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追放聖女のもふもふスローライフ
第36話 精霊王の加護と聖女の真実
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チュンチュン。
小鳥たちのさえずりと、やわらかな朝の光で目を覚ます。
今日もいい天気だ。
たまには雨が降ってくれないと困るけど――今日は晴れてくれて万々歳だ。
私はいつものようにもふぞーをひと撫でする。
ふかふかの毛並みが指に吸い付くようで、いつまでも撫でていたくなる。
身支度を整え、台所へ向かうと、みんなも次々に起きてきて、それぞれの仕事を始めた。
湯気の立つスープから漂うハーブの香りが家中に広がり、温かな朝を感じる。
みんなで囲む朝食――そんな、いつもの何気ない日常が、私にはたまらなく愛おしい。
朝食を終えると、私は雑貨屋へ向かい、アリサちゃんを迎えに行った。
「ティンカ、話はしておいてくれた?」
「うん、オッケーだってさ!」
ティンカは胸を張って答える。
うん、さすがは小妖精。頼りになる。
「みんな、準備はいい?」
「おーっ!」
「アリサちゃん、疲れとか残ってない?」
「うん! 大丈夫!」
ハーブ園での一件が少し心配だったけれど、彼女はすっかり元気そうだ。
若い子の回復力って、ほんとすごい。
私たちは屋敷を出て、まず泉へと向かった。
澄んだ水面が朝日を映し、光が森の天井に揺らめく。
鳥の声と水音が重なり合い、まるで森全体が目を覚ましていくようだった。
「それじゃあ、綺麗にしてから行こうね」
私たちはいつものように衣服を脱ぎ、沐浴する。
冷たい水が肌を滑り、森の香りが胸いっぱいに広がった。
体も心も清められていくような、不思議な静けさ。
「みんな綺麗になったね。それじゃあ着替えよう」
私はアリサちゃんとロゼに、「新緑の緑」で織ったビキニを渡す。
淡い葉の色が朝の光に透けて、二人とも森の精霊みたいだ。
ミミィには申し訳ないけれど、今回はミミズクの姿になってもらう。
残った生地が、どうしても二人分しかなかったのだ。
「私は裸でも問題ありませんよ」
「ん、私も裸で問題ない」
「……うん、そう言うと思った。でもね、それは私の精神的に問題あるの」
二人が首をかしげるのを横目に、私はため息をつきながら「白銀のビキニアーマー」を取り出した。
魔銀製の鎧は、ぴたりと私の体に合った。
冷たい金属が肌に吸い付き、鏡のように光を返す。
でも……これ、小さすぎない?
これで戦うって、絶対何かの間違いだと思うんだけど。
騎士達がこの姿で親善大使をしてたって話、あれ……もしかして色仕掛け込みの外交?
いやいや、夢で見たエルフやドワーフの騎士ならともかく、この鎧の持ち主には――ちょっと無理だと思う。
「おねーちゃん、かっこいいです! それに……なんだか大人っぽい!」
アリサちゃん、今、言葉を選んだよね。
……たぶん、“えっち”って言いたかったけど我慢したんだよね……
私は苦笑しながら息をつき、気を取り直した。
「それじゃあティンカ、道案内よろしく」
「了解っ!」
こうして、私たちは森の奥――精霊王のもとへと向かった。
ティンカに導かれるように進むと、道はいつの間にか滑らかになり、足に優しく馴染む。
木々は枝を引き、葉が風に揺れて、まるで道を示すように光を反射していた。
足元からは大地の鼓動が伝わり、空気には精霊たちの気配が満ちている。
ここは、まさに「森が生きている」場所だった。
息をのむ。
この感覚は、魔法でも神殿でも味わえない――精霊の世界そのもの。
やがて視界が開け、木々で編まれたようなドーム状の空間にたどり着く。
澄みきった空気が頬を撫で、音が吸い込まれるような静けさが広がっていた。
その中央――
大樹の根元に、巨大な白い狼が静かに横たわっていた。
陽の光を受けて銀色に輝く毛並み。
琥珀のような双眸がゆるやかに開き、私たちを見据える。
その視線には威圧も敵意もない。
ただ、世界そのものを見渡すような、圧倒的な“存在”の重みがあった。
風が止み、森のざわめきさえ息を潜める。
――この森の主にして、精霊たちの主。
精霊王だ。
「――よくぞ来た。森の娘たちよ」
ドームに足を踏み入れた瞬間、声が響いた。
低く、威厳のある、それでいてどこか温もりを帯びた声。
まるで森そのものが語りかけてくるようだった。
「お初にお目にかかります、精霊王様。私は聖女リリアナと申します」
私は精霊王の前で恭しく跪き、名を告げた。
そのとき、精霊王の表情がわずかに曇る。
「おね……リリアナの弟子、アリサです」
「私はロゼ」
「ミミィです!」
三人も順に頭を下げた。
「して――我に何用か?」
「ここにいるアリサに、精霊王様の加護を。聖女としての力を授けていただきたく参りました」
「おねがいします、聖獣様。私に聖女の力をください!」
まただ。
アリサちゃんが“聖獣様”と言った瞬間、精霊王の眉がかすかに動いた。
やはり、“聖女”や“聖獣”という言葉を好ましく思っていないようだ。
「……アリサと言ったな。そなたは何故、聖女の力とやらを望むのか?」
「……それは、聖女になって、困っている人を助けたいからです」
「それは“聖女”にならねばできぬことか? そなたがなりたいものは、本当に“聖女”なのか?」
「……私が、なりたいもの……?」
アリサちゃんは目を伏せて考え込む。
その小さな背中が、光に照らされて揺れていた。
……まだ幼いアリサちゃんには難しい質問かもしれない。でも、これはアリサちゃん自身が自分で考え、答えを出さなければならないことだ。
私はただ、静かに見守った。
「私がなりたいのは……面倒臭がりで、ずぼらで、ちょっとおっちょこちょいで……それでも優しくて、家族思いで、困っている人がいたら考えるよりも先に動ける。そんな聖女様になりたいです!」
……なに、その聖女像……それって……
隣でロゼとミミィが笑いをこらえているのが見えた。
……もしかして、私のこと!? アリサちゃんは私のこと、そういう風に思ってたの?
精霊王はしばし沈黙し、そしてゆっくりと頷いた。
「――良いだろう。そなたに我が加護を与える。“あの方”ほどではないが、そなたの助けとなるだろう」
……あの方?
そう思う間もなく、淡い光がアリサちゃんの全身を包み込む。
その光は柔らかく脈動しながら、彼女の身体に吸い込まれるように消えていった。
「……あったかいです。胸の奥がぽかぽかして……ありがとうございます」
アリサちゃんは両手を胸に当てて微笑んだ。
無事に加護を授かったようだ。
これで今日の目的は果たせた。――でも、少し気になることがある。それは、私の疑問ともつながっているように思えた。
「精霊王様。お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「申してみよ」
「先ほどから、精霊王様は“聖女”や“聖獣様”という呼び名に、あまり良い感情を抱かれていないように見えました。
……それには、何か理由があるのでしょうか?」
精霊王はしばし黙し、目を閉じた。
そして深く息を吐き、静かに語り始めた。
「――“聖女”。それは人の傲慢の証だ」
精霊王の声が低く響く。空気がわずかに震え、木々の葉がざわめいた。
「かつて、この地には本物の神がいた。冥府を司り、狩猟を統べ、森の命を見守る王――“獣神”である」
森の奥がざわめいた。
その名が呼ばれただけで、目に見えぬ精霊たちが共鳴する。
「我が騎士の末裔の中に、神の声を聞く娘が現れた。
その者は“獣神の巫女”として、森と人との狭間に立ち、祝福をもたらした。
だが……新たに興った“人の国”の者たちは、彼女を“魔女”と呼び、恐れ、捕らえ、火にくべようとしたのだ」
私は息を呑む。
……この世界でも、魔女狩りがあったのか。
「怒り狂った獣神は、人の国へと牙を剥いた。
神の力に、人は抗う術を持たず、国は炎に沈んだ。
――しかし、その怒りを鎮めたのは、他ならぬ巫女自身であった。
巫女は涙ながらに、獣神へと懇願した。
“どうか、憎しみを捨て、人を赦してください”と。
命乞いをする人の王に、獣神は約定を結んだ。
――“この先、巫女とその一族に二度と危害を加えるな。
もしこの約を破るならば、この国を滅ぼそう”――と。
こうして獣神は、人の側に立った巫女を残し、何処ともなく去った。
人の王は、獣神の怒りを鎮めた巫女を“聖女”として祀り上げた。
――害さぬかわりに、己らの権威の象徴として利用したのだ。
巫女は聖女になったが、獣神信仰は禁止され、神は“まつろわぬもの”――忌むべき存在とされた。
それでもなお、獣神を慕う者たちは祈りを捨てなかった。
そして、彼らはかつて仕えた我を獣神と同一視し、その信仰を受け継いだのだ」
……それが、聖女と聖獣の真実。
やっぱり、ろくでもない話だった。
大聖堂の語る“聖女伝説”は、真実を覆い隠すための偶像にすぎなかったのだ。
ザクソン村が侵略を受けなかったのは、約定の加護によるもの。
そして、獣神を信じ続けた人々は“神が遣わした聖なる獣”と“精霊王”という二つを隠れ蓑に、信仰を守ったのだ。
「……精霊王様、ありがとうございました」
私たちは深く一礼し、精霊王のもとを後にした。
「……それが……今の……ケルン様……」
低くかすれた声が、風に紛れて聞こえた気がした。
ドームを出ると、そこは精霊の泉のほとりだった。
「キュキュゥ」
もふぞーが鳴いた。
――あれ? そういえば、今までどこにいたんだろう。
……まあ、いいか。
そう言えばこの子も謎だったね。精霊王に聞けばよかったかな?
それでも、アリサちゃんが無事に加護をもらえて本当によかった。
私は小さくつぶやき、もふぞーの背をそっと撫でた。
小鳥たちのさえずりと、やわらかな朝の光で目を覚ます。
今日もいい天気だ。
たまには雨が降ってくれないと困るけど――今日は晴れてくれて万々歳だ。
私はいつものようにもふぞーをひと撫でする。
ふかふかの毛並みが指に吸い付くようで、いつまでも撫でていたくなる。
身支度を整え、台所へ向かうと、みんなも次々に起きてきて、それぞれの仕事を始めた。
湯気の立つスープから漂うハーブの香りが家中に広がり、温かな朝を感じる。
みんなで囲む朝食――そんな、いつもの何気ない日常が、私にはたまらなく愛おしい。
朝食を終えると、私は雑貨屋へ向かい、アリサちゃんを迎えに行った。
「ティンカ、話はしておいてくれた?」
「うん、オッケーだってさ!」
ティンカは胸を張って答える。
うん、さすがは小妖精。頼りになる。
「みんな、準備はいい?」
「おーっ!」
「アリサちゃん、疲れとか残ってない?」
「うん! 大丈夫!」
ハーブ園での一件が少し心配だったけれど、彼女はすっかり元気そうだ。
若い子の回復力って、ほんとすごい。
私たちは屋敷を出て、まず泉へと向かった。
澄んだ水面が朝日を映し、光が森の天井に揺らめく。
鳥の声と水音が重なり合い、まるで森全体が目を覚ましていくようだった。
「それじゃあ、綺麗にしてから行こうね」
私たちはいつものように衣服を脱ぎ、沐浴する。
冷たい水が肌を滑り、森の香りが胸いっぱいに広がった。
体も心も清められていくような、不思議な静けさ。
「みんな綺麗になったね。それじゃあ着替えよう」
私はアリサちゃんとロゼに、「新緑の緑」で織ったビキニを渡す。
淡い葉の色が朝の光に透けて、二人とも森の精霊みたいだ。
ミミィには申し訳ないけれど、今回はミミズクの姿になってもらう。
残った生地が、どうしても二人分しかなかったのだ。
「私は裸でも問題ありませんよ」
「ん、私も裸で問題ない」
「……うん、そう言うと思った。でもね、それは私の精神的に問題あるの」
二人が首をかしげるのを横目に、私はため息をつきながら「白銀のビキニアーマー」を取り出した。
魔銀製の鎧は、ぴたりと私の体に合った。
冷たい金属が肌に吸い付き、鏡のように光を返す。
でも……これ、小さすぎない?
これで戦うって、絶対何かの間違いだと思うんだけど。
騎士達がこの姿で親善大使をしてたって話、あれ……もしかして色仕掛け込みの外交?
いやいや、夢で見たエルフやドワーフの騎士ならともかく、この鎧の持ち主には――ちょっと無理だと思う。
「おねーちゃん、かっこいいです! それに……なんだか大人っぽい!」
アリサちゃん、今、言葉を選んだよね。
……たぶん、“えっち”って言いたかったけど我慢したんだよね……
私は苦笑しながら息をつき、気を取り直した。
「それじゃあティンカ、道案内よろしく」
「了解っ!」
こうして、私たちは森の奥――精霊王のもとへと向かった。
ティンカに導かれるように進むと、道はいつの間にか滑らかになり、足に優しく馴染む。
木々は枝を引き、葉が風に揺れて、まるで道を示すように光を反射していた。
足元からは大地の鼓動が伝わり、空気には精霊たちの気配が満ちている。
ここは、まさに「森が生きている」場所だった。
息をのむ。
この感覚は、魔法でも神殿でも味わえない――精霊の世界そのもの。
やがて視界が開け、木々で編まれたようなドーム状の空間にたどり着く。
澄みきった空気が頬を撫で、音が吸い込まれるような静けさが広がっていた。
その中央――
大樹の根元に、巨大な白い狼が静かに横たわっていた。
陽の光を受けて銀色に輝く毛並み。
琥珀のような双眸がゆるやかに開き、私たちを見据える。
その視線には威圧も敵意もない。
ただ、世界そのものを見渡すような、圧倒的な“存在”の重みがあった。
風が止み、森のざわめきさえ息を潜める。
――この森の主にして、精霊たちの主。
精霊王だ。
「――よくぞ来た。森の娘たちよ」
ドームに足を踏み入れた瞬間、声が響いた。
低く、威厳のある、それでいてどこか温もりを帯びた声。
まるで森そのものが語りかけてくるようだった。
「お初にお目にかかります、精霊王様。私は聖女リリアナと申します」
私は精霊王の前で恭しく跪き、名を告げた。
そのとき、精霊王の表情がわずかに曇る。
「おね……リリアナの弟子、アリサです」
「私はロゼ」
「ミミィです!」
三人も順に頭を下げた。
「して――我に何用か?」
「ここにいるアリサに、精霊王様の加護を。聖女としての力を授けていただきたく参りました」
「おねがいします、聖獣様。私に聖女の力をください!」
まただ。
アリサちゃんが“聖獣様”と言った瞬間、精霊王の眉がかすかに動いた。
やはり、“聖女”や“聖獣”という言葉を好ましく思っていないようだ。
「……アリサと言ったな。そなたは何故、聖女の力とやらを望むのか?」
「……それは、聖女になって、困っている人を助けたいからです」
「それは“聖女”にならねばできぬことか? そなたがなりたいものは、本当に“聖女”なのか?」
「……私が、なりたいもの……?」
アリサちゃんは目を伏せて考え込む。
その小さな背中が、光に照らされて揺れていた。
……まだ幼いアリサちゃんには難しい質問かもしれない。でも、これはアリサちゃん自身が自分で考え、答えを出さなければならないことだ。
私はただ、静かに見守った。
「私がなりたいのは……面倒臭がりで、ずぼらで、ちょっとおっちょこちょいで……それでも優しくて、家族思いで、困っている人がいたら考えるよりも先に動ける。そんな聖女様になりたいです!」
……なに、その聖女像……それって……
隣でロゼとミミィが笑いをこらえているのが見えた。
……もしかして、私のこと!? アリサちゃんは私のこと、そういう風に思ってたの?
精霊王はしばし沈黙し、そしてゆっくりと頷いた。
「――良いだろう。そなたに我が加護を与える。“あの方”ほどではないが、そなたの助けとなるだろう」
……あの方?
そう思う間もなく、淡い光がアリサちゃんの全身を包み込む。
その光は柔らかく脈動しながら、彼女の身体に吸い込まれるように消えていった。
「……あったかいです。胸の奥がぽかぽかして……ありがとうございます」
アリサちゃんは両手を胸に当てて微笑んだ。
無事に加護を授かったようだ。
これで今日の目的は果たせた。――でも、少し気になることがある。それは、私の疑問ともつながっているように思えた。
「精霊王様。お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「申してみよ」
「先ほどから、精霊王様は“聖女”や“聖獣様”という呼び名に、あまり良い感情を抱かれていないように見えました。
……それには、何か理由があるのでしょうか?」
精霊王はしばし黙し、目を閉じた。
そして深く息を吐き、静かに語り始めた。
「――“聖女”。それは人の傲慢の証だ」
精霊王の声が低く響く。空気がわずかに震え、木々の葉がざわめいた。
「かつて、この地には本物の神がいた。冥府を司り、狩猟を統べ、森の命を見守る王――“獣神”である」
森の奥がざわめいた。
その名が呼ばれただけで、目に見えぬ精霊たちが共鳴する。
「我が騎士の末裔の中に、神の声を聞く娘が現れた。
その者は“獣神の巫女”として、森と人との狭間に立ち、祝福をもたらした。
だが……新たに興った“人の国”の者たちは、彼女を“魔女”と呼び、恐れ、捕らえ、火にくべようとしたのだ」
私は息を呑む。
……この世界でも、魔女狩りがあったのか。
「怒り狂った獣神は、人の国へと牙を剥いた。
神の力に、人は抗う術を持たず、国は炎に沈んだ。
――しかし、その怒りを鎮めたのは、他ならぬ巫女自身であった。
巫女は涙ながらに、獣神へと懇願した。
“どうか、憎しみを捨て、人を赦してください”と。
命乞いをする人の王に、獣神は約定を結んだ。
――“この先、巫女とその一族に二度と危害を加えるな。
もしこの約を破るならば、この国を滅ぼそう”――と。
こうして獣神は、人の側に立った巫女を残し、何処ともなく去った。
人の王は、獣神の怒りを鎮めた巫女を“聖女”として祀り上げた。
――害さぬかわりに、己らの権威の象徴として利用したのだ。
巫女は聖女になったが、獣神信仰は禁止され、神は“まつろわぬもの”――忌むべき存在とされた。
それでもなお、獣神を慕う者たちは祈りを捨てなかった。
そして、彼らはかつて仕えた我を獣神と同一視し、その信仰を受け継いだのだ」
……それが、聖女と聖獣の真実。
やっぱり、ろくでもない話だった。
大聖堂の語る“聖女伝説”は、真実を覆い隠すための偶像にすぎなかったのだ。
ザクソン村が侵略を受けなかったのは、約定の加護によるもの。
そして、獣神を信じ続けた人々は“神が遣わした聖なる獣”と“精霊王”という二つを隠れ蓑に、信仰を守ったのだ。
「……精霊王様、ありがとうございました」
私たちは深く一礼し、精霊王のもとを後にした。
「……それが……今の……ケルン様……」
低くかすれた声が、風に紛れて聞こえた気がした。
ドームを出ると、そこは精霊の泉のほとりだった。
「キュキュゥ」
もふぞーが鳴いた。
――あれ? そういえば、今までどこにいたんだろう。
……まあ、いいか。
そう言えばこの子も謎だったね。精霊王に聞けばよかったかな?
それでも、アリサちゃんが無事に加護をもらえて本当によかった。
私は小さくつぶやき、もふぞーの背をそっと撫でた。
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