壊す世界と夢の魔法

clover

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EP3

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「お前が過去に何を抱えてるのかも、何故この世界を憎むのかも知らない。だが、お前は間違った。」
「黙れ...私は...世界を...世界を......この世の全てを...絶望に陥れてやるんだ!」
知優は僕を強く睨み付けたまま、肩を押さえてそう言った。
「お前の目的は世界を壊すことじゃない。」
「違う!」
「いや違わない!知優、お前は世界を壊すと言ったが、今は絶望に陥れてやると言った。」
「そうだ!同じことだ!!」
「同じことじゃないんだよ。この世の全てを絶望に陥れたところで...全てが無くなる訳じゃない。ゴミは処理しないとまた臭うんだよ。」
「ッ......」
知優は俯き、地面に涙を溢した。
「知優、お前は、」











「優しくなりたかったんだよ。」










「そうだろ。だってお前はちゃんと笑える。まだ目も輝いているじゃないか。そんなやつに世界を壊すなんて出来ないんだ。

この世を終わらせるより先に、自分が変われないものか、

この世を終わらせるより先に、自分を救えないものか、

お前はわかっていた。この世の誰よりも一番。」
知優は満点の星空を見上げるかのように上向き、おもいっきり声を出して泣きじゃくった。
俺達はそれを見届けて解散した。



























ーー知優の過去ーー

私は親に愛されなかった。優しくしてもらえなかった。小さいときに親戚に引き取られ、ある時、親戚達が私の目の前で、私を探してした。私は何度も「ここにいるよ」と言った


でも、届かなかった。まるで自分の存在が周りから消える瞬間を目の当たりにしたようだ。それが私の魔法。周りから見えなくなってしまう魔法。

中学二年の夏、家を出た。親戚達は皆、私に優しくしているようだった。でも違った。聞いてしまった。


『ねぇ、知優ちゃんはまだ15歳なんだし。』
『正気か?!あいつのせいで生活費が...俺の家族を養えない!!追い出すべきだ!』
『でも......』
『あいつが...あいつさえいなければ...あいつを引き取らなければよかったんだ!!』


(やっぱり駄目だ。愛されていると思ったのに。私はいない方が都合がいいんだ。みんなにとって私は邪魔者でしかなくて、私にとってみんなは......私にとって...みんなはけだものだ。私を脅かす存在なんだ。)


ある時、何かが切れた。




「そうだ...消そう。」



まるでその考えが当たり前かのように、世界の破壊を誓った。
学校には行かず、路地裏で人を殺してみたりもした。

けど、そのたびに考えてしまう。
「この人にも家族がいる。私が殺したことで残される人はどう思うだろう。」
世界の破壊を誓ったのに、偽善者にでもなったつもりかと思った。
けど、出会った。美緒と雪に。雪は気づかせてくれた。私の本音を引き出してくれた。
私は



優しくなりたかった。



でももうだめだ。私はもう報われていい人間じゃない。
肩は外れてる。もう片方の手で、このナイフで、私の心臓を...突いてしまえば......みんな幸せだ。



「やめて。」
泣きながら私の心臓を刺そうとする私の手を止めたのは美緒だった。
「それじゃ駄目だよ。報われない。人はみんな報われなきゃだめだよ。」
「でも私は報われていい人間じゃないんだ。」
美緒は私の眼帯を外した。
「綺麗な右目じゃない。綺麗で澄み切った青色の目。私は好きだな。」
生まれつきオッドアイで、不気味がられた。両親にも目が原因で捨てられた。
美緒は私の目を好きだと言ってくれる。

駄目だ。優しくするな。
泣いてしまう。込み上げてしまう。



報われてしまう。


「死にたくない...。」
口に出してしまった。
いや、出してよかったんだ。もういいんだ。正直になろう。


優しくなろう。


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