ゆきち創作短編集

ゆきち

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紅白ねずみ

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 ある研究所のあるカゴの中、白いねずみが子を産んだ。
 双眼を閉じた10匹の子どもたち。身を覆う毛皮は未だ手にしてはいない。
 子どもたちは自らの運命を知ってか、それとも必死に抗おうとしてか、互いに身を寄せ合い、震えていた。
 ある日の夜のことだった。


 翌朝。研究所はにわかに色めき立っていた。
 所内に響き渡る赤ん坊の泣き声。その出どころは実験用マウスが飼育されている部屋だった。
 あるカゴの中、真っ白な肌の赤ん坊が泣き声を上げる。カゴの隅には、白いねずみと、9匹の息絶えた子ねずみたちがいた。

――何故だ?

 ある研究者が叫んだ。他の研究者は首を傾げた。

 白い赤ん坊は、白い壁が真新しい大きな病院に運ばれた。そして他の赤ん坊と共にベビーベッドに寝かされた。
 仮に白と呼ばれたその白い赤ん坊は、白い白衣を見ると決まって泣き出した。そのため看護婦は別の色の服を羽織るほかなかった。


 病院に来て数日のち、白が姿を消した。
 初めに病院が慌てふためき、続いて研究所に対侵入者ブザーが鳴り響いた。研究者たちは研究所内をドタバタと走り回り、原因を探した。

 そしてマウスの飼育部屋に向かった研究者が声を上げた。

 そこにいたのは、中学生くらいの身長の、真っ白な髪の少年だった。
 入り口――研究者が腰を抜かしている方――を振り返ったその少年は、身長こそ違うが、真っ白な肌に赤い目と、まごうことなく白その人であった。彼の細く白い腕の中には、9匹のねずみの死骸が入った透明な水槽が抱かれていた。


 研究所の門を抜けた白は、真っ赤な服を身に纏い、半透明になった水槽を抱きかかえ、ゆっくりと、時折立ち止まりながら、その場をあとにした。
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