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追放聖女のもふもふスローライフ
第15話 森の秘密と村長の話
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チュン、チュン。
小鳥たちのさえずりと、窓から差し込む柔らかな陽光で目を覚ます。
一日の始まりだ。でも……まだ少し眠いなぁ……
「キュキュゥ」
私が布団の中でもぞもぞとしていると、ぼすん、と柔らかい重みが私の上に乗ってきた。
「おはよう、もふぞー。……でも、あまり飛び回らないようにね」
飛べるようになったのが嬉しいのか、もふぞーはあれからよく部屋の中を飛び回っていた。
今もひとしきり飛んだ後、私の上に着地したのだろう。
私たちだけの時はいいけど、万が一ほかの人に見られたら大変だ。
「キュキュゥ」
もふぞーは了解とばかりに鳴き声をあげた。
私は二度寝したい気持ちを抑え、もぞもぞと起き出し、いつものように朝食と小鳥さん用の食事を用意する。
……やっぱり肉もどきは豆の消費が激しいなぁ……
だからといって森の動物を狩るのは気が引ける。第一、狩の心得もないし、捌けもしないし……何より可哀想だしね。
村では豚や鶏を育ててる家もあるけど、それらは祭りや祝い事といった特別な時にしか口にできない贅沢品だ。
……豆、育ててみようかな。
「おはようリリアナ」
「おはようございます!」
やがて皆が起きてきて、食卓につき、いつもの賑やかな朝食が始まった。
* * *
朝食後はいつものようにケイトさんの雑貨屋へポーションの補充に行く。
今日は、ケイトさんに尋ねたい事があった。
「ケイトさん。屋敷の裏の森の中にある泉について、何か知りませんか?」
うん、私が追放されてから力が増してることに気づくまでの出来事の内、心当たりはもふぞーと出会ったこと、後は泉で水浴びをしたことだ。
「うん? 知らないねぇ……そもそもあたしらはあの辺の森に入ることすら禁じられてるしね」
「え!?」
「……あんた、知らないのかい? 禁じたのは男爵家だって言うのに」
――そうか。
考えてみれば当たり前だ。土地は基本的に貴族の所有物。そこに住む野生動物もまた貴族の財産とされる。だから無断で森に入ることは密猟と同じで、多くの場合禁じられている。
庶民にとって肉が貴重なのも、そのためだ。
思い返せば、屋敷裏の森では動物以外と出会ったことがなかったな……
でも、村の反対側――ジャンさんの伐採場がある辺りの森は立ち入りが許可されてるんだよね。
やっぱり、屋敷の裏の森には何か特別な理由があるのかもしれない。
「あの森に、何か謂れとかあったりしませんか?」
「そういう話なら、村長さんに聞くのが一番だろうね」
なるほど、村長さんなら村に伝わる昔話や伝承なんかにも詳しいだろう。……この後、会いに行ってみるかな。
雑貨屋を出ると、その足で村長の家へ向かった。
村長には顔を合わせたことはあるが、まともに話したことはほとんどない。
ぶっちゃけ、ケイトさんの方が相談しやすいからね。
戸口を叩くと、白髪を後ろになでつけたおじいさんが顔を出した。背筋は真っすぐで、瞳は優しげだがどこか鋭さも感じる。
確か、この人が村長さんだ。
「おやおや、これは聖女様。いつもポーションにはお世話になっております」
あれ、リピーターだったのか。
「いやぁ、あれを飲むと身体が若返る気がしましてな。昨晩も年甲斐もなく……おっと、若い娘に話すことではありませんな」
……うん、全くだ。
そう思いながらも、とりあえず愛想笑いを返しておく。
……というか、私が作ってるのは精力剤じゃないぞ……
「して、本日はどのようなご用件で?」
「えっと、屋敷の裏手の森について伺いたくて……」
「ふむ。外で立ち話もなんですし、中でお聞きなされ」
促されて家に入り、椅子に腰を下ろす。
村長は少し目を細め、静かに問いかけてきた。
「それで、あの森について何を知りたいのですかな?」
「村の人が立ち入れないのには、何か特別な理由があるのかなと思いまして」
「なるほど……」
村長はゆっくりと頷き、どこか遠い昔を思い出すように言葉を紡ぐ。
「これは儂も父から伝え聞いた話なのですが――あの森は昔、『精霊の森』と呼ばれておりましてな」
「精霊の森……」
「うむ。そこには精霊王様がおわすと言われております。その名の通り、森の精霊を束ねる王。姿は、巨大な白狼だと伝わっておりますな」
「精霊王……」
「精霊王様はその姿から『聖獣様』とも呼ばれております」
……聖獣様! それはこの村の聖女の話とも繋がる。
「精霊王は白狼の姿なんですか? 背中には翼などは……」
「はて? そのような話は聞いたことがないですな。ただ――」
村長は重々しく続ける。
「その森は精霊王に認められた者以外、立ち入ることを禁じられているのです」
……私、入っちゃってるんですけど。いいのかな?
