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事態の緊急性

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「すみません、皇帝様」


「どうした。私の提案が不満かね?」


「いえ…。そうではなくてですね。その、皇帝様が仰せになった、近衛騎士団親衛隊で近衛師団長っていうのがどうもピンとこなくて…」


「簡単だ。近衛騎士団親衛隊は私が直接指揮を取る軍団である。その中で防衛隊、師団に分かれているうちの『師団長』に任命するということだ」


「はぁ…。大区分として近衛騎士団親衛隊に所属で、その中の小区分として師団に所属になって、その師団の中のリーダーという認識でよろしいでしょうか?」


「その通りだ。わかったら返事を聞かせてほしい」


 ギルバート15世はじっと、青く澄んだ瞳で俺を見つめる。俺に断る選択肢など、あろうはずもなかった。


 屋敷に戻ると、またしてもソーナ達3人が心配そうに俺を出迎えた。だが、アクアミスリルを持った俺を見て何かを悟ったらしい。ソーナは前に進み出て俺の両肩をがっしり掴むと、力強く次のように言った。


「パオロ! しっかりやるのよ」


「はい!」


 俺も、力強く返事をした。が、まだ幼いアロンゾは耐えきれなくなって俺にたずねた。


「どういうこと、兄ちゃん、なんで剣持ってるの?」


「そうですよ、パオロ様! ヤバいですよ!」


 ってミョージャ。お前もかい! 仕方ない。ここはしっかり説明しなければならない。それがバレンシア家の当主としての責任である。


「俺は、えっと、近衛騎士団親衛隊に配属になった」


「えええぇぇ!」


 大きな声を上げたのは、やはり世の中のことを1番よく知っているソーナだった。


「近衛騎士団親衛隊!? 今までのバレンシア家にもいきなり最初からそこに配属になった方はいないわよ!?」


「お待ちください、母上殿…」


「やった! さすが兄ちゃんだよ! 僕やっぱり、剣術科に行きたい!」


「パオロ様! さすがは私の旦那様ですっ!」


「いいわよ、いいわよ、今夜はお祝いしましょう!」


 待て待て待て。気が早い。ていうかミョージャ、聞いてたぞ。俺はミョージャの旦那じゃない! まだね。
 みんな早くもお祝いの準備にかかろうとしている。俺は後ろ姿に声を浴びせた。



「その中の師団長になりました!」


 ソーナは振り返って、目を丸くした。それから驚きのあまりひっくり返ってしまったのだった。
 その後、俺は3人からのお祝いを受けた。幸せな時間だった。そして後日、シュミートやブルーナにも知らせ、同様の反応を受け取った。
 もちろん。天国の親父とマルイにも、このことは心の中で報告した。
 ただ、喜んでばかりもいられない。それは先日の宮殿襲撃が、やっぱり他国からの奇襲である可能性が高かったからである。
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