【書籍発売中!】神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)

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第一章

第五十一話 叡智の使者


「さて、行きますか。ローリー」
「…あぁ、気は進まんがな」

 ミディアンナ嬢が回復した明るさはとうに鳴りを潜め、廊下には、等間隔に設置された照明が仄かにあかりを灯しているのみだ。

「まさか1日かからずに転移陣の使用許可が降りるとは…」
「あちらも、ウルシア様の具現化に情報が欲しいのでしょう。ウルシア様の具現に間をおかずの転移陣使用申請ですからね。なにかあると勘ぐられても、仕方ありませんよ」

 苦々しい表情のローリーだが、エイルは肩を竦めたに過ぎない。ローリーは、ウルシア様に頼まれたミオのフォローを思い出して、頭を振った。

 彼にしてみれば、半年に一回の領地経営報告に登城する以外には、近寄りたくない場所ですからね。しかし女神ウルシア様からの名指しでは、行動しないという選択肢はあり得ませんからね。

「まぁまぁ…いざとなれば、ウルシア様の映像がありますから」
「おまっ!?…まさか、あの場を撮ってたのか!?」

 信じられない!と言うように、エイルを指さす先は震えて定まらない。

「えぇ…納得してもらうのは一発でしたよ」
 と、既に使用した形跡のあるエイルに、ロレンツォは開いた口が塞がらなかった。ホクホク顔のエイルに比べ、衝撃で声が出ないロレンツォ。

 厚顔無恥な部分があると思っていたが、よもや女神様をも利用するなんて!?

「おや?ちゃんと本人の了承は得てますよ?…なにか、失礼な事を考えてませんか?」
「…っ!そんなことっ…少しだけな。それにしても、相変わらず抜け目がないな、お前は」
「ふふっ!?利用価値があるものは、利用しなくてはね?」

 口に人差し指を当て、ウィンクするエイルだが、ロレンツォは、誰得だ!と顔を顰めながら、「おぇ…」とゲロるのだった。

「失礼ですねぇ」
 と愚痴るエイルだが、既に二回使用した実績から、大義名分の証文代わりになっていることが否めなかった。

 さて、女神様の録画シーンを放映することがないことを祈りたいですが、日和見な中央と今代の愚王では、生易しい考えですかね?



「どうですか?痛いですか?」

 脚にタオルを置き、ふくらはぎを揉み揉み。

「大丈夫です、ありがとうございます」

 少し強張りがある表情だが、私の子供の力でこれでは、暫くマッサージだけになりそうだな…かと言って揉み返しが来ても怖いので、軽く擦りながら、ユラユラと筋肉を軽く揺らしていく。
 それを不思議そうに見るミディアンナさんは、私に声をかけてきた。

「このような治療は聞いたことがありません。ミオさんは、どこで学ばれたのでしょうか?」
「…ふふっ!ミディアンナさんは、好奇心旺盛と言われませんか?」
「っ!?私ったら…申し訳ありません!」

 ミディアンナさんの質問に答えず、ミディアンナさんの質について質問を返せば、口に手を当て、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

「ふふっ!攻めたわけではありませんよ?」

 ジョハンナさん譲りの浅葱色の髪を緩く編み込んでいる。紅茶色の瞳は恥ずかしそうに彷徨っていた。

「私にょ出自については、話していませんでしたっけ?」

 私はマッサージの手を一旦止め、鞄から身分証明書を取り出した。
(かまわぬのか?)と、ジョウの念話が入るが、(大丈夫だよ)と返す私。だって…ねぇ?

 ・加護を授かっていること
 ・神酒が製薬出来ること
 ・ジョウが聖獣(本当は違うけど)と色々バレているし、これからポーション関連などを手伝ってもらうのだ。今更感という思いが強い。

「まぁ…ミオ様ってば、あの魔従族でしたの!?」

 身元証明書を見たミディアンナさんは、ガバっと身を近づけてきた。なんだろう。デジャブを感じるな…近い近い。しかも、さんから様になってる!?

「私は、里の最後の生き残りにゃだけにゃんだよ(という設定)。最近まで婆様とジョウと暮らしてたけど、婆様も歳には勝てにゃかったよ」

 感慨深げにうんうんと頷いていると、(我が主人ながら、大根役者だな)と茶々が入る。でもさ、こっちは娯楽が少ないせいもあると思うけど、こういうお涙頂戴の話には、毎回騙されてくるんだよね。やっぱり見た目?見た目の効果って偉大なのかな。

「私としたことが…申し訳ありません」
 頭を下げ謝罪してくる彼女を手で制し、私は笑みを浮かべる。

「ちゃんとお別れも出来たので、ジョウもいますし、大丈夫です」

 ごめんね、ミディアンナさん。存在しない設定上の亡き親類にも、罪悪感が出始めちゃったわ。とほほ。
 でも、私が「ちゃんとお別れをした」と言い切れば、彼女の表情が少なからず和らいだ。

「それにしても、師匠やローリー様を始め、叡智だにょにゃんだにょいわれてるけど、四歳児になにを期待するにょっ?って感じですよにぇ」

 頬に手を当て首を傾げれば、ミディアンナさんも顎に手を当て考え始める。

「多分なのですが…魔従族の別名が『叡智の使者』でしょう?そのイメージに引っ張られるのではないでしょうか?」
「にゃるほど」

 一種の刷り込みだよね。国の教育もそうだけど、家庭における大人の会話などもその一種。自分が育ってきた時間知識や経験が、価値観を作るもんね。

 私がミディアンナさんにそう話せば、彼女は思うところがあったらしい。

「…確かにそうですわ。では寝たきりだった私は、ミオ様の為にも、もっと色々なことを経験しなくてはいけませんね!」

 両腕で力拳を作るポーズで、決意を新たにしていた。心なしか、鼻息も荒い。美少女(13歳)の鼻息…どこかに需要はありますか?

 ♢

 ミオとミディアンナが会話をしていた時、エイルとローリーは、宰相に会っていた。この宰相は、現王の代わりに国を動かす采配者真の統治者だ。
 
 宰相の名は、ダニーロ・フェルタ・アルダート。始祖の時代から続く名家で、筆頭侯爵家として君臨している。

 ミオが見れば、チョビ髭が印象に残る宰相だろう。ダニーロは嫌がるだろうが、現王と同じく、若干後退が気になるお年頃である。

「…では、国中、いや、大陸中から高級ポーションが消えかけているというのか!」
 絶望的な表情を浮かべ、もはや真っ青を通り越して蒼白である。彼の頭には、各領地の土地事情などが、目まぐるしく思い出されているに違いない。

 例えば、ローリーのアターキル領地は、深層の森に隣接しており、万が一の時に、高級ポーションは高位ランクの冒険者には必要不可欠だ。
 高級ポーションがなければ、神官の治癒魔法が必要になるが…それは教会まで持てばの話。

 高位ランクが請け負う依頼は、大抵が、深層の森の中部から深部手前の魔物の駆除だ。そんな魔物の一撃は重く、被害は甚大。そんな怪我人を庇いながらの戦闘・撤退は、悪手でしかない。

 し・か・も、教会の神官の腕が物をいうものだから、神官次第では、冒険者生命が大きく左右されるのだ。そんな博打に手を出すつもりがさらさらない高ランク冒険者は、依頼受注の際は、高級ポーションの購入を欠かさないのだ…ということは?

 高級ポーションが購入出来なければ、自由が信条自己責任の冒険者の判断は一つ。魔獣討伐の依頼は受注をせず、安全圏にある依頼を選ぶ。そうなれば駆除対象の魔獣は増え続け、やがてらスタンピードという魔物の暴動が始まるのだ。

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