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第2章 二人で仇を討とう
第4話
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スマートフォンをしまった後、烈は湧き上がった疑問を口にする。
「八年前の青薔薇の貴公子事件の時、当時の雰囲気はどうだった? つぼみちゃん先生は事件が起きた東京に住んでいたんだろ?」
逢蕾花は自己紹介の時、中学時代までは東京におり、家庭の事情でこの県に来たと言っていた。彼女なら事件の舞台となった都内の状況を知っているのでは思ったのだ。
「八年前当時って、君と私はあまり歳が変わらないでしょ」
「そうだけどさ、当時の俺はまだ八歳だぜ。世間を騒がせている事件には全く興味はなかった。一方のつぼみちゃん先生は中学生だろ?」
「それは、まあ、そうね。君が望んでいる捜査に役立つ情報はないと思うけど、一応質問には答えようか。一言でいえば、異質かな」
「異質? 青薔薇の貴公子に怯えていたってこと?」
「それもある。だけど、反対に熱狂していた人も多くいたの」
「はあ、熱狂?」
「そう、熱狂で異様。青薔薇の貴公子は女性の人気が高かったの」
ハイブリストフィリアというものがあり、これは凶悪な殺人鬼など犯罪者に惹かれ心酔する性的嗜好のことである。ハイブリストフィリアを持つ人間は裁判を傍聴したり、収監されている犯罪者にファンレターを送るなど所謂追っかけ行為を行い、過去には獄中結婚した者もいる。そういった女性が青薔薇の貴公子事件では特に多かった。
それは何故か?
事件において、とある噂が流れたためだ。
その噂というのは、青薔薇の貴公子が不幸な女性を狙って殺害しているというもの。これは週刊誌が独自に調査して導き出した推測であり、それが広まった。
結果、青薔薇の貴公子は単なる殺人犯ではなく、不幸な境遇から女性を救ってくれる救世主と看做す人間が多く出たのである。
話を聞いた烈は呆れ顔。逢蕾花も「まあ、理解し難いよね。だから異質な空気だったの」と苦笑い。
「私の中学時代の友人にも、青薔薇の貴公子を崇拝している子が何人もいてね。ちょっと嫌なことがあると、青薔薇の貴公子に殺してほしいとか言ってた」
「つぼみちゃん先生は?」
「え?」
「つぼみちゃん先生は青薔薇の貴公子に憧れたりしてたの?」
烈は単なる好奇心として質問。烈の質問が予想外だったのか、逢蕾花は目を丸くし、きょとん顔。
「私もミーハーな性格だけど、青薔薇の貴公子に憧れは持たなかったな。友人達の気持ちも全く理解できなかった。彼女達は不幸な自分を殺してほしいって言ってたけど、私に言わせれば甘えてるだけ。自分が恵まれていることに気が付かず、被害者を、彼女達の苦しみを軽視している」
苛立たしげに表情を歪める逢蕾花を見て、烈はいつも笑っている逢蕾花も怒るのだと内心驚いた。だが、被害者を軽視していると苛立つのは烈も分かる。
逢蕾花は腕時計を確認し、「あー、随分話し込んじゃった!」といつもの柔和な表情に戻る。
「他の生徒とも面談しなきゃいけないんだ。剛村くんの方から話が無いんだったら、ここで終わりにしていいかしら?」
「俺は別に問題ないよ」
「じゃあ、面談は終了。次の生徒を呼んできて。あと、事件の捜査はなるべくバレないようにやって。学校が目を光らせているから」
「分かってるよ」
烈はそう答え、自分の教室へと戻った。
「八年前の青薔薇の貴公子事件の時、当時の雰囲気はどうだった? つぼみちゃん先生は事件が起きた東京に住んでいたんだろ?」
逢蕾花は自己紹介の時、中学時代までは東京におり、家庭の事情でこの県に来たと言っていた。彼女なら事件の舞台となった都内の状況を知っているのでは思ったのだ。
「八年前当時って、君と私はあまり歳が変わらないでしょ」
「そうだけどさ、当時の俺はまだ八歳だぜ。世間を騒がせている事件には全く興味はなかった。一方のつぼみちゃん先生は中学生だろ?」
「それは、まあ、そうね。君が望んでいる捜査に役立つ情報はないと思うけど、一応質問には答えようか。一言でいえば、異質かな」
「異質? 青薔薇の貴公子に怯えていたってこと?」
「それもある。だけど、反対に熱狂していた人も多くいたの」
「はあ、熱狂?」
「そう、熱狂で異様。青薔薇の貴公子は女性の人気が高かったの」
ハイブリストフィリアというものがあり、これは凶悪な殺人鬼など犯罪者に惹かれ心酔する性的嗜好のことである。ハイブリストフィリアを持つ人間は裁判を傍聴したり、収監されている犯罪者にファンレターを送るなど所謂追っかけ行為を行い、過去には獄中結婚した者もいる。そういった女性が青薔薇の貴公子事件では特に多かった。
それは何故か?
事件において、とある噂が流れたためだ。
その噂というのは、青薔薇の貴公子が不幸な女性を狙って殺害しているというもの。これは週刊誌が独自に調査して導き出した推測であり、それが広まった。
結果、青薔薇の貴公子は単なる殺人犯ではなく、不幸な境遇から女性を救ってくれる救世主と看做す人間が多く出たのである。
話を聞いた烈は呆れ顔。逢蕾花も「まあ、理解し難いよね。だから異質な空気だったの」と苦笑い。
「私の中学時代の友人にも、青薔薇の貴公子を崇拝している子が何人もいてね。ちょっと嫌なことがあると、青薔薇の貴公子に殺してほしいとか言ってた」
「つぼみちゃん先生は?」
「え?」
「つぼみちゃん先生は青薔薇の貴公子に憧れたりしてたの?」
烈は単なる好奇心として質問。烈の質問が予想外だったのか、逢蕾花は目を丸くし、きょとん顔。
「私もミーハーな性格だけど、青薔薇の貴公子に憧れは持たなかったな。友人達の気持ちも全く理解できなかった。彼女達は不幸な自分を殺してほしいって言ってたけど、私に言わせれば甘えてるだけ。自分が恵まれていることに気が付かず、被害者を、彼女達の苦しみを軽視している」
苛立たしげに表情を歪める逢蕾花を見て、烈はいつも笑っている逢蕾花も怒るのだと内心驚いた。だが、被害者を軽視していると苛立つのは烈も分かる。
逢蕾花は腕時計を確認し、「あー、随分話し込んじゃった!」といつもの柔和な表情に戻る。
「他の生徒とも面談しなきゃいけないんだ。剛村くんの方から話が無いんだったら、ここで終わりにしていいかしら?」
「俺は別に問題ないよ」
「じゃあ、面談は終了。次の生徒を呼んできて。あと、事件の捜査はなるべくバレないようにやって。学校が目を光らせているから」
「分かってるよ」
烈はそう答え、自分の教室へと戻った。
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