「……ふむ。男爵家は今でこそ王国の貴族ですが、それ以前は精霊王を祀る祭祀の一族であったと聞いたことがあります。聖女様であれば、立ち入ったとしても精霊王もお認めになるかもしれませんな」
村長さんは、私の態度に何かを察したのかそう続けた。
* * *
森の泉での水浴びは、すっかり私の日課になっていた。
冷たい水に身を沈めながら、村長から聞いた話を頭の中で整理する。
つまり――私の力が増したのも、ロゼに魂が宿ったのも、ミミィが人間になったのも、ぜんぶ精霊王様の力ってことかもしれない。
……謎は全て解けた! ドンッ!
「リリアナ、何やってるの?」
「たまに変なことしますよね」
「キュキュゥ」
……むぅ。
「えいっ!」
私は二人と一匹に向かって、水しぶきをかけてやる。
「いきなり何するんですか!?」
「やったなー」
「キュゥ!」
わぁっと水の飛沫が上がり、みんなが笑顔で応戦してくる。
しばし、泉のほとりは小さな水合戦の舞台になった。
――あれ?
でも、もふぞーの正体って結局なんなんだろう?
村長の言う精霊王様とは姿が違うし、本人(?)も否定してたし……。
……どうやら、すべての謎が解けるのは、まだまだ先になりそうだった。
小鳥たちのさえずりと、窓から差し込む柔らかな陽光で目を覚ます。
一日の始まりだ。でも……まだ少し眠いなぁ……
「キュキュゥ」
私が布団の中でもぞもぞとしていると、ぼすん、と柔らかい重みが私の上に乗ってきた。
「おはよう、もふぞー。……でも、あまり飛び回らないようにね」
飛べるようになったのが嬉しいのか、もふぞーはあれからよく部屋の中を飛び回っていた。
今もひとしきり飛んだ後、私の上に着地したのだろう。
私たちだけの時はいいけど、万が一ほかの人に見られたら大変だ。
「キュキュゥ」
もふぞーは了解とばかりに鳴き声をあげた。
私は二度寝したい気持ちを抑え、もぞもぞと起き出し、いつものように朝食と小鳥さん用の食事を用意する。
……やっぱり肉もどきは豆の消費が激しいなぁ……
だからといって森の動物を狩るのは気が引ける。第一、狩の心得もないし、捌けもしないし……何より可哀想だしね。
村では豚や鶏を育ててる家もあるけど、それらは祭りや祝い事といった特別な時にしか口にできない贅沢品だ。
……豆、育ててみようかな。
「おはようリリアナ」
「おはようございます!」
やがて皆が起きてきて、食卓につき、いつもの賑やかな朝食が始まった。
* * *
朝食後はいつものようにケイトさんの雑貨屋へポーションの補充に行く。
今日は、ケイトさんに尋ねたい事があった。
「ケイトさん。屋敷の裏の森の中にある泉について、何か知りませんか?」
うん、私が追放されてから力が増してることに気づくまでの出来事の内、心当たりはもふぞーと出会ったこと、後は泉で水浴びをしたことだ。
「うん? 知らないねぇ……そもそもあたしらはあの辺の森に入ることすら禁じられてるしね」
「え!?」
「……あんた、知らないのかい? 禁じたのは男爵家だって言うのに」
――そうか。
考えてみれば当たり前だ。土地は基本的に貴族の所有物。そこに住む野生動物もまた貴族の財産とされる。だから無断で森に入ることは密猟と同じで、多くの場合禁じられている。
庶民にとって肉が貴重なのも、そのためだ。
思い返せば、屋敷裏の森では動物以外と出会ったことがなかったな……
でも、村の反対側――ジャンさんの伐採場がある辺りの森は立ち入りが許可されてるんだよね。
やっぱり、屋敷の裏の森には何か特別な理由があるのかもしれない。
「あの森に、何か謂れとかあったりしませんか?」
「そういう話なら、村長さんに聞くのが一番だろうね」
なるほど、村長さんなら村に伝わる昔話や伝承なんかにも詳しいだろう。……この後、会いに行ってみるかな。
雑貨屋を出ると、その足で村長の家へ向かった。
村長には顔を合わせたことはあるが、まともに話したことはほとんどない。
ぶっちゃけ、ケイトさんの方が相談しやすいからね。
戸口を叩くと、白髪を後ろになでつけたおじいさんが顔を出した。背筋は真っすぐで、瞳は優しげだがどこか鋭さも感じる。
確か、この人が村長さんだ。
「おやおや、これは聖女様。いつもポーションにはお世話になっております」
あれ、リピーターだったのか。
「いやぁ、あれを飲むと身体が若返る気がしましてな。昨晩も年甲斐もなく……おっと、若い娘に話すことではありませんな」
……うん、全くだ。
そう思いながらも、とりあえず愛想笑いを返しておく。
……というか、私が作ってるのは精力剤じゃないぞ……
「して、本日はどのようなご用件で?」
「えっと、屋敷の裏手の森について伺いたくて……」
「ふむ。外で立ち話もなんですし、中でお聞きなされ」
促されて家に入り、椅子に腰を下ろす。
村長は少し目を細め、静かに問いかけてきた。
「それで、あの森について何を知りたいのですかな?」
「村の人が立ち入れないのには、何か特別な理由があるのかなと思いまして」
「なるほど……」
村長はゆっくりと頷き、どこか遠い昔を思い出すように言葉を紡ぐ。
「これは儂も父から伝え聞いた話なのですが――あの森は昔、『精霊の森』と呼ばれておりましてな」
「精霊の森……」
「うむ。そこには精霊王様がおわすと言われております。その名の通り、森の精霊を束ねる王。姿は、巨大な白狼だと伝わっておりますな」
「精霊王……」
「精霊王様はその姿から『聖獣様』とも呼ばれております」
……聖獣様! それはこの村の聖女の話とも繋がる。
「精霊王は白狼の姿なんですか? 背中には翼などは……」
「はて? そのような話は聞いたことがないですな。ただ――」
村長は重々しく続ける。
「その森は精霊王に認められた者以外、立ち入ることを禁じられているのです」
……私、入っちゃってるんですけど。いいのかな?
「……ふむ。男爵家は今でこそ王国の貴族ですが、それ以前は精霊王を祀る祭祀の一族であったと聞いたことがあります。聖女様であれば、立ち入ったとしても精霊王もお認めになるかもしれませんな」
村長さんは、私の態度に何かを察したのかそう続けた。
* * *
森の泉での水浴びは、すっかり私の日課になっていた。
冷たい水に身を沈めながら、村長から聞いた話を頭の中で整理する。
つまり――私の力が増したのも、ロゼに魂が宿ったのも、ミミィが人間になったのも、ぜんぶ精霊王様の力ってことかもしれない。
……謎は全て解けた! ドンッ!
「リリアナ、何やってるの?」
「たまに変なことしますよね」
「キュキュゥ」
……むぅ。
「えいっ!」
私は二人と一匹に向かって、水しぶきをかけてやる。
「いきなり何するんですか!?」
「やったなー」
「キュゥ!」
わぁっと水の飛沫が上がり、みんなが笑顔で応戦してくる。
しばし、泉のほとりは小さな水合戦の舞台になった。
――あれ?
でも、もふぞーの正体って結局なんなんだろう?
村長の言う精霊王様とは姿が違うし、本人(?)も否定してたし……。
……どうやら、すべての謎が解けるのは、まだまだ先になりそうだった。
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