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第3章 点と点
第14話
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久我がマッチングアプリに手を出したのは、単に人肌寂しく恋人が欲しかったからだ。職場は男性ばかりで、数少ない女性も既婚。ならばと、会社の外に出会いを求めたのである。
何度かマッチングを繰り返した後、久我はこれだという人物を見つける。プロフィール画像には後ろ姿しか映っていなかったが、久我の好みの女性だとすぐに感じた。早速メッセージを送ると、返信がすぐに来た。
「彼女と何度かやりとりしてから、直接会う約束を取り付けたんだ。それで待ち合わせの場所に行ってみたら……」
「夫と名乗る人物がいきなり出てきたと」
明里の言葉に、久我は苦い顔で頷く。
当時を思い出したのか、久我は自身の右頬に手を当てた。今は回復しガーゼが取れているが、久我は夫とやらに右頬を殴られている。
「ボクの方からいくつか質問します。よろしいですね?」
烈は明里の質問に、耳を側立てる。実は烈も美人局の件が萌絵の殺害とどう結びつくのか、未だに分かっていない。前もって明里に聞いておくべきだったのだが、尋ねる機会を逃していた。
明里は人差し指を立てる。
「まず一つ目。あなたは水曜日の夜に、暴行を受けたのでは?」
久我はスマホを取り出し、スケジュールを確認。
「ああ。水曜日だ。よく分かったな」
水曜日? どういうことだ? 何故水曜日の話が今出てくる?
ここ数日間、烈が何度も聞いて発した曜日である。久我の方も明里が曜日に言及してきたことを疑問に思ったようで、「なんでわざわざ曜日を聞くんだ?」と問い返す。
「青薔薇の貴公子事件の他にももう一つ、この地域ではとある変わった事件が起きています」
「変わった事件?」
久我も烈も話が一向に見えず、首を捻る。「君達は察しが悪いなあ。ニュースを見ないのかい?」と言いながら、明里は男共に説明してやる。
「男性を狙った連続暴行事件があるだろう?」
烈は「そういや、あったな。そんなの」と思い出し、久我も「あー、あれか」と呟く。
明里の言う連続暴行事件とは、数ヶ月前から起きている奇妙な事件だ。
何が奇妙なのかというと、暴行を受けた被害者が皆行方不明だということ。
事の始まりはとある深夜、警察にもたらされた一報。
繁華街で男性が男から暴行を受けたという目撃者からの通報があり、警察は現場に急行。
男性から事情を聞いていたのだが、警察が少し目を離した隙に男性は行方をくらませていた。警察はメディアを使い、男性に名乗り出るよう呼びかけたが、現在も男性は現れていない。そして、似た事件が以降何件も起きている。通報を受けて現場に行っても被害者がいない、またはいつの間にか消えていたのだから、警察も混乱し苦悩するというもの。
青薔薇の貴公子事件が世間の注目を集めているため、こちらの事件は影が薄くなっている。だが、被害者がいなくなるという奇々怪々さは、青薔薇の貴公子事件にも劣らない。ゴシップが大好きな人間の間では、様々な陰謀論が飛び交っている。
「明里。美人局の件とその暴行事件とやらがどう繋がるのか、まだ分からないんだが。もう少し理解しやすいように説明してくれないか。俺はお前のように、一を聞いて十を知るような人間じゃないんだ」
久我も烈に同意し頷く。
「君達は本当に察しが悪い。いいかい、何故被害者達は皆被害届も出さずに、現場から逃げるように去っているんだ?」
烈は少し考え、「被害者の方にも、何か警察に知られると嫌なことがあるとか?」と答える。明里は「その通り」と指を鳴らし、久我の方に目をやった。このタイミングで視線を向けられた久我は一瞬戸惑うも、明里の意図をすぐに汲み取る。
「もしかして……被害者達は俺と同じ?」
「はい、大正解」
明里は小さな子供を褒めるかのように、パチパチと手を叩く。
「暴行を受けた被害者達は、久我さんと同じく美人局の被害に遭ったのだろう。だが、恥ずかしさから警察に被害届も出さずに姿を消した。報道で確認できている発生件数は五件。久我さんも含めれば、計六件だね。表に出ていない被害者の数はもっと多いかもしれないが、この六件は全て水曜日の夜に起きている」
烈がスマートフォンで調べると、確かに一連の事件は水曜日に起きていた。久我の事件と、連続暴行事件を結びつけられる明里の洞察力は相変わらず大したもんだと感心する。
久我は「ちょっと待ってくれ」と片手を挙げる。
「俺がその連続暴行事件に巻き込まれたというのは分かった。だけど、青薔薇の貴公子事件とどう関係するんだ? それぞれ独立した事件にしか思えないんだが」
「関係を明確にするために、二つ目の質問をします。あなたがマッチングして会ったのはこの女性ですか?」
明里がスマートフォンの画面で見せたのは、萌絵の写真。写真の中の萌絵は高校の制服姿で満面の笑顔だ。
「そうそう。この子! てか、この子制服を着てるけど……」
「彼女、花咲萌絵さんは青薔薇の貴公子事件の被害者であり、ボク達の同級生です」
「この子も未成年だったのか……」
久我はマッチングした人間の内、二人も未成年がいたことに久我は再度衝撃を受ける。だが、「ん? でもそれはおかしくないか?」とすぐに衝撃から立ち直る。
「あの夫という男は、一体誰なんだ? 学生結婚、というわけではないんだろう?」
「夫のフリをしていたんですよ。花咲さんのプロフィール画面をよく見ると、彼女は左手の薬指に結婚指輪をしています。花咲さんをエサに男性を呼び出し、そこに自分は夫だと名乗って現れる。そして、俺の妻に何をしているんだと因縁をつけて、暴力で金を奪った。つまり、花咲さんは、連続暴行事件の共犯者でもあった」
何度かマッチングを繰り返した後、久我はこれだという人物を見つける。プロフィール画像には後ろ姿しか映っていなかったが、久我の好みの女性だとすぐに感じた。早速メッセージを送ると、返信がすぐに来た。
「彼女と何度かやりとりしてから、直接会う約束を取り付けたんだ。それで待ち合わせの場所に行ってみたら……」
「夫と名乗る人物がいきなり出てきたと」
明里の言葉に、久我は苦い顔で頷く。
当時を思い出したのか、久我は自身の右頬に手を当てた。今は回復しガーゼが取れているが、久我は夫とやらに右頬を殴られている。
「ボクの方からいくつか質問します。よろしいですね?」
烈は明里の質問に、耳を側立てる。実は烈も美人局の件が萌絵の殺害とどう結びつくのか、未だに分かっていない。前もって明里に聞いておくべきだったのだが、尋ねる機会を逃していた。
明里は人差し指を立てる。
「まず一つ目。あなたは水曜日の夜に、暴行を受けたのでは?」
久我はスマホを取り出し、スケジュールを確認。
「ああ。水曜日だ。よく分かったな」
水曜日? どういうことだ? 何故水曜日の話が今出てくる?
