7 / 11
紅白ねずみ
しおりを挟む
ある研究所のあるカゴの中、白いねずみが子を産んだ。
双眼を閉じた10匹の子どもたち。身を覆う毛皮は未だ手にしてはいない。
子どもたちは自らの運命を知ってか、それとも必死に抗おうとしてか、互いに身を寄せ合い、震えていた。
ある日の夜のことだった。
翌朝。研究所はにわかに色めき立っていた。
所内に響き渡る赤ん坊の泣き声。その出どころは実験用マウスが飼育されている部屋だった。
あるカゴの中、真っ白な肌の赤ん坊が泣き声を上げる。カゴの隅には、白いねずみと、9匹の息絶えた子ねずみたちがいた。
――何故だ?
ある研究者が叫んだ。他の研究者は首を傾げた。
白い赤ん坊は、白い壁が真新しい大きな病院に運ばれた。そして他の赤ん坊と共にベビーベッドに寝かされた。
仮に白と呼ばれたその白い赤ん坊は、白い白衣を見ると決まって泣き出した。そのため看護婦は別の色の服を羽織るほかなかった。
病院に来て数日のち、白が姿を消した。
初めに病院が慌てふためき、続いて研究所に対侵入者ブザーが鳴り響いた。研究者たちは研究所内をドタバタと走り回り、原因を探した。
そしてマウスの飼育部屋に向かった研究者が声を上げた。
そこにいたのは、中学生くらいの身長の、真っ白な髪の少年だった。
入り口――研究者が腰を抜かしている方――を振り返ったその少年は、身長こそ違うが、真っ白な肌に赤い目と、まごうことなく白その人であった。彼の細く白い腕の中には、9匹のねずみの死骸が入った透明な水槽が抱かれていた。
研究所の門を抜けた白は、真っ赤な服を身に纏い、半透明になった水槽を抱きかかえ、ゆっくりと、時折立ち止まりながら、その場をあとにした。
双眼を閉じた10匹の子どもたち。身を覆う毛皮は未だ手にしてはいない。
子どもたちは自らの運命を知ってか、それとも必死に抗おうとしてか、互いに身を寄せ合い、震えていた。
ある日の夜のことだった。
翌朝。研究所はにわかに色めき立っていた。
所内に響き渡る赤ん坊の泣き声。その出どころは実験用マウスが飼育されている部屋だった。
あるカゴの中、真っ白な肌の赤ん坊が泣き声を上げる。カゴの隅には、白いねずみと、9匹の息絶えた子ねずみたちがいた。
――何故だ?
ある研究者が叫んだ。他の研究者は首を傾げた。
白い赤ん坊は、白い壁が真新しい大きな病院に運ばれた。そして他の赤ん坊と共にベビーベッドに寝かされた。
仮に白と呼ばれたその白い赤ん坊は、白い白衣を見ると決まって泣き出した。そのため看護婦は別の色の服を羽織るほかなかった。
病院に来て数日のち、白が姿を消した。
初めに病院が慌てふためき、続いて研究所に対侵入者ブザーが鳴り響いた。研究者たちは研究所内をドタバタと走り回り、原因を探した。
そしてマウスの飼育部屋に向かった研究者が声を上げた。
そこにいたのは、中学生くらいの身長の、真っ白な髪の少年だった。
入り口――研究者が腰を抜かしている方――を振り返ったその少年は、身長こそ違うが、真っ白な肌に赤い目と、まごうことなく白その人であった。彼の細く白い腕の中には、9匹のねずみの死骸が入った透明な水槽が抱かれていた。
研究所の門を抜けた白は、真っ赤な服を身に纏い、半透明になった水槽を抱きかかえ、ゆっくりと、時折立ち止まりながら、その場をあとにした。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる