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追放聖女のもふもふスローライフ
第21話 先生のお仕事と小さなメッセンジャー
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チュンチュン
小鳥のさえずりと、窓から差し込む朝の光で目を覚ます。
今日も新しい一日の始まりだ。
昨日は解熱ポーションや解毒ポーションなど、実生活で役立つものをアリサちゃんに教えた。
今日は――マナポーションにしようかな。
それに、今は私の作った浄化水を使っているけれど、魔法を使わない蒸留水の作り方も教えておいた方がいいかもしれない。火を扱う分、慎重さは必要だけど。
まずは道具を揃えなきゃね。今度レイナルドさんに相談してみよう。可愛い姪っ子のためなら、きっと協力してくれるはず。
うん。先生として考えることは、まだまだたくさんだ。
「リリアナ、大丈夫?」
「キュキュゥ」
おっと、考え事に夢中になりすぎてた。急いで朝の支度に取りかからなきゃ。
鍋に切った野菜を放り込み、火にかけると、だんだんといい匂いが漂って来る。
その時、空き瓶を回収してきたロゼが、目を輝かせて駆け寄ってきた。
「リリアナ、芽が出てる」
「えっ、本当!?」
――そういえば、このところいろいろあって畑のことをすっかり忘れていた。
手と火を止めて庭へ出ると、畑には小さな芽がいくつも、朝露をまとって顔を出していた。
「かわいいですね。これが豆になって、あのおいしいごはんになるんですね!」
ミミィはそう言いながら、じゅるりとツバを飲んだ。
……やっぱり食いしん坊だな、この子。
「それじゃあ食事の支度に戻ろうか。二人とも手伝って」
「うん」
「はい!」
「キュキュゥ」
もふぞーが「ぼくもいるよ」と言わんばかりに声を上げる
「うんうん、もふぞーも応援よろしく」
「キュ!」
* * *
食後は、いつものようにポーションを抱えて雑貨屋へ向かう。
「こんにちはー」
「いらっしゃいリリアナ」
「おねーちゃん、いらっしゃい!」
今日はアリサちゃんが元気いっぱいに出迎えてくれた。
「この子ったら、あんたが来るのを楽しみに待ってたんだよ」
「おねーちゃん、今日もいろいろ教えてくれる?」
「もちろん。ちょっと待っててね」
私はカウンター越しにケイトさんへ声をかけた。
「ケイトさん、ガラスの器ってありますか?」
「……器はないけど、保存用の瓶ならあるよ」
「うーん、じゃあそれをください」
蒸留水を作るには熱に強い容器が必要だ。ガラスか陶器が理想だけど、この国で陶器は輸入品だから高価で、辺境の村ではまず手に入らない。
だから、今回はガラスの器を使うことにしたのだ。
「何に使うんだい?」
「今はまだだけど、少ししたら蒸留水の作り方を教えようかなと」
「……気をつけてくれよ」
やはり火を扱う作業は心配らしい。
「はい。ケガはさせないように頑張ります」
「おねーちゃん、早く行こうよ!」
アリサちゃんがローブの袖を小さく引っ張る。
「それじゃあ、また、アリサちゃんをお借りしますね」
「ああ、いってらっしゃい」
こうして今日もまた、二人で屋敷へと向かう。
アリサちゃんは私に教えてもらうのがよほど楽しみなのか、その足取りは軽かった。
* * *
屋敷へ戻ると早速今日の授業を始める。
「それじゃあ、今日はマナポーションを作ってみようか」
「マナポーション?」
アリサちゃんが首をかしげる。
まあ、普通の村人にはあまり馴染みがないから、当然の反応だ。
「マナポーションっていうのはね、魔力を回復しやすくするポーションのこと。『魔法』を使う人にとっては、とっても大事なんだよ」
「へぇ……」
「それから、魔力欠乏症っていう病気の治療にも使えるの」
「魔力欠乏症?」
「うん。『魔法』を使えない人でも、体の中にはちゃんと魔力が流れてるの。
でも、その魔力が減りすぎちゃうとね――体がだるくてやる気が出なくなったり、ひどい時は倒れちゃったりするの」
「そんな病気があるんだ……」
アリサちゃんは目を丸くしていた。
「だから覚えておくと、いざという時役に立つよ」
……私もこの間の嵐の夜、魔力を使いすぎて倒れちゃったしね。
「それじゃ作り方、教えるよ。基本は今までのポーションとほとんど同じ。使うのはこの『魔力草』」
私は鮮やかな青いハーブを取り出してみせる。
「これにいくつかのハーブを混ぜ合わせて作るの。それじゃあやってみよう」
アリサちゃんは、昨日と同じ要領で乾燥したハーブを丁寧にすりつぶし、粉末状にしていく。
まだ手つきはぎこちないけど、すごい集中力だ。
「そしたらこの分量通りに混ぜ合わせて……」
私の指示に従いながら、アリサちゃんは慎重に手を動かす。
「最後に水に溶かしたら……はい出来上がり!」
アリサちゃんの手の中で、青い液体の入った小瓶がきらめいた。
満面の笑みで差し出されたポーションを受け取り、出来上がりを確認する。
……なんてこと!?
思わず息を呑んだ。
……それは、私が作ったものよりも……ずっと品質が高かった。
「どうしたの? おねーちゃん」
「すごいよ。アリサちゃん、才能あるかも」
私は「orz」の体制になりたくなる気持ちを抑えつつ答える。
「ホント!?」
アリサちゃんは嬉しそうに飛び跳ねた。
* * *
ポーションづくりの後は、みんなで遊んで、アリサちゃんを送って行った。
今は、日課の水浴びの時間だ。
私は冷たい泉にゆっくりと身を浸し、少し物思いにふける。
……ふぅ。嬉しい反面、少しの劣等感。
まあ、私は無能聖女だし、昔から細かい作業はどうにも苦手で、大雑把なんだから仕方がない。
でも、もしアリサちゃんに聖女の力が目覚めたら、きっと優秀な聖女になるのではないだろうか?
うん、それはそれで楽しみだ。
「アリサちゃんはわしが育てた……みたいな、ね」
「さっきから何ブツブツ言ってるんですか?」
ミミィが心配そうに声をかけてきた。
「なんでもないよー」
返事をして顔を上げると、水面の上を漂っていた淡い光が、一つふよふよと私の目の前に止まった。
その光はゆっくりと形を変え、やがて20cmほどの少女の姿になった。背中には透明な昆虫の羽が生え、身体には何も纏っていない。
私は驚きのあまり息を呑む。
その小妖精は小さな口を開き、告げた。
「精霊王様のお言葉を預かってまいりました」
小鳥のさえずりと、窓から差し込む朝の光で目を覚ます。
今日も新しい一日の始まりだ。
昨日は解熱ポーションや解毒ポーションなど、実生活で役立つものをアリサちゃんに教えた。
今日は――マナポーションにしようかな。
それに、今は私の作った浄化水を使っているけれど、魔法を使わない蒸留水の作り方も教えておいた方がいいかもしれない。火を扱う分、慎重さは必要だけど。
まずは道具を揃えなきゃね。今度レイナルドさんに相談してみよう。可愛い姪っ子のためなら、きっと協力してくれるはず。
うん。先生として考えることは、まだまだたくさんだ。
「リリアナ、大丈夫?」
「キュキュゥ」
おっと、考え事に夢中になりすぎてた。急いで朝の支度に取りかからなきゃ。
鍋に切った野菜を放り込み、火にかけると、だんだんといい匂いが漂って来る。
その時、空き瓶を回収してきたロゼが、目を輝かせて駆け寄ってきた。
「リリアナ、芽が出てる」
「えっ、本当!?」
――そういえば、このところいろいろあって畑のことをすっかり忘れていた。
手と火を止めて庭へ出ると、畑には小さな芽がいくつも、朝露をまとって顔を出していた。
「かわいいですね。これが豆になって、あのおいしいごはんになるんですね!」
ミミィはそう言いながら、じゅるりとツバを飲んだ。
……やっぱり食いしん坊だな、この子。
「それじゃあ食事の支度に戻ろうか。二人とも手伝って」
「うん」
「はい!」
「キュキュゥ」
もふぞーが「ぼくもいるよ」と言わんばかりに声を上げる
「うんうん、もふぞーも応援よろしく」
「キュ!」
* * *
食後は、いつものようにポーションを抱えて雑貨屋へ向かう。
「こんにちはー」
「いらっしゃいリリアナ」
「おねーちゃん、いらっしゃい!」
今日はアリサちゃんが元気いっぱいに出迎えてくれた。
「この子ったら、あんたが来るのを楽しみに待ってたんだよ」
「おねーちゃん、今日もいろいろ教えてくれる?」
「もちろん。ちょっと待っててね」
私はカウンター越しにケイトさんへ声をかけた。
「ケイトさん、ガラスの器ってありますか?」
「……器はないけど、保存用の瓶ならあるよ」
「うーん、じゃあそれをください」
蒸留水を作るには熱に強い容器が必要だ。ガラスか陶器が理想だけど、この国で陶器は輸入品だから高価で、辺境の村ではまず手に入らない。
だから、今回はガラスの器を使うことにしたのだ。
