと追いやられてしまう。
しかし、彼女には秘密があった。前世は、地方の伝承や風習を研究する地味な民俗学者だったのだ。
誰も見向きもしない古びた祠、意味不明とされる奇妙な祭り、ガラクタ扱いの古文書。それらが、失われた古代の技術や強力な神々の加護を得るための重要な儀式であることを、リゼットの知識は見抜いてしまう。
「この石ころ、古代の神様への捧げものだったんだ。あっちの変な踊りは、雨乞いの儀式の簡略化された形……!」
ただ、前世の知識欲と少しでもマシな食生活への渇望から、忘れられた神々を祀り、古の儀式を復活させていくだけだったのに。寂れた土地はみるみる豊かになり、枯れた泉からは水が湧き、なぜかリゼットの言葉は神託として扱われるようになってしまった。
本人は美味しい干し肉と温かいスープが手に入れば満足なのに、周囲の勘違いは加速していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる