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第1章 変人の幼馴染
第2話
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昨夜の烈は本当に大変だった。
警察の事情聴取のために拘束され、家に帰った時にはすでに日付が変わっていた。授業の課題が終わったのは深夜二時頃であり、おかげで寝不足。今日の授業中に何度も居眠りし、教師達に怒られるハメに。昨日のことを説明したら、「またか」と許してくれたが。
今日一日中眠気にずっと襲われていたが、今はとあることがきっかけで完全に霧散している。
烈が現在いるのは、高校の校舎裏にある林。入学式の時は桜が咲き誇っていたが、今は全て葉桜になっている。
烈はポケットの中から一枚の綺麗な手紙を取り出した。すでに三回も読み返した手紙をもう一度読み返す。手紙にはこう書かれていた。
剛村烈くんへ。突然のお手紙、失礼します。私にはどうしても剛村くんと直接会って伝えたいことがあります。放課後、校舎裏の林へ来てください。お待ちしております。
この手紙はホームルームが終わり帰ろうとした時に、クラスメイトから渡された。この手紙はなんだと聞いた時、クラスメイトは「君に渡してほしいって頼まれたんだよ。……察してよ」と照れくさそうな表情だった。
一人称は私であることから、手紙の送り主は女性。烈が呼び出された場所は人があまり来ない場所であり、生徒の間では告白スポットと呼ばれている。そして、手紙を渡してきた時のクラスメイトの甘酸っぱい表情。
これらのことから、とあることが推測できる。
手紙はいわゆるラブレターというものであり、呼び出しの理由は告白である。
烈は自分にもようやく学生らしいイベントが到来したのだと喜ぶ。
思い出してみれば、これまでは恋愛とは無縁であった。
事件事故に巻き込まれるという体質から露骨に避ける女子生徒もおり、近くにいたのは物好きな幼馴染ぐらいだ。
中学生時代に好きな女子生徒に告白したが、「剛村くんはいい人だけど、付き合うにはちょっと。……それに明日見さんがいるし」と振られた。
いや、待てよ。手紙をくれた相手は誰だ。
烈はふと冷静になる。手紙には差出人の名前が書かれていない。字はなんとなく見覚えがある気がするが、誰だか思い出せない。もしかしたら、自分の知らない相手かもしれない。
誰だかわからないのに、付き合うべきか。いや、このチャンスを逃すのはおしい。しかし、とりあえずで付き合うのは相手に不誠実だ。
烈が悶々と悩んでいると背後から足音が聞こえ、烈の心臓が跳ね上がる。足音に比例して心臓の音も大きくなっていく。
意を決して振り向き、そして驚愕した。
そこにいたのは、一人の少女。平均よりも少し高い身長で、首元の赤色のリボンは烈と同じ二年生を表している。鴉の濡れ羽色の黒髪は腰まで長い。鼻が高く、大きな目は猫を思わせ吸い込まれるような深い魅力がある。芸能人に匹敵する美貌で、男なら誰もが振り向くだろう。
少女は指をもじもじと絡ませ頬を上気させながら、恥ずかしそうに上目遣いで烈を見つめる。異性を一発でオとす表情だが、烈は頬を引き攣らせるだけ。
「あ、あの、烈くん。今日は来てくれてありがとうね。手紙にも書いたけど、どうしても伝えたいことがあって。迷惑じゃなかったかな?」
少女の声は甘ったるく、聞いた者の脳髄を蕩けさせる魔力がある。しかし、烈は癒しではなく寒気を感じ、全身に鳥肌が立つ。
なぜこうも可愛らしい少女と接しても、全く魅了されないのか。
その理由は簡単。彼女の姿は見慣れたものであり、本性がどういうものかも知っているから。
「明里、俺を呼び出し何を企んでいる! こんな手の込んだことをしやがって!」
少女、明日見明里は烈の幼馴染であり、十年以上の付き合いだ。
明里ははにかんだ笑みを消し、代わりに別の笑みを浮かべる。その笑みには妙な凄みがあり、例えるならいたずら小僧がするような、何かを企んでいる顔だ。
「企むって、人聞きの悪い。ボクはただ烈くんが最近ボクを避けるから、話し会いの場を儲けようとしただけだよ」
一人称も私からボクに変わり、口調も少し中性的なものへとなる、これが明里本来の喋り方。普段の彼女の喋り方を知っている烈からすれば、さきほどの女の子らしい言動は薄気味悪く感じた。
「烈くんを呼び出した理由だけどね、ボクと一緒にある事件を調べてほしいんだ。名前は青薔薇の貴公子……って、烈くん、どこへ行くんだい? 愛しの幼馴染を無視するんじゃないよ!」