「何に使うんだい?」
「今はまだだけど、少ししたら蒸留水の作り方を教えようかなと」
「……気をつけてくれよ」
やはり火を扱う作業は心配らしい。
「はい。ケガはさせないように頑張ります」
「おねーちゃん、早く行こうよ!」
アリサちゃんがローブの袖を小さく引っ張る。
「それじゃあ、また、アリサちゃんをお借りしますね」
「ああ、いってらっしゃい」
こうして今日もまた、二人で屋敷へと向かう。
アリサちゃんは私に教えてもらうのがよほど楽しみなのか、その足取りは軽かった。
* * *
屋敷へ戻ると早速今日の授業を始める。
「それじゃあ、今日はマナポーションを作ってみようか」
「マナポーション?」
アリサちゃんが首をかしげる。
まあ、普通の村人にはあまり馴染みがないから、当然の反応だ。
「マナポーションっていうのはね、魔力を回復しやすくするポーションのこと。『魔法』を使う人にとっては、とっても大事なんだよ」
「へぇ……」
「それから、魔力欠乏症っていう病気の治療にも使えるの」
「魔力欠乏症?」
「うん。『魔法』を使えない人でも、体の中にはちゃんと魔力が流れてるの。
でも、その魔力が減りすぎちゃうとね――体がだるくてやる気が出なくなったり、ひどい時は倒れちゃったりするの」
「そんな病気があるんだ……」
アリサちゃんは目を丸くしていた。
「だから覚えておくと、いざという時役に立つよ」
……私もこの間の嵐の夜、魔力を使いすぎて倒れちゃったしね。
「それじゃ作り方、教えるよ。基本は今までのポーションとほとんど同じ。使うのはこの『魔力草』」
私は鮮やかな青いハーブを取り出してみせる。
「これにいくつかのハーブを混ぜ合わせて作るの。それじゃあやってみよう」
アリサちゃんは、昨日と同じ要領で乾燥したハーブを丁寧にすりつぶし、粉末状にしていく。
まだ手つきはぎこちないけど、すごい集中力だ。
「そしたらこの分量通りに混ぜ合わせて……」
私の指示に従いながら、アリサちゃんは慎重に手を動かす。
「最後に水に溶かしたら……はい出来上がり!」
アリサちゃんの手の中で、青い液体の入った小瓶がきらめいた。
満面の笑みで差し出されたポーションを受け取り、出来上がりを確認する。
……なんてこと!?
思わず息を呑んだ。
……それは、私が作ったものよりも……ずっと品質が高かった。
「どうしたの? おねーちゃん」
「すごいよ。アリサちゃん、才能あるかも」
私は「orz」の体制になりたくなる気持ちを抑えつつ答える。
「ホント!?」
アリサちゃんは嬉しそうに飛び跳ねた。
* * *
ポーションづくりの後は、みんなで遊んで、アリサちゃんを送って行った。
今は、日課の水浴びの時間だ。
私は冷たい泉にゆっくりと身を浸し、少し物思いにふける。
……ふぅ。嬉しい反面、少しの劣等感。
まあ、私は無能聖女だし、昔から細かい作業はどうにも苦手で、大雑把なんだから仕方がない。
でも、もしアリサちゃんに聖女の力が目覚めたら、きっと優秀な聖女になるのではないだろうか?
うん、それはそれで楽しみだ。
「アリサちゃんはわしが育てた……みたいな、ね」
「さっきから何ブツブツ言ってるんですか?」
ミミィが心配そうに声をかけてきた。
「なんでもないよー」
返事をして顔を上げると、水面の上を漂っていた淡い光が、一つふよふよと私の目の前に止まった。
その光はゆっくりと形を変え、やがて20cmほどの少女の姿になった。背中には透明な昆虫の羽が生え、身体には何も纏っていない。
私は驚きのあまり息を呑む。
その小妖精は小さな口を開き、告げた。
「精霊王様のお言葉を預かってまいりました」
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