92 / 112
賢者の人生編
第92話 パパはゲームプログラマー
しおりを挟む
私の意識は暗闇の中を漂っていた。
この暗闇で過ごす時間は、毎回長さが異なる。
これは、私の考えだが……
私が暗闇で過ごす間、世界の再構築が行われているのだろう。
私が設定したセーブポイント。
その時点を目指して世界の再構築が行われているのだ。
従って、ループ前の世界(私が自殺するまでいた世界)の変化の仕方(何人の人が死んだとか、建物の破損状況とか)で、再構築の時間が変わるのだと思われる。
まあ、この暗闇の時間は、ゲームでいうところのロード時間みたいなものだ。
その時、その時で、データ量(世界の変化の仕方)が異なれば、ロード時間も変化するということか。
私がこういう風に、何でもゲームに置き換えて考える癖がついたのは、父親のお陰だ。
私はこの時間、自らを振り返ることを常としている。
私の父はゲームプログラマという職業だったらしい。
らしいと付けたのは、父が仕事しているのを見たことが無いからである。
どちらにしても、この世界には存在しない職業だ。
父は自分の仕事に誇りを持っていた。
だから、仕事の素晴らしさを伝えるために父は私にある物を作り、遊ばせた。
それが『ゲーム』だった。
長方形の箱の真ん中に透明なガラスが張られている。
STARTボタンを押した。
ガラスにドットというブロックで描かれたキャラクターが表示された。
その瞬間から、私の感動は約束されていた。
私の意のままに、ピコピコと音を立てて動くキャラクター。
強い敵に何度もチャレンジし、創意工夫の挙句に倒した時の達成感。
作り手の思惑の裏をかいて、理不尽な謎を解き明かした時の爽快感。
世の中にこんなに面白いものがあるとは。
しかし、父はどうやってこれを作ったのだろうか?
「この世界にある素材の性質は、私が昔住んでいた世界にあった素材の性質と非常によく似ている」
だから、作ることが出来たそうだ。
それはそれとして、この世界にこんな高度な機械を作るテクノロジーは存在しないのでは?
「昔住んでいた世界?」
「いい機会だ。マリク、お前に話しておこう」
父はチキュウという星のニホンから来たらしい。
仕事のデスマーチ(過酷な労働のことらしい)中、意識を失い、目を覚ましたらこの世界にいたとのこと。
私はそのことに対して驚きは無かった。
何故なら、その頃の私は既に召喚魔法の初歩を習得していた。
だから、異世界から偶然であれ、必然であれ、何者かが召喚されることは私の中では有り得ることで、常識だった。
父は誰かの気まぐれでここに召喚されたのか、時空の歪みに入り込んでここに迷い込んだのかは分からないが、そんなことはどうでも良かった。
それよりも、父がこの世界には存在しないテクノロジーを用いることでコンピュータなるものを作り上げ、ゲームをプログラミングしたということの方に私は関心をそそられた。
私の母(平民の普通の女だ)と父は街の路地裏で出会った。
異世界から転移した父を、母が介抱してあげたことが、私のルーツになる。
私はどちらの祖先から才能を受け継いだか分からないが、魔法に関しては才能に恵まれていた。
誰もが四苦八苦して習得する魔法を、息を吸うよりも簡単に覚えることが出来た。
私は逆に他の者達が何で出来ないのか不思議でならなかった。
こんなもの、本を読み、教師が実践する通りにやれば出来るではないかと。
人は私のことを『神童』と呼ぶ様になった。
父は魔法の無い世界に生まれたらしいので、私は母方の祖先から何かを受け継いだのかと思った。
だが、母に訊いてもそんな祖先はいないと言う。
ならば、単純に天から与えられた才能なのだろう。
身体の弱さと、やや力が無いことが弱点と言えば弱点だが、それを補って余りあるほどの魔力を私は備えていた。
恵まれていると人は思うだろう。
だが、私にとって見れば、困難の無い人生は退屈で仕方がなかった。
もう少しステータスに難があれば、スリルのある人生が遅れたのにと、ゲームをしながらいつも思っていた。
まもなく、私は学校に視察に来たディオ王に認められ、平民の身でありながら城に召し抱えられた。
