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追放聖女のもふもふスローライフ
第17話 畑の様子と少女の夢
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サアァァァ……
雨の音に目を覚ます。外はまだ薄暗い。
しとしとと、細かい粒が屋根を打ち、静かな朝を満たしていた。
……
……
「……水はけ!!」
私は畑のことを思い出し、思わず飛び起きて叫んでしまった。
……ってか第一声が「水はけ」って何……
そんなことより畑の様子を見に行かなくちゃ。
などと嵐の時の死亡フラグのような事を考える。
……いや、小雨だし、屋敷の庭だから流されることはないんだけど。
庭へ出て、畑の前に立つ。
――とりあえず今のところは大きな被害はないみたい。
でも、水分が多すぎると発芽しないって農家の人言ってたしね。
うーん、雨除けでも作って立てておくかな? DIYには自信ないけど。
見たところ他にできることはなさそうだ。後は空のご機嫌次第、運を天に任せるしかないかな。
雨よけと言えば、この世界の人たちはこの程度の小雨だと、雨具などは使わない。まあ、前世の記憶を取り戻すまでの私もそうだったんだけど、日本人の感覚を思い出した身としてはやっぱり傘を差したいと思ってしまう。
ひとまず畑が無事なことを確認して屋敷に戻ると、ロゼとミミィ、そしてもふぞーが待ち構えていた。
「畑、大丈夫?」
「豆は無事ですか!?」
「キュキュゥ?」
二人と一匹の顔には心配の色が浮かんでいた。
……ふふ、やっぱりみんなも気になってたんだね。
「大丈夫だから朝ごはんにしようか」
みんなが安心するようにそう言って、いつものように朝食の用意をする。
小鳥さんの食事はロゼが窓辺に持っていってくれた。
「私が行くと小鳥さん達、逃げるんですよぉ……」
ミミィは涙目になりながら肩を落とす。
それは仕方がない。ミミィは元猛禽だしね……
食事が終わると次はポーション配達だ。
もふぞーもついて来たがったが、君は濡れると大変だからお留守番ね。
「キュゥ……」
「大丈夫。すぐ帰ってくるから」
心配そうに鳴くもふぞーの頭を撫でて、私は笑った。
雑貨屋へ向かう道、私は空を仰ぐ。
細かな雨粒が、シンシンと降り注ぎ、髪と頬を静かに濡らしていく。
まあ、植物には雨が必要だしね。
……でも、今じゃないでしょ!? せめて、芽が出てからにしてください!
私は心の中でそう叫ぶのだった。
シトシトと降り注ぐ小雨の中、雑貨屋へと着いた。
「こんにちはー」
「いらっしゃい。雨の中ご苦労さん」
ポーションの売上を受け取り、減った分を補充する。
「おねーちゃん、いらっしゃい!」
店の奥からケイトさんの娘、アリサちゃんが顔を出す。
そのまま私に駆け寄り、ぎゅっとしがみついてきた。
「おねーちゃん、お話しよ!」
「この子ったら、雨で外に出られないから暇してるみたいでね」
ケイトさんが苦笑する。
まあ、特に急ぎの用もない。
ロゼとミミィ、もふぞーも仲良く留守番してるだろうし、少しくらいならいいかな。
「おねーちゃんは聖女様なんだよね?」
「……えっと」
不意の質問に、言葉が詰まった。
――無能聖女って追放されたけど、この村でなら……まあ、一応名乗ってもいいかもしれない。
「うん、一応ね」
「どうやって聖女様になったの?」
難しい質問来た。
どうだったっけ? あの頃のことはよく覚えていない。なにしろ前世の記憶を思い出したせいで、頭の中がひっちゃかめっちゃかになっていたからだ。
……確か……友達が怪我をして、聖女物語の真似したら回復できちゃったんだよね。
「友達が怪我してて……真似ごとみたいにやってみたら、本当に治っちゃったの」
言いながら、頭の片隅で思い出す。
その前に前世の夢とか見るようになって……あれ? それは聖女とは関係ないかな?
そもそも前世の記憶思い出したのとどっちが先だっけ?
あっ、そうだ、他にもなんか夢をみた気がする。森の中で白い獣と出会う夢。
「うん、確かその前に夢を見た気がする。森の中で白い動物が出てくる夢」
「それって聖獣様?」
「なのかなぁ?」
アリサちゃんの目がきらきらと輝く。
「じゃあ、私も聖女様になれるかなぁ?」
その一言に、胸がちくりと痛む。
私は――大聖堂での厳しい修行の日々を思い出した。
辛くて、苦しくて、それでも耐えてきた日々。
……うん、正直、ならないほうがいいかもしれない。
そう思ったけれど、アリサちゃんの夢を壊す言葉を、口に出すことはできなかった。
「アリサちゃんが頑張ってれば聖獣様に認めてもらえるかも」
「……そっかぁ、うん、私聖獣様に認めてもらえるように頑張る!」
アリサちゃんは無邪気に笑った。
その笑顔を見て、私はそっと微笑みを返す。
こうしてその後も他愛のない話をして、雑貨屋を後にした。
店を出る頃には既に雨は止んでいた。
* * *
夜になり、私たちは森の泉へと水浴びに出かける。
泉はいつものように澄んだ水を湛え、月明かりを反射してきらめいている。水面に浮かぶ光の玉が幻想的に辺りを照らしていた。
私はゆっくりと冷たい水に身を沈め、今日の出来事を思い返す。
……そっかぁ、アリサちゃんは聖女になりたいのかぁ……
やっぱり私と同じように『聖女物語』に憧れてなのかな?
でも、力が発現するかどうかなんて、誰にもわからない。
そんなことを考えていたら、ぱしゃっと水が飛んできて顔にかかった。
顔をぬぐうと、ロゼとミミィが楽しそうに笑っている。
……まあ、そうだよね。ゆっくりと考え事なんてできるわけもないよね。
「……受けて立った!」
そう言うと私もやり返す。
水しぶきが飛び交い、笑い声が泉に響く。
夜の森に、さざ波のような笑い声が広がっていった。
ひとしきり水遊びを楽しんだあと、私はようやく落ち着いて泉に身を預ける。
――明日もまた、楽しく過ごせるといいね、もふぞー。
そう小さくつぶやき、もふぞーの背をそっと撫でた。
雨の音に目を覚ます。外はまだ薄暗い。
しとしとと、細かい粒が屋根を打ち、静かな朝を満たしていた。
……
……
「……水はけ!!」
私は畑のことを思い出し、思わず飛び起きて叫んでしまった。
……ってか第一声が「水はけ」って何……
そんなことより畑の様子を見に行かなくちゃ。
などと嵐の時の死亡フラグのような事を考える。
……いや、小雨だし、屋敷の庭だから流されることはないんだけど。
庭へ出て、畑の前に立つ。
――とりあえず今のところは大きな被害はないみたい。
でも、水分が多すぎると発芽しないって農家の人言ってたしね。
うーん、雨除けでも作って立てておくかな? DIYには自信ないけど。
見たところ他にできることはなさそうだ。後は空のご機嫌次第、運を天に任せるしかないかな。
雨よけと言えば、この世界の人たちはこの程度の小雨だと、雨具などは使わない。まあ、前世の記憶を取り戻すまでの私もそうだったんだけど、日本人の感覚を思い出した身としてはやっぱり傘を差したいと思ってしまう。
ひとまず畑が無事なことを確認して屋敷に戻ると、ロゼとミミィ、そしてもふぞーが待ち構えていた。
「畑、大丈夫?」
「豆は無事ですか!?」
「キュキュゥ?」
二人と一匹の顔には心配の色が浮かんでいた。
……ふふ、やっぱりみんなも気になってたんだね。
「大丈夫だから朝ごはんにしようか」
みんなが安心するようにそう言って、いつものように朝食の用意をする。
小鳥さんの食事はロゼが窓辺に持っていってくれた。
「私が行くと小鳥さん達、逃げるんですよぉ……」
ミミィは涙目になりながら肩を落とす。
それは仕方がない。ミミィは元猛禽だしね……
食事が終わると次はポーション配達だ。
もふぞーもついて来たがったが、君は濡れると大変だからお留守番ね。
「キュゥ……」
「大丈夫。すぐ帰ってくるから」
心配そうに鳴くもふぞーの頭を撫でて、私は笑った。
雑貨屋へ向かう道、私は空を仰ぐ。
細かな雨粒が、シンシンと降り注ぎ、髪と頬を静かに濡らしていく。
まあ、植物には雨が必要だしね。
……でも、今じゃないでしょ!? せめて、芽が出てからにしてください!
