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第68話 テイム
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エスティアのおでこには、小さな★マークが出現した。
それがうっすらと光っている。
「これは……『テイムの証』!」
「どうしたにゃ? クルス?」
驚くクルスを見て、エスティアが目をぱちくりさせている。
「まさか……獣人でも『テイム』出来るようになるなんて……」
クルスは思わず呟いていた。
ゲームでは、特定のモンスターを懐かせるつまり、テイムすることが出来る。
いくつか条件がある。
・モンスター側から申し出る場合
・プレイヤー側がモンスターを誘った場合
プレイヤーの戦い振りを見て、モンスターから懐いて来ることがある。
卑怯な手を使わず勇敢に格上のモンスターに立ち向かうと、発生する場合が多い。
プレイヤー側が誘いたいモンスターに声を掛けた場合、モンスターにその気が無ければ成立しない。
こちらは成功率が低いし、かえってモンスターを怒らせて戦闘になる可能性が高い。
テイム出来たモンスターは戦闘に参加させ、一緒に戦うことが出来る。
経験値を積めばレベルアップもするし、固有のスキルも身に付ける。
クルスは、この異世界でもモンスターをテイムすることが出来ることは確認済みだ。
アティナがホワイトドラゴンのスノウをテイムしていることからも分かる。
クルス自身は試しにスライムをテイムしていた時期があった。
時間が経つにつれて、ペットみたいに可愛らしくなって行く。
スライムの方も懐き始めた。
だが、パルテノ村には連れて帰れないので、専用のスライム小屋を森の中に作った。
一緒にご飯を食べたり、釣りに出かけたり、山にも登ったりした。
心が通い合い、お互いがいることが日常になった。
だが、
ある日、ゴブリンの群れに不意討ちを喰らい、そのスライムは戦死した。
スライムはクルスのことを身を呈して守った。
「スラミー」
エスティアのおでこに浮かぶ小さな★マークを見ながら、クルスはそのスライムの名を呟いていた。
思い出しても目頭が熱くなる。
しばらくスラミーロスになり、生活に支障が出た。
「クルス? あたしのおでこ、どうしたにゃ?」
健気に小さな牙を見せながら、笑顔のエスティア。
まさか、獣人までテイム出来るなんて初めて知った。
そもそも、この異世界で獣人に遭遇するのはエスティアが初めてだった。
ゲームでも獣人をテイム出来たのだろうか……
山田久留洲だった頃のクルスは、『ドラゴネスファンタジア』の世界最速攻略を目指していた。
そのため、攻略に関係が無い脇役のサブストーリーや、クエストを全てスルーしていた。
アイテムもコンプリートしていないし、モンスターを全種類倒した訳ではない。
ゲーム全てを体験したとは言い難い。
だから、ゲームで獣人をテイム出来ることも知らなかった。
だから、クルスにはこの異世界で知らないことがいっぱいあった。
そのことを実感した。
そうこうしている間にも、エスティアの★マークは光り続けていた。
まるで今すぐ、テイムしてくれと言わんばかりだ。
今、エスティアのおでこに光る★マーク。
これは、正に、エスティアがクルスに対して、懐いている証拠だった。
クルスはエスティアを受け入れるかどうか、つまりテイムするかどうかの選択を迫られていた。
断れば、エスティアの★マークは消え去る。
受け入れれば、エスティアはクルスのものになる。
クルスは迷っていた。
スラミーを失った悲しみを思い出したからだ。
もうあんな辛い思いはしたくない。
「クルス……あたし、頑張るにゃ」
「え……?」
猫耳をピンと立て、尻尾を振り振りさせながら、満面の笑顔のエスティア。
「恩返しがしたいにゃ」
「エスティア……」
クルスはエスティアのモフモフした猫耳を触った。
「にゃっ!」
エスティアはくすぐったそうに身を震えさせた。
クルスはもっと触った。
エスティアは目をうっとりさせ、心地よさそうに身をよじらせた。
★マークが一層光ったかと思うと、フッと光が落ち着いた。
「よろしくお願いしますにゃ」
クルスはエスティアをテイムした。
つづく
それがうっすらと光っている。
「これは……『テイムの証』!」
「どうしたにゃ? クルス?」
驚くクルスを見て、エスティアが目をぱちくりさせている。
「まさか……獣人でも『テイム』出来るようになるなんて……」
クルスは思わず呟いていた。
ゲームでは、特定のモンスターを懐かせるつまり、テイムすることが出来る。
いくつか条件がある。
・モンスター側から申し出る場合
・プレイヤー側がモンスターを誘った場合
プレイヤーの戦い振りを見て、モンスターから懐いて来ることがある。
卑怯な手を使わず勇敢に格上のモンスターに立ち向かうと、発生する場合が多い。
プレイヤー側が誘いたいモンスターに声を掛けた場合、モンスターにその気が無ければ成立しない。
こちらは成功率が低いし、かえってモンスターを怒らせて戦闘になる可能性が高い。
テイム出来たモンスターは戦闘に参加させ、一緒に戦うことが出来る。
経験値を積めばレベルアップもするし、固有のスキルも身に付ける。
クルスは、この異世界でもモンスターをテイムすることが出来ることは確認済みだ。
アティナがホワイトドラゴンのスノウをテイムしていることからも分かる。
クルス自身は試しにスライムをテイムしていた時期があった。
時間が経つにつれて、ペットみたいに可愛らしくなって行く。
スライムの方も懐き始めた。
だが、パルテノ村には連れて帰れないので、専用のスライム小屋を森の中に作った。
一緒にご飯を食べたり、釣りに出かけたり、山にも登ったりした。
心が通い合い、お互いがいることが日常になった。
だが、
ある日、ゴブリンの群れに不意討ちを喰らい、そのスライムは戦死した。
スライムはクルスのことを身を呈して守った。
「スラミー」
エスティアのおでこに浮かぶ小さな★マークを見ながら、クルスはそのスライムの名を呟いていた。
思い出しても目頭が熱くなる。
しばらくスラミーロスになり、生活に支障が出た。
「クルス? あたしのおでこ、どうしたにゃ?」
健気に小さな牙を見せながら、笑顔のエスティア。
まさか、獣人までテイム出来るなんて初めて知った。
そもそも、この異世界で獣人に遭遇するのはエスティアが初めてだった。
ゲームでも獣人をテイム出来たのだろうか……
山田久留洲だった頃のクルスは、『ドラゴネスファンタジア』の世界最速攻略を目指していた。
そのため、攻略に関係が無い脇役のサブストーリーや、クエストを全てスルーしていた。
アイテムもコンプリートしていないし、モンスターを全種類倒した訳ではない。
ゲーム全てを体験したとは言い難い。
だから、ゲームで獣人をテイム出来ることも知らなかった。
だから、クルスにはこの異世界で知らないことがいっぱいあった。
そのことを実感した。
そうこうしている間にも、エスティアの★マークは光り続けていた。
まるで今すぐ、テイムしてくれと言わんばかりだ。
今、エスティアのおでこに光る★マーク。
これは、正に、エスティアがクルスに対して、懐いている証拠だった。
クルスはエスティアを受け入れるかどうか、つまりテイムするかどうかの選択を迫られていた。
断れば、エスティアの★マークは消え去る。
受け入れれば、エスティアはクルスのものになる。
クルスは迷っていた。
スラミーを失った悲しみを思い出したからだ。
もうあんな辛い思いはしたくない。
「クルス……あたし、頑張るにゃ」
「え……?」
猫耳をピンと立て、尻尾を振り振りさせながら、満面の笑顔のエスティア。
「恩返しがしたいにゃ」
「エスティア……」
クルスはエスティアのモフモフした猫耳を触った。
「にゃっ!」
エスティアはくすぐったそうに身を震えさせた。
クルスはもっと触った。
エスティアは目をうっとりさせ、心地よさそうに身をよじらせた。
★マークが一層光ったかと思うと、フッと光が落ち着いた。
「よろしくお願いしますにゃ」
クルスはエスティアをテイムした。
つづく
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