パーティから追放された雑用係、ガチャで『商才』に目覚め、金の力で『カンストメンバー』を雇って元パーティに復讐します!

yonechanish

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賢者の人生編

第95話 now loading……③

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 ジェス姫は私の教えを、真綿が水を吸う様にその頭と身体に染み込ませて行った。
 彼女の成長に比例して、私の彼女への思いも膨らんで行った。
 その頃の私は、ゲームもせず、人生に退屈も感じていなかった。
 いかにして、彼女と一緒に居られるか、そればかり考える様になっていた。

「演習じゃ。コヒード山の頂上にいるグリーンドラゴンを倒して来い」

 ディオ王がある日、私達に命じた。
 グリーンドラゴンは村を襲い国民をを連れ去ることで恐れられている怪物だ。
 ディオ王は、私とジェス姫の魔法の上達具合を判断するために、この怪物の討伐を命じたのだ。
 パーティ戦に慣れさせるという目的もあったため、私達には兵士の中から、肉弾戦が得意な戦士タイプと魔法も剣技も万能な勇者タイプのメンバーが付けられた。

 4人パーティでコヒード山を目指す。
 山に近づくにつれ、風が強くなる。
 まるでこちらが近づくのを拒んでいるかの様だ。
 重量のある戦士を風よけのため、先頭にする。
 皆、身体を前傾にし足を踏ん張って、飛ばされない様にして頂上を目指す。

 突如、突風の中から、鋭い風圧が生まれた。
 風が刃物の様に、戦士の身体を真一文字に切り裂いた。
 鋼鉄の鎧がパックリと割れる程の鋭さと威力だった。

「うわぁああ!」

 恐れをなした勇者がつまずきながら逃げ出そうとする。
 その無防備な背中に、再度、風の刃物が襲い掛かる。

「グリーンドラゴンか」

 まだ姿が見えない。
 どこから来る?
 私は身構えた。
 ジェス姫が倒れた二人に治癒魔法をかけている。

「姫、ここは私に任せてお逃げください。あなたも餌食になります」

 だが、ジェス姫はキッと私を睨みつけた。
 それは、今まで見せたことも無い憎しみを込めた視線だった。

「この者達から『生きたい』という意思を感じます! それを見捨てて逃げるなど治癒魔法使いの恥です!」

 その目に涙が浮かんでいた。
 私は、彼女の慈愛に触れたことで、彼女のことがますます好きになった。
 風が強くなる。
 ビリジアン色の羽を広げたグリーンドラゴンが、咆哮と共に姿を現した。
 目指すはジェス姫か。
 グリーンドラゴンの攻撃アルゴリズムは、パーティ内で攻撃の術を持た無い者を狙う様に設定されているのだろう。
 風を操る怪物に対抗するには……
 火は突風で消されるし、水も突風で吹き飛ばされる。
 更に強い風で対抗すべき、そう判断した私は、グリーンドラゴンが次の攻撃を発動するまでの時間と、私の詠唱が終わり魔法が発動されるまでの時間を比較した。
 『風力《ウインドウ》』で行く。
 そう決めた私は詠唱を始めた。
 だが、そんな私を嘲笑うかの様にグリーンドラゴンは急角度に変えた。

「こっちに来る!」

 突風の刃物が私の魔法の発動よりもコンマ数秒単位、早かった。
 私は、自分が死んだと思った。
 目の前で『超風力《エルウインドウ》』を喰らったグリーンドラゴンが真っ赤な内蔵をまき散らし粉々になっている。
 ジェス姫を守れて良かった。
 そう思い、安心して死ねると思った。
 だが、私は生きていた。
 HPは1といったところか……。

「間に合った」

 鈴の音の様な声が聞こえる。
 声の主はこちらに右手の平を広げ、直立していた。

「ジェス姫……」
「マリク……」

 私がグリーンドラゴンの攻撃を受けた瞬間に、ジェス姫が治癒魔法をかけてくれた。
 彼女は私の命の恩人だ。

「風のオーブだ」

 元気になった勇者と戦士が、グリーンドラゴンがドロップしたアイテムを手にして喜んでいた。

 城に戻ると、別の戦いで傷ついた兵士達で溢れかえっていた。
 治癒魔法使いが足りないらしく、普段見ない顔の魔法使いも多い。

「手伝って来ます」

 ジェス姫は休むことも無く、治療所へ向かった。
 私はディオ王への報告のため、彼女を見送った。
 今、思えばそれが間違い(私にとっての)の始まりだった。

つづく
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