私は心の中でそう叫ぶのだった。
シトシトと降り注ぐ小雨の中、雑貨屋へと着いた。
「こんにちはー」
「いらっしゃい。雨の中ご苦労さん」
ポーションの売上を受け取り、減った分を補充する。
「おねーちゃん、いらっしゃい!」
店の奥からケイトさんの娘、アリサちゃんが顔を出す。
そのまま私に駆け寄り、ぎゅっとしがみついてきた。
「おねーちゃん、お話しよ!」
「この子ったら、雨で外に出られないから暇してるみたいでね」
ケイトさんが苦笑する。
まあ、特に急ぎの用もない。
ロゼとミミィ、もふぞーも仲良く留守番してるだろうし、少しくらいならいいかな。
「おねーちゃんは聖女様なんだよね?」
「……えっと」
不意の質問に、言葉が詰まった。
――無能聖女って追放されたけど、この村でなら……まあ、一応名乗ってもいいかもしれない。
「うん、一応ね」
「どうやって聖女様になったの?」
難しい質問来た。
どうだったっけ? あの頃のことはよく覚えていない。なにしろ前世の記憶を思い出したせいで、頭の中がひっちゃかめっちゃかになっていたからだ。
……確か……友達が怪我をして、聖女物語の真似したら回復できちゃったんだよね。
「友達が怪我してて……真似ごとみたいにやってみたら、本当に治っちゃったの」
言いながら、頭の片隅で思い出す。
その前に前世の夢とか見るようになって……あれ? それは聖女とは関係ないかな?
そもそも前世の記憶思い出したのとどっちが先だっけ?
あっ、そうだ、他にもなんか夢をみた気がする。森の中で白い獣と出会う夢。
「うん、確かその前に夢を見た気がする。森の中で白い動物が出てくる夢」
「それって聖獣様?」
「なのかなぁ?」
アリサちゃんの目がきらきらと輝く。
「じゃあ、私も聖女様になれるかなぁ?」
その一言に、胸がちくりと痛む。
私は――大聖堂での厳しい修行の日々を思い出した。
辛くて、苦しくて、それでも耐えてきた日々。
……うん、正直、ならないほうがいいかもしれない。
そう思ったけれど、アリサちゃんの夢を壊す言葉を、口に出すことはできなかった。
「アリサちゃんが頑張ってれば聖獣様に認めてもらえるかも」
「……そっかぁ、うん、私聖獣様に認めてもらえるように頑張る!」
アリサちゃんは無邪気に笑った。
その笑顔を見て、私はそっと微笑みを返す。
こうしてその後も他愛のない話をして、雑貨屋を後にした。
店を出る頃には既に雨は止んでいた。
* * *
夜になり、私たちは森の泉へと水浴びに出かける。
泉はいつものように澄んだ水を湛え、月明かりを反射してきらめいている。水面に浮かぶ光の玉が幻想的に辺りを照らしていた。
私はゆっくりと冷たい水に身を沈め、今日の出来事を思い返す。
……そっかぁ、アリサちゃんは聖女になりたいのかぁ……
やっぱり私と同じように『聖女物語』に憧れてなのかな?
でも、力が発現するかどうかなんて、誰にもわからない。
そんなことを考えていたら、ぱしゃっと水が飛んできて顔にかかった。
顔をぬぐうと、ロゼとミミィが楽しそうに笑っている。
……まあ、そうだよね。ゆっくりと考え事なんてできるわけもないよね。
「……受けて立った!」
そう言うと私もやり返す。
水しぶきが飛び交い、笑い声が泉に響く。
夜の森に、さざ波のような笑い声が広がっていった。
ひとしきり水遊びを楽しんだあと、私はようやく落ち着いて泉に身を預ける。
――明日もまた、楽しく過ごせるといいね、もふぞー。
そう小さくつぶやき、もふぞーの背をそっと撫でた。
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