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僧侶の国編
第37話 攻撃魔法と治癒魔法は裏と表
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明日、僕は南の国を旅立つ。
そんな僕のために、マツヲが宴会を開いてくれた。
「さあ、どんどんやってくれ!」
ギルドを借り切っていた。
今日だけは酒場の様になっていた。
僕はすすめられるまま、酒をドンドン飲んでいた。
「ケンタさん、行かないでください!」
「私らの王様になって下さい!」
すまない。
僕は皆の言うとおりに出来ない。
やるべきことがあるんだ。
コブチャ教に不満を持った信者が反乱を起こし、南の国の統治者がマツヲ達になった。
だが、それは表向きの話で、本当は僕がコブチャに復讐するために起こした反乱だった。
皆、そのことは黙っていてくれた。
そのお礼に僕は、稼いだ金のほとんどを置いて行くことにした。
「それにしても……あいつやることやったら、さっさといなくなりやがったな」
マツヲがビールをあおりながら、そう言う。
「ほんと。私もそう思う。もっと治癒魔法について教えて欲しかったし」
シヲリがカクテルをチビチビ飲みながら、そう言う。
最上級の治癒魔法使い、ミナージュのことだ。
彼女とは一ヶ月前、このギルドで出会った。
僕が思いついた計画。
その実現には彼女の力が大いに役に立った。
◇◇
一ヶ月前。
「南の国限定で病気を流行らせたいんです」
「え?」
シヲリが驚いている。
コブチャでも治せない様な病気を流行させる。
人を救うコブチャ教でも救えないものがあれば、教祖の権威は失墜するだろう。
「治癒魔法で病気や怪我を治せるなら、逆の魔法で病気や怪我を作ることも可能だと思うんです」
僕の考えを、シヲリが黙って聞いている。
そして、こう言った。
「……確かに。あなたの言う通りよ」
シヲリ曰く、治癒魔法と攻撃魔法は表裏一体らしい。
例えば、ダメージを回復する魔法の裏側には、ダメージを与える魔法が存在する。
魔法スキルを持つ者は、本来どちらの魔法も唱えることが出来る。
ただ、治癒魔法と攻撃魔法を並行して使いこなすことは余程の才能が無いと出来ないらしい。
「だから、私は子供の頃、攻撃魔法には向いてないと思ったから治癒魔法を極めようと思ったの」
魔法使いはある年齢に達すると、こういった選択を迫られるそうだ。
「シヲリさん。病気を作ってもらえませんか? もちろん治す方法もセットでお願いします」
シヲリは頷いた。
僕の言葉を理解したようだ。
「……ただ、私のレベルじゃ病気を作るなんて無理よ。恐らく、コブチャでも無理なんじゃないかしら。それこそこの世に何人かいる最上級の治癒魔法使いか、賢者でもない限りね」
僕は不意に、賢者マリクの顔を思い出した。
彼は攻撃魔法も治癒魔法も、ルビーとコブチャと同等レベルに操っていた。
パーティにいた時、僕は彼とは会話したことが無かった。
他のメンバーに戦いを任せて、彼が戦っているところはあまり見たことは無い。
だが、パーティがピンチになると彼がいつも何とかしてくれた。
つづく
そんな僕のために、マツヲが宴会を開いてくれた。
「さあ、どんどんやってくれ!」
ギルドを借り切っていた。
今日だけは酒場の様になっていた。
僕はすすめられるまま、酒をドンドン飲んでいた。
「ケンタさん、行かないでください!」
「私らの王様になって下さい!」
すまない。
僕は皆の言うとおりに出来ない。
やるべきことがあるんだ。
コブチャ教に不満を持った信者が反乱を起こし、南の国の統治者がマツヲ達になった。
だが、それは表向きの話で、本当は僕がコブチャに復讐するために起こした反乱だった。
皆、そのことは黙っていてくれた。
そのお礼に僕は、稼いだ金のほとんどを置いて行くことにした。
「それにしても……あいつやることやったら、さっさといなくなりやがったな」
マツヲがビールをあおりながら、そう言う。
「ほんと。私もそう思う。もっと治癒魔法について教えて欲しかったし」
シヲリがカクテルをチビチビ飲みながら、そう言う。
最上級の治癒魔法使い、ミナージュのことだ。
彼女とは一ヶ月前、このギルドで出会った。
僕が思いついた計画。
その実現には彼女の力が大いに役に立った。
◇◇
一ヶ月前。
「南の国限定で病気を流行らせたいんです」
「え?」
シヲリが驚いている。
コブチャでも治せない様な病気を流行させる。
人を救うコブチャ教でも救えないものがあれば、教祖の権威は失墜するだろう。
「治癒魔法で病気や怪我を治せるなら、逆の魔法で病気や怪我を作ることも可能だと思うんです」
僕の考えを、シヲリが黙って聞いている。
そして、こう言った。
「……確かに。あなたの言う通りよ」
シヲリ曰く、治癒魔法と攻撃魔法は表裏一体らしい。
例えば、ダメージを回復する魔法の裏側には、ダメージを与える魔法が存在する。
魔法スキルを持つ者は、本来どちらの魔法も唱えることが出来る。
ただ、治癒魔法と攻撃魔法を並行して使いこなすことは余程の才能が無いと出来ないらしい。
「だから、私は子供の頃、攻撃魔法には向いてないと思ったから治癒魔法を極めようと思ったの」
魔法使いはある年齢に達すると、こういった選択を迫られるそうだ。
「シヲリさん。病気を作ってもらえませんか? もちろん治す方法もセットでお願いします」
シヲリは頷いた。
僕の言葉を理解したようだ。
「……ただ、私のレベルじゃ病気を作るなんて無理よ。恐らく、コブチャでも無理なんじゃないかしら。それこそこの世に何人かいる最上級の治癒魔法使いか、賢者でもない限りね」
僕は不意に、賢者マリクの顔を思い出した。
彼は攻撃魔法も治癒魔法も、ルビーとコブチャと同等レベルに操っていた。
パーティにいた時、僕は彼とは会話したことが無かった。
他のメンバーに戦いを任せて、彼が戦っているところはあまり見たことは無い。
だが、パーティがピンチになると彼がいつも何とかしてくれた。
つづく
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