つづく
この暗闇で過ごす時間は、毎回長さが異なる。
これは、私の考えだが……
私が暗闇で過ごす間、世界の再構築が行われているのだろう。
私が設定したセーブポイント。
その時点を目指して世界の再構築が行われているのだ。
従って、ループ前の世界(私が自殺するまでいた世界)の変化の仕方(何人の人が死んだとか、建物の破損状況とか)で、再構築の時間が変わるのだと思われる。
まあ、この暗闇の時間は、ゲームでいうところのロード時間みたいなものだ。
その時、その時で、データ量(世界の変化の仕方)が異なれば、ロード時間も変化するということか。
私がこういう風に、何でもゲームに置き換えて考える癖がついたのは、父親のお陰だ。
私はこの時間、自らを振り返ることを常としている。
私の父はゲームプログラマという職業だったらしい。
らしいと付けたのは、父が仕事しているのを見たことが無いからである。
どちらにしても、この世界には存在しない職業だ。
父は自分の仕事に誇りを持っていた。
だから、仕事の素晴らしさを伝えるために父は私にある物を作り、遊ばせた。
それが『ゲーム』だった。
長方形の箱の真ん中に透明なガラスが張られている。
STARTボタンを押した。
ガラスにドットというブロックで描かれたキャラクターが表示された。
その瞬間から、私の感動は約束されていた。
私の意のままに、ピコピコと音を立てて動くキャラクター。
強い敵に何度もチャレンジし、創意工夫の挙句に倒した時の達成感。
作り手の思惑の裏をかいて、理不尽な謎を解き明かした時の爽快感。
世の中にこんなに面白いものがあるとは。
しかし、父はどうやってこれを作ったのだろうか?
「この世界にある素材の性質は、私が昔住んでいた世界にあった素材の性質と非常によく似ている」
だから、作ることが出来たそうだ。
それはそれとして、この世界にこんな高度な機械を作るテクノロジーは存在しないのでは?
「昔住んでいた世界?」
「いい機会だ。マリク、お前に話しておこう」
父はチキュウという星のニホンから来たらしい。
仕事のデスマーチ(過酷な労働のことらしい)中、意識を失い、目を覚ましたらこの世界にいたとのこと。
私はそのことに対して驚きは無かった。
何故なら、その頃の私は既に召喚魔法の初歩を習得していた。
だから、異世界から偶然であれ、必然であれ、何者かが召喚されることは私の中では有り得ることで、常識だった。
父は誰かの気まぐれでここに召喚されたのか、時空の歪みに入り込んでここに迷い込んだのかは分からないが、そんなことはどうでも良かった。
それよりも、父がこの世界には存在しないテクノロジーを用いることでコンピュータなるものを作り上げ、ゲームをプログラミングしたということの方に私は関心をそそられた。
私の母(平民の普通の女だ)と父は街の路地裏で出会った。
異世界から転移した父を、母が介抱してあげたことが、私のルーツになる。
私はどちらの祖先から才能を受け継いだか分からないが、魔法に関しては才能に恵まれていた。
誰もが四苦八苦して習得する魔法を、息を吸うよりも簡単に覚えることが出来た。
私は逆に他の者達が何で出来ないのか不思議でならなかった。
こんなもの、本を読み、教師が実践する通りにやれば出来るではないかと。
人は私のことを『神童』と呼ぶ様になった。
父は魔法の無い世界に生まれたらしいので、私は母方の祖先から何かを受け継いだのかと思った。
だが、母に訊いてもそんな祖先はいないと言う。
ならば、単純に天から与えられた才能なのだろう。
身体の弱さと、やや力が無いことが弱点と言えば弱点だが、それを補って余りあるほどの魔力を私は備えていた。
恵まれていると人は思うだろう。
だが、私にとって見れば、困難の無い人生は退屈で仕方がなかった。
もう少しステータスに難があれば、スリルのある人生が遅れたのにと、ゲームをしながらいつも思っていた。
まもなく、私は学校に視察に来たディオ王に認められ、平民の身でありながら城に召し抱えられた。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる