108 / 199
第108話 ゲームに閉じ込められた世代の孫娘たち
しおりを挟む
「大祖先様!」
振り返ったロドリゴが声を上げる。
そこには、羽織袴に皮の胸当てを着けた大祖先こと、レゴラスが立っていた。
彼の背には矢が入った筒が背負われていた。
手甲を着けた右手には矢、左手に弓を持っている。
彼は私の方を向いてこう言った。
「リンネ、挨拶が遅れたが、ギルドマスターとしてよろしく頼むぞな」
「うむ」
レゴラスは年を取っているせいか、足取りはゆっくりだ。
「大祖先様、寝ておられなくて大丈夫なのですか?」
レゴラスのステータスを見る。
『病』状態だ。
「心配するな。ずっと寝ていてはかえって身体に悪い。それに、お前達がピンチなのに、のうのうとギルド創設者のわしが寝ているわけにはいかんわい」
この世界にいる人間は等しく年を取る。
寿命はそれぞれ異なるが、ステータスに記載されている年齢は積み重なり、個人差によっては病気になったり、疲れが取れにくくなったり、筋力が衰えたりする。
加齢による病は魔法や薬ではすぐに治せない。
大祖先の年齢は113歳だった。
「騒がしいと思ったら、ジジイ、お前か。まだ生きてたのか?」
マリアンが目を覚ました。
「失礼な。この小娘が。……お前が幼い頃、ゴブリンに追い掛けられて泣き叫んで、わしに泣きついて来たくせしおって。あの時のお前は可愛かった。それが、今ではお転婆を通り越して、こんなアバズレになるとは……」
「うるせえ。私の身内と知り合いだからって馴れ馴れしく言い寄ってくんな!」
マリアンとレゴラスは顔見知りなのだろうか。
「まったく、悠真と同じように育ったなお前は」
二人だけにしか伝わらない会話を、私はじっと聞いていた。
レゴラスが耳を傾ける私の態度を気付いてか、私の方を振り向いてこう言った。
「リンネ、説明しておこう。マリアンはな、わしの地球での親友である工藤悠真の孫にあたるのじゃ」
マリアンがチッと舌打ちした。
「奴とは魔界プロジェクトのベータテスト版からプレイを共にし、一緒にゲームに閉じ込められた」
レゴラスことミヤナガ・タダオミは、地球でゲームをプレイしていた。
そして、何らかの理由で肉体を地球に置いたまま、意識だけをゲームに取り込まれた。
以来、ゲームの中から抜け出せないでいる。
ユウマという男も、レゴラスと同じような状態だったのだろう。
「お前の親友はまだ生きている?」
私は問い掛けた。
「ゲームに閉じ込められた最初の世代はわし以外、すべて死に絶えた」
つまりこの世界において、地球と直接的な接点を持つのは、レゴラスだけということになる。
あとは、最初の世代から生まれた電子データだ。
「マリアン。お前は悠真そっくりに育ったな。奴は廃人ゲーマーだったから、このゲームの世界に閉じ込められたのを歓迎しておった。それはどうやら奴の息子にも伝わっていたし、孫娘のお前にもしかと受け継がれている様じゃ」
昔を懐かしむ様に、レゴラスは顎髭を撫でながらそう言った。
マリアンはそっぽを向いている。
そして、レゴラスは両手を広げこう言った。
「じゃがの、ゲームはクリアするためにあるもの。いつかは終わらせなければならぬのじゃ!」
マリアンは眉根を寄せ、キッとレゴラスを睨んだ。
「おい、ジジイ! どういうつもりか知らねえが、人の生き方を指図するんじゃねぇ! 私はここでの生活に満足してるんだ! クリアなんぞ知ったことか!」
つづく
振り返ったロドリゴが声を上げる。
そこには、羽織袴に皮の胸当てを着けた大祖先こと、レゴラスが立っていた。
彼の背には矢が入った筒が背負われていた。
手甲を着けた右手には矢、左手に弓を持っている。
彼は私の方を向いてこう言った。
「リンネ、挨拶が遅れたが、ギルドマスターとしてよろしく頼むぞな」
「うむ」
レゴラスは年を取っているせいか、足取りはゆっくりだ。
「大祖先様、寝ておられなくて大丈夫なのですか?」
レゴラスのステータスを見る。
『病』状態だ。
「心配するな。ずっと寝ていてはかえって身体に悪い。それに、お前達がピンチなのに、のうのうとギルド創設者のわしが寝ているわけにはいかんわい」
この世界にいる人間は等しく年を取る。
寿命はそれぞれ異なるが、ステータスに記載されている年齢は積み重なり、個人差によっては病気になったり、疲れが取れにくくなったり、筋力が衰えたりする。
加齢による病は魔法や薬ではすぐに治せない。
大祖先の年齢は113歳だった。
「騒がしいと思ったら、ジジイ、お前か。まだ生きてたのか?」
マリアンが目を覚ました。
「失礼な。この小娘が。……お前が幼い頃、ゴブリンに追い掛けられて泣き叫んで、わしに泣きついて来たくせしおって。あの時のお前は可愛かった。それが、今ではお転婆を通り越して、こんなアバズレになるとは……」
「うるせえ。私の身内と知り合いだからって馴れ馴れしく言い寄ってくんな!」
マリアンとレゴラスは顔見知りなのだろうか。
「まったく、悠真と同じように育ったなお前は」
二人だけにしか伝わらない会話を、私はじっと聞いていた。
レゴラスが耳を傾ける私の態度を気付いてか、私の方を振り向いてこう言った。
「リンネ、説明しておこう。マリアンはな、わしの地球での親友である工藤悠真の孫にあたるのじゃ」
マリアンがチッと舌打ちした。
「奴とは魔界プロジェクトのベータテスト版からプレイを共にし、一緒にゲームに閉じ込められた」
レゴラスことミヤナガ・タダオミは、地球でゲームをプレイしていた。
そして、何らかの理由で肉体を地球に置いたまま、意識だけをゲームに取り込まれた。
以来、ゲームの中から抜け出せないでいる。
ユウマという男も、レゴラスと同じような状態だったのだろう。
「お前の親友はまだ生きている?」
私は問い掛けた。
「ゲームに閉じ込められた最初の世代はわし以外、すべて死に絶えた」
つまりこの世界において、地球と直接的な接点を持つのは、レゴラスだけということになる。
あとは、最初の世代から生まれた電子データだ。
「マリアン。お前は悠真そっくりに育ったな。奴は廃人ゲーマーだったから、このゲームの世界に閉じ込められたのを歓迎しておった。それはどうやら奴の息子にも伝わっていたし、孫娘のお前にもしかと受け継がれている様じゃ」
昔を懐かしむ様に、レゴラスは顎髭を撫でながらそう言った。
マリアンはそっぽを向いている。
そして、レゴラスは両手を広げこう言った。
「じゃがの、ゲームはクリアするためにあるもの。いつかは終わらせなければならぬのじゃ!」
マリアンは眉根を寄せ、キッとレゴラスを睨んだ。
「おい、ジジイ! どういうつもりか知らねえが、人の生き方を指図するんじゃねぇ! 私はここでの生活に満足してるんだ! クリアなんぞ知ったことか!」
つづく
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる