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第13話 昔のギルドの仲間が泣きついて来たけど、もう遅い
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ゴブリンの集団が曲がり角で僕を待ち伏せしていた。
その数……50体はいる。
だが、通路が狭いので、一度に襲い掛かって来れるのは5体ずつだろう。
「くっ!」
そう思っていたが、ゴブリンは器用に壁や天井を伝って僕に襲い掛かって来る。
正面、上、右、左方向から、それぞれいっぺんに5体ずつ襲い掛かって来た。
正面の最初の5体を手槍で串刺しにして行く。
その間に、上、右、左から、それぞれの手に得物を持ったゴブリンが襲い掛かる。
「聖攻氣」
放置してたら覚えてた魔法。
この魔法は詠唱時間が短い。
僕は手槍で正面のゴブリンを相手しながら、唱えていたのだ。
白い光のつぶてが、上、右、左のゴブリンを消し去る。
◇
「やるじゃん! ユウタ。カッコいいよ!」
フィナが柔らかい手の平を僕の肩に乗せて労ってくれた。
「あ、ありがと」
「流石に私が見込んだだけの男だけあるわ。初めて見た時からピンと来てたんだから」
「え?」
面接のとき、フィナは居なかったはずだが……
フィナは薄明りの中でも分かるくらいに、ブラウンの瞳をキラキラ輝かせている。
「さぁ、本陣に攻め込むぞ」
ネスコが促す。
◇
ダンジョンの奥深くには、財宝や強力なアイテムが隠されているのが一般的だ。
それを目指して人々は足を踏み入れる。
一見、このクエストは簡単なゴブリン討伐だと思われた。
実は、難易度が高く強力なアイテムが手に入るクエストだった。
地下二階に足を踏み入れた。
そこは、地下一階の様に通路が縦横無尽にめぐらされた迷宮とは違った。
ワンフロア丸ごと大広間だった。
大広間の真ん中には祭壇があった。
その周りをゴブリンが囲んでいる。
階段の脇に身を潜め、ネスコが僕らに言う。
「ゴブリンをすべて倒し、真ん中の祭壇にある『火竜の牙』これを手に入れればクエストは完了だ」
「火竜の牙……」
「『火竜の剣』の素材になるアイテムだ」
ネスコが何故、その武器が欲しいのか訊きたかった。
だが、今は説明は後と言わんばかりに、彼は前を向いた。
「ユウタ、行くぞ」
「待って」
僕の脳内にリンネの声が響いた。
<ギルドがやばい……>
「僕にはどうすることも出来ない」
僕と鉄騎同盟はもう関係ない。
<ユウタの力が必要だ>
「僕は役に立たないと言われてクビにされた」
向こうでリンネの悩む顔が脳裏に浮かんだ。
<私は知っていた。ユウタが陰ながら私達を支えていたことを>
「……そっか」
<だけど、私は兄者に従うしかなかった>
「兄妹だからか?」
<……>
リンネは兄であるタイチを慕っていた。
「行くぞ! ユウタ!」
「はい!」
どちらにしても、もう遅い。
僕リンネとの通信を切った。
つづく
その数……50体はいる。
だが、通路が狭いので、一度に襲い掛かって来れるのは5体ずつだろう。
「くっ!」
そう思っていたが、ゴブリンは器用に壁や天井を伝って僕に襲い掛かって来る。
正面、上、右、左方向から、それぞれいっぺんに5体ずつ襲い掛かって来た。
正面の最初の5体を手槍で串刺しにして行く。
その間に、上、右、左から、それぞれの手に得物を持ったゴブリンが襲い掛かる。
「聖攻氣」
放置してたら覚えてた魔法。
この魔法は詠唱時間が短い。
僕は手槍で正面のゴブリンを相手しながら、唱えていたのだ。
白い光のつぶてが、上、右、左のゴブリンを消し去る。
◇
「やるじゃん! ユウタ。カッコいいよ!」
フィナが柔らかい手の平を僕の肩に乗せて労ってくれた。
「あ、ありがと」
「流石に私が見込んだだけの男だけあるわ。初めて見た時からピンと来てたんだから」
「え?」
面接のとき、フィナは居なかったはずだが……
フィナは薄明りの中でも分かるくらいに、ブラウンの瞳をキラキラ輝かせている。
「さぁ、本陣に攻め込むぞ」
ネスコが促す。
◇
ダンジョンの奥深くには、財宝や強力なアイテムが隠されているのが一般的だ。
それを目指して人々は足を踏み入れる。
一見、このクエストは簡単なゴブリン討伐だと思われた。
実は、難易度が高く強力なアイテムが手に入るクエストだった。
地下二階に足を踏み入れた。
そこは、地下一階の様に通路が縦横無尽にめぐらされた迷宮とは違った。
ワンフロア丸ごと大広間だった。
大広間の真ん中には祭壇があった。
その周りをゴブリンが囲んでいる。
階段の脇に身を潜め、ネスコが僕らに言う。
「ゴブリンをすべて倒し、真ん中の祭壇にある『火竜の牙』これを手に入れればクエストは完了だ」
「火竜の牙……」
「『火竜の剣』の素材になるアイテムだ」
ネスコが何故、その武器が欲しいのか訊きたかった。
だが、今は説明は後と言わんばかりに、彼は前を向いた。
「ユウタ、行くぞ」
「待って」
僕の脳内にリンネの声が響いた。
<ギルドがやばい……>
「僕にはどうすることも出来ない」
僕と鉄騎同盟はもう関係ない。
<ユウタの力が必要だ>
「僕は役に立たないと言われてクビにされた」
向こうでリンネの悩む顔が脳裏に浮かんだ。
<私は知っていた。ユウタが陰ながら私達を支えていたことを>
「……そっか」
<だけど、私は兄者に従うしかなかった>
「兄妹だからか?」
<……>
リンネは兄であるタイチを慕っていた。
「行くぞ! ユウタ!」
「はい!」
どちらにしても、もう遅い。
僕リンネとの通信を切った。
つづく
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