ここ数日間、烈が何度も聞いて発した曜日である。久我の方も明里が曜日に言及してきたことを疑問に思ったようで、「なんでわざわざ曜日を聞くんだ?」と問い返す。
「青薔薇の貴公子事件の他にももう一つ、この地域ではとある変わった事件が起きています」
「変わった事件?」
久我も烈も話が一向に見えず、首を捻る。「君達は察しが悪いなあ。ニュースを見ないのかい?」と言いながら、明里は男共に説明してやる。
「男性を狙った連続暴行事件があるだろう?」
烈は「そういや、あったな。そんなの」と思い出し、久我も「あー、あれか」と呟く。
明里の言う連続暴行事件とは、数ヶ月前から起きている奇妙な事件だ。
何が奇妙なのかというと、暴行を受けた被害者が皆行方不明だということ。
事の始まりはとある深夜、警察にもたらされた一報。
繁華街で男性が男から暴行を受けたという目撃者からの通報があり、警察は現場に急行。
男性から事情を聞いていたのだが、警察が少し目を離した隙に男性は行方をくらませていた。警察はメディアを使い、男性に名乗り出るよう呼びかけたが、現在も男性は現れていない。そして、似た事件が以降何件も起きている。通報を受けて現場に行っても被害者がいない、またはいつの間にか消えていたのだから、警察も混乱し苦悩するというもの。
青薔薇の貴公子事件が世間の注目を集めているため、こちらの事件は影が薄くなっている。だが、被害者がいなくなるという奇々怪々さは、青薔薇の貴公子事件にも劣らない。ゴシップが大好きな人間の間では、様々な陰謀論が飛び交っている。
「明里。美人局の件とその暴行事件とやらがどう繋がるのか、まだ分からないんだが。もう少し理解しやすいように説明してくれないか。俺はお前のように、一を聞いて十を知るような人間じゃないんだ」
久我も烈に同意し頷く。
「君達は本当に察しが悪い。いいかい、何故被害者達は皆被害届も出さずに、現場から逃げるように去っているんだ?」
烈は少し考え、「被害者の方にも、何か警察に知られると嫌なことがあるとか?」と答える。明里は「その通り」と指を鳴らし、久我の方に目をやった。このタイミングで視線を向けられた久我は一瞬戸惑うも、明里の意図をすぐに汲み取る。
「もしかして……被害者達は俺と同じ?」
「はい、大正解」
明里は小さな子供を褒めるかのように、パチパチと手を叩く。
「暴行を受けた被害者達は、久我さんと同じく美人局の被害に遭ったのだろう。だが、恥ずかしさから警察に被害届も出さずに姿を消した。報道で確認できている発生件数は五件。久我さんも含めれば、計六件だね。表に出ていない被害者の数はもっと多いかもしれないが、この六件は全て水曜日の夜に起きている」
烈がスマートフォンで調べると、確かに一連の事件は水曜日に起きていた。久我の事件と、連続暴行事件を結びつけられる明里の洞察力は相変わらず大したもんだと感心する。
久我は「ちょっと待ってくれ」と片手を挙げる。
「俺がその連続暴行事件に巻き込まれたというのは分かった。だけど、青薔薇の貴公子事件とどう関係するんだ? それぞれ独立した事件にしか思えないんだが」
「関係を明確にするために、二つ目の質問をします。あなたがマッチングして会ったのはこの女性ですか?」
明里がスマートフォンの画面で見せたのは、萌絵の写真。写真の中の萌絵は高校の制服姿で満面の笑顔だ。
「そうそう。この子! てか、この子制服を着てるけど……」
「彼女、花咲萌絵さんは青薔薇の貴公子事件の被害者であり、ボク達の同級生です」
「この子も未成年だったのか……」
久我はマッチングした人間の内、二人も未成年がいたことに久我は再度衝撃を受ける。だが、「ん? でもそれはおかしくないか?」とすぐに衝撃から立ち直る。
「あの夫という男は、一体誰なんだ? 学生結婚、というわけではないんだろう?」
「夫のフリをしていたんですよ。花咲さんのプロフィール画面をよく見ると、彼女は左手の薬指に結婚指輪をしています。花咲さんをエサに男性を呼び出し、そこに自分は夫だと名乗って現れる。そして、俺の妻に何をしているんだと因縁をつけて、暴力で金を奪った。つまり、花咲さんは、連続暴行事件の共犯者でもあった」
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