パーティから追放された雑用係、ガチャで『商才』に目覚め、金の力で『カンストメンバー』を雇って元パーティに復讐します!

yonechanish

文字の大きさ
61 / 112
勇者の国編

第61話 勇者グランの愛の物語 その1

しおりを挟む
「これ以上近づいたら、舌を噛んで死にます」

 黒髪の美しい女は無表情で、俺に向かってそう言った。

「死ねばいい。出来るならな」

 俺は精一杯の恐ろしい表情でそう言ってやると、女の両肩に手を掛けた。
 勢いをつけ、押し倒す。
 女の身体は羽のように軽く、ふわりと後ろに倒れる。
 小さな後頭部が羽毛布団の上ではねた。
 俺は女の頬に手を触れた。
 冷たくて柔らかい。
 女の目は真っすぐ俺を見ていた。
 俺はその朱色の唇を奪おうとする。
 だが--
 女の口の端から血があふれ出ている。
 こいつ、本気で舌を噛み切るつもりだ。

「やめろ! 頼むから、やめるんだ!」

 俺は女の口に手を入れ、自殺を止めようとする。
 口の中は血でぬるりとしていた。
 女は起き上がり、白い面《おもて》に真紅の血を滴らせながら、動転する俺を紫紺の瞳で見下ろした。

「憐れな人。あなたは人から愛されたことが無いから、こんなやり方しか出来ないのね」

 落ち込む俺の肩を、女が両手で優しく包み込む。
 俺の乱れた心がほっこりと暖かく癒されて行く。

 女の名前はマリナ。



 一年半前。

 魔王討伐が完了し、俺は晴れてこの大陸の王となった。
 圧政をしくことで、皆、俺にひれ伏す。
 うるさいディオ王は流罪にしてやった。
 欲しいものは何でも手に入る。
 俺は理想の女を妻にしたいと思った。
 先代の王様、ディオの娘であるジェニ姫は、顔は美しかったが性格が全く合わなかった。
 婚約破棄してやったら、俺の頬をひっぱたきやがったので追放してやった。

 俺は母親を知らない。
 だから、優しい母親の様な女を求めていた。
 市井を歩き、目に付く女は親衛隊を派遣し、無理やり引っ張てこさせた。
 
 だが、どの女でも満足出来なかった。
 心は満たされない。
 
 そんな無為な日々。
 マリナを見つけたのは幸運だった。
 今思えば、胸を締め付けられる日々の始まりだったが。

 たまたま俺は親衛隊を連れ、街を探索していた。
 薄汚い教会の横を通った時、
 純白のドレスを着たマリナ(この時、俺はまだマリナの名前を知らないが)がそこにいた。

 一目ぼれだった。

 俺は声を掛けようとした。
 だが、王が自ら平民と接する訳には行かない。
 国民に知られたら、なめられる。
 躊躇していると、俺の両目に驚くべき光景が飛び込んで来た。

 ケンタ。

 黒いタキシードを着た雑用係。
 俺がパーティから追放し、平民に落とした男。
 そんな男がマリナと腕を組んでいる。
 俺は気が狂いそうになった。
 ケンタを平民に落としたのは理由がある。
 平民にしたことでマリナと知り合えたのか?(後でマリナに訊いたら、ケンタは彼女が拾って育てたらしい。その事実も羨ましい)

 俺は結婚式の様子をじっと見ていた。
 どす黒い感情が俺の中から湧いて来る。

「さすがに人妻は……」

 親衛隊長が俺の決定を覆そうとする。
 だが、俺は指示した。

「やれ」

つづく
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

処理中です...