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最後の商才編
第107話 そして、僕は平民になる
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一年前。
「よくぞ、グランとマリクを倒してくれた。礼を言うぞケンタ」
玉座に座ったディオ王は、僕の労をねぎらった。
「お主を公爵にしよう」
「はい」
僕は平民から一気に貴族になった。
「ところで、ディオ王様」
「なんじゃ?」
「ジェニ姫の様子はいかがですか?」
僕の質問に、ディオ王は困ったようにあご髭を撫でる。
「それがの......、まだ意識が戻らんのだ」
「そうですか......」
彼女は復讐を遂げた日から、ずっと植物状態だった。
僕はいまだに信じられなかった。
あれほど喜怒哀楽の豊かなジェニ姫が......何故?
治癒魔法使いや医者達は口々にこう言った。
腐ったチートの実を食べたせいだ、と。
だが、誰も本当の原因ははっきりとは分からない。
「お見舞いに行ってきます」
ジェニ姫の自室。
彼女は天蓋に覆われた大きなベッドに横たわっていた。
白い絹の寝間着に包まれている。
「ジェニ姫......」
白い面《おもて》に呼び掛ける。
あの時、伝えたかった言葉を、目が覚めたら伝えたい。
それから一ヶ月後。
「ケンタよ」
「何ですか? ディオ王様」
ディオ王は白いひげを、いつもより沢山撫でている。
今日の彼はやけに落ち着きが無い。
「ジェニのことじゃ......」
「は、はい」
僕は嫌な予感がした。
「あいつのことは諦めようと思う」
僕はズーンと力が抜け、この場に立っていられない気分になった。
ディオ王の目には沈んだ色が浮かんでいた。
「見殺しにすると言うのですか!?」
「仕方のないこと......なのじゃ」
ジェニ姫の生命を維持するためには、特殊なポーションが必要だった。
その費用は王国の財政を圧迫するほどだった。
「我が娘のために、国民の血税を使い続ける訳には行かんのじゃ」
ディオ王はずっと苦悶の表情を浮かべていた。
彼にとって苦渋の決断を下したことが、僕にも伝わった。
だけど......
「ジェニ姫はこの国を救った恩人でもあるのですよ。そんな人を......」
僕の声は自分でも分かるほど震えていて、目からは涙が零れそうだった。
「分かっておる。だがな、ケンタよ。このままでは王国は財政難に陥り、国民に苦労を強いることになる」
「ですが......」
「良く聞け、ケンタよ。99人を救うために、1人に犠牲になってもらう。国を治めるとはな、そう言うことなのじゃ」
僕は非情な運命に涙が止まらなかった。
「話は変わるが、ケンタよ」
「......はい」
「お主、わしの後を継いで国王にならんか」
ディオ王には息子はいない。
ジェス姫は死んだし、ジェニ姫はあの状態だ。
「お主なら、わしは安心してこの国を任せることが出来る。妃はメルル王国のアリン姫を......」
「お断りします」
僕の心は決まっていた。
ディオ王は目を見開いたまま、黙り込んでしまった。
「ディオ王様。僕を平民に戻して下さい。そして、ジェニ姫を僕に下さい!」
平民になれば自由に商売が出来る。
僕の願いをディオ王は受け入れてくれた。
そして、優しい声でこう言った。
「こうなった以上、お主がそう言うのは分かっておったわい。ジェニをお前に授けよう」
「ありがとうございます」
そして、僕は平民になり城を後にした。
ディオ王様は沢山の餞別という名の退職金をくれた。
その金で、当面、ジェニ姫を延命させるだけのポーションを手に入れることが出来た。
僕はその間に、会社を興し商売を始めた。
商売が発展するにつれ、昔の仲間達(船長、サチエ、カズシ、シヲリ、etc......)が集まって来てくれた。
「ケンタは俺達の恩人だからな!」
「そのケンタが愛する人も、私達の恩人よ!」
皆、そう言ってくれた。
◇
そして、現在。
「きっと、君を目覚めさせる」
僕はジェニ姫の手を握り、改めてそう誓った。
つづく
「よくぞ、グランとマリクを倒してくれた。礼を言うぞケンタ」
玉座に座ったディオ王は、僕の労をねぎらった。
「お主を公爵にしよう」
「はい」
僕は平民から一気に貴族になった。
「ところで、ディオ王様」
「なんじゃ?」
「ジェニ姫の様子はいかがですか?」
僕の質問に、ディオ王は困ったようにあご髭を撫でる。
「それがの......、まだ意識が戻らんのだ」
「そうですか......」
彼女は復讐を遂げた日から、ずっと植物状態だった。
僕はいまだに信じられなかった。
あれほど喜怒哀楽の豊かなジェニ姫が......何故?
治癒魔法使いや医者達は口々にこう言った。
腐ったチートの実を食べたせいだ、と。
だが、誰も本当の原因ははっきりとは分からない。
「お見舞いに行ってきます」
ジェニ姫の自室。
彼女は天蓋に覆われた大きなベッドに横たわっていた。
白い絹の寝間着に包まれている。
「ジェニ姫......」
白い面《おもて》に呼び掛ける。
あの時、伝えたかった言葉を、目が覚めたら伝えたい。
それから一ヶ月後。
「ケンタよ」
「何ですか? ディオ王様」
ディオ王は白いひげを、いつもより沢山撫でている。
今日の彼はやけに落ち着きが無い。
「ジェニのことじゃ......」
「は、はい」
僕は嫌な予感がした。
「あいつのことは諦めようと思う」
僕はズーンと力が抜け、この場に立っていられない気分になった。
ディオ王の目には沈んだ色が浮かんでいた。
「見殺しにすると言うのですか!?」
「仕方のないこと......なのじゃ」
ジェニ姫の生命を維持するためには、特殊なポーションが必要だった。
その費用は王国の財政を圧迫するほどだった。
「我が娘のために、国民の血税を使い続ける訳には行かんのじゃ」
ディオ王はずっと苦悶の表情を浮かべていた。
彼にとって苦渋の決断を下したことが、僕にも伝わった。
だけど......
「ジェニ姫はこの国を救った恩人でもあるのですよ。そんな人を......」
僕の声は自分でも分かるほど震えていて、目からは涙が零れそうだった。
「分かっておる。だがな、ケンタよ。このままでは王国は財政難に陥り、国民に苦労を強いることになる」
「ですが......」
「良く聞け、ケンタよ。99人を救うために、1人に犠牲になってもらう。国を治めるとはな、そう言うことなのじゃ」
僕は非情な運命に涙が止まらなかった。
「話は変わるが、ケンタよ」
「......はい」
「お主、わしの後を継いで国王にならんか」
ディオ王には息子はいない。
ジェス姫は死んだし、ジェニ姫はあの状態だ。
「お主なら、わしは安心してこの国を任せることが出来る。妃はメルル王国のアリン姫を......」
「お断りします」
僕の心は決まっていた。
ディオ王は目を見開いたまま、黙り込んでしまった。
「ディオ王様。僕を平民に戻して下さい。そして、ジェニ姫を僕に下さい!」
平民になれば自由に商売が出来る。
僕の願いをディオ王は受け入れてくれた。
そして、優しい声でこう言った。
「こうなった以上、お主がそう言うのは分かっておったわい。ジェニをお前に授けよう」
「ありがとうございます」
そして、僕は平民になり城を後にした。
ディオ王様は沢山の餞別という名の退職金をくれた。
その金で、当面、ジェニ姫を延命させるだけのポーションを手に入れることが出来た。
僕はその間に、会社を興し商売を始めた。
商売が発展するにつれ、昔の仲間達(船長、サチエ、カズシ、シヲリ、etc......)が集まって来てくれた。
「ケンタは俺達の恩人だからな!」
「そのケンタが愛する人も、私達の恩人よ!」
皆、そう言ってくれた。
◇
そして、現在。
「きっと、君を目覚めさせる」
僕はジェニ姫の手を握り、改めてそう誓った。
つづく
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