明里の呼び止める声を背に、烈はその場を足早に去った。
警察の事情聴取のために拘束され、家に帰った時にはすでに日付が変わっていた。授業の課題が終わったのは深夜二時頃であり、おかげで寝不足。今日の授業中に何度も居眠りし、教師達に怒られるハメに。昨日のことを説明したら、「またか」と許してくれたが。
今日一日中眠気にずっと襲われていたが、今はとあることがきっかけで完全に霧散している。
烈が現在いるのは、高校の校舎裏にある林。入学式の時は桜が咲き誇っていたが、今は全て葉桜になっている。
烈はポケットの中から一枚の綺麗な手紙を取り出した。すでに三回も読み返した手紙をもう一度読み返す。手紙にはこう書かれていた。
剛村烈くんへ。突然のお手紙、失礼します。私にはどうしても剛村くんと直接会って伝えたいことがあります。放課後、校舎裏の林へ来てください。お待ちしております。
この手紙はホームルームが終わり帰ろうとした時に、クラスメイトから渡された。この手紙はなんだと聞いた時、クラスメイトは「君に渡してほしいって頼まれたんだよ。……察してよ」と照れくさそうな表情だった。
一人称は私であることから、手紙の送り主は女性。烈が呼び出された場所は人があまり来ない場所であり、生徒の間では告白スポットと呼ばれている。そして、手紙を渡してきた時のクラスメイトの甘酸っぱい表情。
これらのことから、とあることが推測できる。
手紙はいわゆるラブレターというものであり、呼び出しの理由は告白である。
烈は自分にもようやく学生らしいイベントが到来したのだと喜ぶ。
思い出してみれば、これまでは恋愛とは無縁であった。
事件事故に巻き込まれるという体質から露骨に避ける女子生徒もおり、近くにいたのは物好きな幼馴染ぐらいだ。
中学生時代に好きな女子生徒に告白したが、「剛村くんはいい人だけど、付き合うにはちょっと。……それに明日見さんがいるし」と振られた。
いや、待てよ。手紙をくれた相手は誰だ。
烈はふと冷静になる。手紙には差出人の名前が書かれていない。字はなんとなく見覚えがある気がするが、誰だか思い出せない。もしかしたら、自分の知らない相手かもしれない。
誰だかわからないのに、付き合うべきか。いや、このチャンスを逃すのはおしい。しかし、とりあえずで付き合うのは相手に不誠実だ。
烈が悶々と悩んでいると背後から足音が聞こえ、烈の心臓が跳ね上がる。足音に比例して心臓の音も大きくなっていく。
意を決して振り向き、そして驚愕した。
そこにいたのは、一人の少女。平均よりも少し高い身長で、首元の赤色のリボンは烈と同じ二年生を表している。鴉の濡れ羽色の黒髪は腰まで長い。鼻が高く、大きな目は猫を思わせ吸い込まれるような深い魅力がある。芸能人に匹敵する美貌で、男なら誰もが振り向くだろう。
少女は指をもじもじと絡ませ頬を上気させながら、恥ずかしそうに上目遣いで烈を見つめる。異性を一発でオとす表情だが、烈は頬を引き攣らせるだけ。
「あ、あの、烈くん。今日は来てくれてありがとうね。手紙にも書いたけど、どうしても伝えたいことがあって。迷惑じゃなかったかな?」
少女の声は甘ったるく、聞いた者の脳髄を蕩けさせる魔力がある。しかし、烈は癒しではなく寒気を感じ、全身に鳥肌が立つ。
なぜこうも可愛らしい少女と接しても、全く魅了されないのか。
その理由は簡単。彼女の姿は見慣れたものであり、本性がどういうものかも知っているから。
「明里、俺を呼び出し何を企んでいる! こんな手の込んだことをしやがって!」
少女、明日見明里は烈の幼馴染であり、十年以上の付き合いだ。
明里ははにかんだ笑みを消し、代わりに別の笑みを浮かべる。その笑みには妙な凄みがあり、例えるならいたずら小僧がするような、何かを企んでいる顔だ。
「企むって、人聞きの悪い。ボクはただ烈くんが最近ボクを避けるから、話し会いの場を儲けようとしただけだよ」
一人称も私からボクに変わり、口調も少し中性的なものへとなる、これが明里本来の喋り方。普段の彼女の喋り方を知っている烈からすれば、さきほどの女の子らしい言動は薄気味悪く感じた。
「烈くんを呼び出した理由だけどね、ボクと一緒にある事件を調べてほしいんだ。名前は青薔薇の貴公子……って、烈くん、どこへ行くんだい? 愛しの幼馴染を無視するんじゃないよ!」
明里の呼び止める声を背に、烈はその場を足早に去った。
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