パーティから追放された雑用係、ガチャで『商才』に目覚め、金の力で『カンストメンバー』を雇って元パーティに復讐します!

yonechanish

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姫のラブソング編

第79話 ループから抜け出すキッカケ

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 奥の扉が開く。

「グラン様!」

 マリナの声だ。
 僕は会えない間、何度もその声を耳奥で再生させていた。
 だが、今、僕の耳朶を打つその声は、僕の名を呼んではいなかった。

「なんだ? 俺のことが心配なのか?」
「はい」

 甲冑姿のグランに寄りそうマリナは、僕のことなど眼中に無い様だ。
 兜からのぞくグランの目を、うっとり見つめている。

「マリナ! 僕だよ! ケンタだよ!」

 僕は自分のことを指差し、その存在をアピールした。
 だけど、彼女はまるで何かにとりつかれたかの様にグランの二の腕を掴んだまま恍惚とした表情を浮かべている。
 ジェニ姫が狼狽する僕の前に立ち、言う。

「マリク、やっとあなたの作りたがっていた『惚れ薬』が出来たみたいね」
「ジェニ姫、久しぶりです」

 グランとマリナから少し離れた場所にたたずむマリクは、慇懃に頭を下げた。

「子供の頃からあなたは、私の姉、ジェスのことが好きだった」
「懐かしい思い出です」
「でも姉さんには好きな人がいた。あなたは、そんな姉さんを惚れさせるために城の庭の片隅で惚れ薬を作ってたのよねぇ……」
「恥ずかしい限りです」

 二人の間に、場違いな懐かしい雰囲気が漂う。
 その雰囲気を、ジェニ姫は自ら断ち切る様にこう言った。

「姉さんが死んだからって、マリナさんで試すなんて迷惑なこと、やめてよね」

 僕は冷静なマリクの顔に、一瞬だけ戸惑いの色が浮かんだのを見た。

「何をつまんないことを話してやがる。ケンタ、マリナは俺の物だ。残念だったな」

 グランはそう言うや否や、自らの唇をマリナの唇に重ねた。
 その行為が、号砲となった。

「やめろぉおおおおお!」

 僕は細身の剣(ユルフンに作らせた特注)をグランに向け、突進する。 

  Lv.1849
  スキル :商才、怒りの覚醒
  攻撃力 : 958
  防御力 :524
  HP : 682
  MP : 0
  素早さ :758
  知力 : 1043
  運 : 231

 賢者マリクがスキル『能力監視《キャパシティーモニター》』を発動したのか、僕のステータスが空中に浮かぶ。
 グラン王国の地下で見つけたガチャ(この世に7つあるうちの一つ)で、引き当てた『怒りの覚醒』が発動し、僕のステータスは見る見る上昇して行った。
 それは、僕の命(つまりHP)を削りながら他のパラメータに振り分ける行為そのものだった。
 グランは、その腕の中からマリナを振りほどくと、突進する僕を盾で防ごうとした。
 僕の細身の剣と、グランの盾がぶつかり合い、双方反動で後ろに下がる。
 グランは背中に担いでいる大剣を鞘から引き抜き、僕の頭上に振り下ろす。
 それを、僕はすかさず腰に刺したもう一本の細身の剣で受け止める。

「へぇ」

 グランが感心したかの様に声を上げる。
 僕の成長に驚いている様だ。
 『怒りの覚醒』のお陰で、戦闘中に次々と新しいスキルに目覚め、それが発動されて行く。
 
 マリクが僕とグランの戦いを見て、満足そうに頷く。

 命(HP)を削りながらそう長くは戦えない。
 自滅することで敵を道ずれにする。
 まさにそんなスキルだった。
 それを知ってか、ジェニ姫が援護に入ってくれる。
 だが、カンストのグランに次第に僕らは押され始めた。

 僕らの戦いを見物しているマリクが、眉をへの字に下げ落胆の表情を浮かべる。
 マリクの態度が変わる度に、空間が歪むというか、世界の色が混ざり合い、一点に集中するかの様な無重力感を感じる。

「あっ!」

 疲労困憊のジェニ姫が指先から放つ、無数の氷のつぶてがグランの剣にはじかれる。
 それがマリクの方に放射される。

ドスドスドス!

 油断していたマリクが氷の連撃に射抜かれる。
 紫のローブがズタズタになり、射抜かれたところから血を吹き出す。
 ダメージがいかほどのものかは分からないが、偶然の一撃が賢者にヒットした。
 出血の具合から、そこそこのダメージを与えたかのように思える。

「きゃっ!」

 その紅蓮の血をジェニ姫は大量に浴びた。
 彼女の白い面《おもて》、白銀の髪、白いローブが赤く染まる。
 彼女の空気に触れている粘膜(眼球や口腔)までも、余さず赤く塗りつぶされていた。

 それに驚き一瞬手を止めた僕は、グランの一撃を受け息絶えた。

つづく
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