90 / 112
姫のラブソング編
第90話 また会おうね
しおりを挟む
マリクはいつまで経っても仕掛けて来ない。
それがかえって不気味だった。
お手並み拝借、といったところですか?
余裕ですね。
「ずっと私を倒してくれる人を探していた」
はぁ?
何言ってんだこいつは?
「数々のモンスター、魔王ハーデン、そしてケンタ……誰も私を倒すことが出来なかった」
伏し目がちに、寂しそうにつぶやく。
「意味分かんないんですけど?」
私は首を傾げ、吐き捨てるように言ってやった。
随分な妄想家、自信家だなあ。
ハーデンはパーティの一員として倒したんでしょ?
それに、過去、何度もループしたが、マリクとケンタとは戦ったことが無い。
「一発で決めるわよ」
私は右手の人差し指を立てた。
そう、魔法一発で終わらせる。
その理由は、こう。
一回目のループで、ヒットした偶然の一撃。
あの出血でマリクは相当なダメージを受けたように見える。
グランの剣で弾かれる様な、あの程度の魔法で。
だから、マリクはHPが極端に少ないはず、おそらく100くらい。
大丈夫。
私は自分に言い聞かせる。
一発で仕留めたいもう一つの理由。
勝負が長引けば長引くほど、使える魔法の種類が少ない私の方が不利になる。(手の内が全て知られるという意味で)
「愛の力に目覚めたあなたなら、私を倒せるかもしれません」
両手を広げるマリク。
賢者の余裕か。
私は、詠唱しながら地を蹴った。
大丈夫。
この距離なら唱え終わる頃、丁度、マリクのその懐に一気に飛び込み終わり魔法が発動されている。
奴の心臓をこの手で凍らせる。
そう--
ならなかった。
無数の髑髏《どくろ》の口から伸びた触手が私の身体を捉える。
マリクは詠唱していなかった。
たったそれだけの時間差で、マリクの魔法の方が私のそれより早く発動された。
私はあと一歩のところで、彼の魔法にかかっていた。
「なっ、なんで?」
「これですよ。姫、これです」
マリクはローブのポケットから長方形の物体を取り出した。
黒い物体には、中央に透明のガラスの様なものが付いている。
その下には小さなボタン。
「何それ?」
「魔法発動機械です。ここに唱えたい魔法をあらかじめ登録しておけば、詠唱する手間も、魔法陣を描く手間も省けます。ボタン一つで発動出来るんですよ。魔法を使う者なら、どう効率良く発動出来るか工夫しなければダメですよ」
説教された。
それにしても、どんな原理だよ……。
私は髑髏の口から伸びる触手に四肢を捉えれたまま、マリクの手にあるその機械に技術的興味をそそられた。
もしかしたら、最初にゲームを作ったのはこいつかもしれない。
「あなたでも、無理だったか」
マリクは残念そうに言うと、魔法発動機械の下方にあるボタンを押した。
透明のガラスに『雷撃《ライトニング》』と表示された瞬間、私の身体を閃光が貫いた。
「きゃああああっ!」
圧倒的な痺れが脳天から足の爪先まで、貫く。
痺れが止んだ瞬間、激痛が体中を襲う。
髑髏の触手が勢いをつけ、私の身体を天に放り投げる。
このままだと地面に落下する。
この城壁を昇って来たんだな。
落下しながら、場違いな感慨に浸る。
やっとケンタと相思相愛になれたのに。
ケンタの髪の匂い。
手の平の暖かさ。
守ってくれた時の背中。
このループで……
もう一度会いたい。
後頭部に衝撃を感じ、気を失いそうになる。
地面だ。
隣には、顔を血で濡らしたケンタがいた。
良かった。
会えた。
ごめんね。
また、君の復讐を達成出来なかったよ。
次のループでは、また一緒に……
お互いのこと大好きになろうね。
私は意識を手放し、死んだ。
だけど、ずっと暗闇のままだった。
姫のラブソング編 おわり
それがかえって不気味だった。
お手並み拝借、といったところですか?
余裕ですね。
「ずっと私を倒してくれる人を探していた」
はぁ?
何言ってんだこいつは?
「数々のモンスター、魔王ハーデン、そしてケンタ……誰も私を倒すことが出来なかった」
伏し目がちに、寂しそうにつぶやく。
「意味分かんないんですけど?」
私は首を傾げ、吐き捨てるように言ってやった。
随分な妄想家、自信家だなあ。
ハーデンはパーティの一員として倒したんでしょ?
それに、過去、何度もループしたが、マリクとケンタとは戦ったことが無い。
「一発で決めるわよ」
私は右手の人差し指を立てた。
そう、魔法一発で終わらせる。
その理由は、こう。
一回目のループで、ヒットした偶然の一撃。
あの出血でマリクは相当なダメージを受けたように見える。
グランの剣で弾かれる様な、あの程度の魔法で。
だから、マリクはHPが極端に少ないはず、おそらく100くらい。
大丈夫。
私は自分に言い聞かせる。
一発で仕留めたいもう一つの理由。
勝負が長引けば長引くほど、使える魔法の種類が少ない私の方が不利になる。(手の内が全て知られるという意味で)
「愛の力に目覚めたあなたなら、私を倒せるかもしれません」
両手を広げるマリク。
賢者の余裕か。
私は、詠唱しながら地を蹴った。
大丈夫。
この距離なら唱え終わる頃、丁度、マリクのその懐に一気に飛び込み終わり魔法が発動されている。
奴の心臓をこの手で凍らせる。
そう--
ならなかった。
無数の髑髏《どくろ》の口から伸びた触手が私の身体を捉える。
マリクは詠唱していなかった。
たったそれだけの時間差で、マリクの魔法の方が私のそれより早く発動された。
私はあと一歩のところで、彼の魔法にかかっていた。
「なっ、なんで?」
「これですよ。姫、これです」
マリクはローブのポケットから長方形の物体を取り出した。
黒い物体には、中央に透明のガラスの様なものが付いている。
その下には小さなボタン。
「何それ?」
「魔法発動機械です。ここに唱えたい魔法をあらかじめ登録しておけば、詠唱する手間も、魔法陣を描く手間も省けます。ボタン一つで発動出来るんですよ。魔法を使う者なら、どう効率良く発動出来るか工夫しなければダメですよ」
説教された。
それにしても、どんな原理だよ……。
私は髑髏の口から伸びる触手に四肢を捉えれたまま、マリクの手にあるその機械に技術的興味をそそられた。
もしかしたら、最初にゲームを作ったのはこいつかもしれない。
「あなたでも、無理だったか」
マリクは残念そうに言うと、魔法発動機械の下方にあるボタンを押した。
透明のガラスに『雷撃《ライトニング》』と表示された瞬間、私の身体を閃光が貫いた。
「きゃああああっ!」
圧倒的な痺れが脳天から足の爪先まで、貫く。
痺れが止んだ瞬間、激痛が体中を襲う。
髑髏の触手が勢いをつけ、私の身体を天に放り投げる。
このままだと地面に落下する。
この城壁を昇って来たんだな。
落下しながら、場違いな感慨に浸る。
やっとケンタと相思相愛になれたのに。
ケンタの髪の匂い。
手の平の暖かさ。
守ってくれた時の背中。
このループで……
もう一度会いたい。
後頭部に衝撃を感じ、気を失いそうになる。
地面だ。
隣には、顔を血で濡らしたケンタがいた。
良かった。
会えた。
ごめんね。
また、君の復讐を達成出来なかったよ。
次のループでは、また一緒に……
お互いのこと大好きになろうね。
私は意識を手放し、死んだ。
だけど、ずっと暗闇のままだった。
姫のラブソング編 おわり
0
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる