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ジャーマンアイリス
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朝、俺の部屋のインターホンが鳴った。
「よう。」
ドアの先には湊がいた。俺は湊を部屋へ上げ、昨日の出来事を順々に話した。
「悠斗。その話、本当なんだな?」
「あぁ。」
「わかった。」
「随分とあっさり信じるんだな。」
「そりゃ、あの時からお前、いろんなことありすぎなんだから。って言っても覚えてないか...。まぁ高二の春から話していくよ。何か思い出したらその都度言ってくれ。」
「ありがとう。」
「まず、お前は高二の始業式の日に消えた。」
「消えた?」
「あぁ。2018年4月6日だ。その日を境に、忽然とお前がいなくなった。帰ってきた、というか、見つかったのはのは2018年9月18日だ。」
「それって...、」
「そうだ。2年前の昨日だ。」
「その5ヶ月間俺は何をしてたんだ?」
「わからない。見つかってからもお前はその事に関してはなにも話さなかった。お前の空白の5ヶ月だ。」
「そうだ......!藍坂さんは...!」
「藍坂 未菜は死んだよ。」
「え...?し、死んだって...そんな...」
「あぁ、お前が高一のときから思い続けた人はもういない。2018年8月18日にな。事故だったんだ。仕方ないよ。」
「8月...俺がいない間に事故で......そうだったのか。」
「その1ヶ月後の2018年9月18日、俺の家の近所の公園でお前が仰向けで倒れているのが見つかった。」
「倒れていたのか?」
「そうだ。でもそれがちょっと奇妙でな。お前、服はボロボロだしめっちゃ怪我してるし左腕は折れてるしで、めちゃくちゃだったんだよ。あとお前の胸にジャーマンアイリスっていう花が仰山盛られてた。」
「ジャーマンアイリス?なんでそんなものが...」
「わからん。最初に発見したのは俺だが、既にその状態だった。」
「そうなのか...」
「あぁ。そのあと、お前はしばらく入院し、退院して学校にも復帰した。3年になってから、俺らは同じ大学へ行くと決め、そこからめちゃめちゃ頑張ったんだよ。そんで、今こうして千葉大学薬学部に合格したってわけだ。」
「なるほど。それにしても記憶が抜けているだけじゃなくて、俺自身がいなかった時期があったとはな...。決めたぞ。」
「決めたって何を?」
「湊、俺は記憶を取り戻す。絶対にな。」
「そうだよな!俺達も手伝うぜ!」
「俺達?」
「あ...お前は覚えてないのか。大学で同じ高校なのは俺とお前だけで、あとはみんな大学に入ってからの友達なんだ。また改めて会わせてやるよ。事情は俺から言っておく。」
「あぁ。今日はありがとな。」
「おう!また明日大学でな!」
記憶を取り戻すと言ったが、そのためには自分が2018年4月6日から2018年9月18日までの5ヶ月、何をしていたかが鍵だ。9月17日のハナミズキの記憶だけはある。手がかりはそのハナミズキの記憶と、湊から聞いた8月18日の夜のことだけだ。
「よう。」
ドアの先には湊がいた。俺は湊を部屋へ上げ、昨日の出来事を順々に話した。
「悠斗。その話、本当なんだな?」
「あぁ。」
「わかった。」
「随分とあっさり信じるんだな。」
「そりゃ、あの時からお前、いろんなことありすぎなんだから。って言っても覚えてないか...。まぁ高二の春から話していくよ。何か思い出したらその都度言ってくれ。」
「ありがとう。」
「まず、お前は高二の始業式の日に消えた。」
「消えた?」
「あぁ。2018年4月6日だ。その日を境に、忽然とお前がいなくなった。帰ってきた、というか、見つかったのはのは2018年9月18日だ。」
「それって...、」
「そうだ。2年前の昨日だ。」
「その5ヶ月間俺は何をしてたんだ?」
「わからない。見つかってからもお前はその事に関してはなにも話さなかった。お前の空白の5ヶ月だ。」
「そうだ......!藍坂さんは...!」
「藍坂 未菜は死んだよ。」
「え...?し、死んだって...そんな...」
「あぁ、お前が高一のときから思い続けた人はもういない。2018年8月18日にな。事故だったんだ。仕方ないよ。」
「8月...俺がいない間に事故で......そうだったのか。」
「その1ヶ月後の2018年9月18日、俺の家の近所の公園でお前が仰向けで倒れているのが見つかった。」
「倒れていたのか?」
「そうだ。でもそれがちょっと奇妙でな。お前、服はボロボロだしめっちゃ怪我してるし左腕は折れてるしで、めちゃくちゃだったんだよ。あとお前の胸にジャーマンアイリスっていう花が仰山盛られてた。」
「ジャーマンアイリス?なんでそんなものが...」
「わからん。最初に発見したのは俺だが、既にその状態だった。」
「そうなのか...」
「あぁ。そのあと、お前はしばらく入院し、退院して学校にも復帰した。3年になってから、俺らは同じ大学へ行くと決め、そこからめちゃめちゃ頑張ったんだよ。そんで、今こうして千葉大学薬学部に合格したってわけだ。」
「なるほど。それにしても記憶が抜けているだけじゃなくて、俺自身がいなかった時期があったとはな...。決めたぞ。」
「決めたって何を?」
「湊、俺は記憶を取り戻す。絶対にな。」
「そうだよな!俺達も手伝うぜ!」
「俺達?」
「あ...お前は覚えてないのか。大学で同じ高校なのは俺とお前だけで、あとはみんな大学に入ってからの友達なんだ。また改めて会わせてやるよ。事情は俺から言っておく。」
「あぁ。今日はありがとな。」
「おう!また明日大学でな!」
記憶を取り戻すと言ったが、そのためには自分が2018年4月6日から2018年9月18日までの5ヶ月、何をしていたかが鍵だ。9月17日のハナミズキの記憶だけはある。手がかりはそのハナミズキの記憶と、湊から聞いた8月18日の夜のことだけだ。
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