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第107話 ラストダンジョンのボスモンスターは初見殺し! 犠牲を乗り越えて戦おう!
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「ラストダンジョンの各段にいるボスモンスターは、特殊なスキルや体質を持っています」
ロドリゴが私に説明し始めた。
この際だから、ギルドマスターの私にラストダンジョンについての知恵をつけようとしているのかもしれない。
「これは幾多の探索で分かって来たことです」
「ふむ」
彼は手にしていた攻略本を開いた。
「我がギルドで管理しているものです。写本ですが……。原本はガイア様が持っています」
ページを開き、説明する。
「例えば、羊の段のボスモンスターは普通の攻撃を受け付けません。犠牲になった者の血で染めた刃でないと、ダメージを与えることが出来ませんでした」
それに気付くまでに、数十人もの犠牲が必要だったそうだ。
牡牛の段のボスモンスターも力押しだけでは勝てなかったそうだ。
敵のスキルと体質を把握し、それに対抗出来る攻撃方法を考えなければならない。
「つまり、レベルが高いだけではダメということか。頭を使えということだな」
私の要約を聞いたロドリゴは頷いた。
ラストダンジョンのボスモンスターは、人間にとって初見殺しといったところか。
そのために探索隊を送っている。
ダンジョンのマップを作るため。
ボスモンスターに出来るだけ近づき、その容姿を確認するため。
そのスキルと体質を把握するため、時には戦いを仕掛ける。
今回の全滅は、その中で起きた不幸な出来事だった。
「救世主を中心に、全てのギルドが力を合わせ、攻略していくのがラストダンジョンなのです!」
ロドリゴは語気を強くした。
私は寝息を立てているマリアンを見た。
こいつが魔王を倒すことに力を注いでくれれば、ちょっとは攻略も楽に進むだろうか。
少しでも無用な争いは避け、皆が一丸となり、魔王討伐に邁進する。
そのことを考えれば、ここは何もせずユウタを待つのが得策なのかもしれない。
「リンネ様。ここは待ちましょう。救世主を」
「いや……」
私はロドリゴの手を払いのけた。
ゆっくり歩を進め、マリアンの近くまで行く。
私は眠っているマリアンの首筋にクナイを近づけた。
やるか……
どうあっても、この女が考え方が変わるとは思えなかった。
何より、この女は私にとって復讐の対象だ。
一緒に戦える気がしない。
眠っている今なら先手を取れる。
彼女のHPは69999。
私と彼女のレベルと各パラメータ差を考えると、先手が運良くクリティカルヒットになったところで、8000減らせればいいところか。
そこから先は血みどろの戦いが待っている。
「くっ……くくっ……」
苦しそうに呻くタイチと目が合った。
言葉を交わさなくとも分かる。
やめろ、そう言っている。
私を心配してくれるのはありがたい。
だが、私はやる。
周りを見ると、マリアンに付き添う様に現れた妖術師が私を見ていた。
ただし、静観しているだけで、手出しする気は無い様だ。
まるでマリアンが負ける訳が無いとでも思っているのだろう。
私は自分の胸の高鳴りを感じた。
圧倒的な存在の前に、死を意識し始めていた。
だが、ユウタや兄者のためだ。
否、自分のためなのだ。
ユウタの顔を思い出した。
私は死を恐れない。
きっと、ユウタが魔王を倒し地球へ私を転生させてくれるから。
私は静寂の中、クナイを……
「待つのじゃ! リンネよ!」
ギルドホールにしわがれた声が響いた。
つづく
ロドリゴが私に説明し始めた。
この際だから、ギルドマスターの私にラストダンジョンについての知恵をつけようとしているのかもしれない。
「これは幾多の探索で分かって来たことです」
「ふむ」
彼は手にしていた攻略本を開いた。
「我がギルドで管理しているものです。写本ですが……。原本はガイア様が持っています」
ページを開き、説明する。
「例えば、羊の段のボスモンスターは普通の攻撃を受け付けません。犠牲になった者の血で染めた刃でないと、ダメージを与えることが出来ませんでした」
それに気付くまでに、数十人もの犠牲が必要だったそうだ。
牡牛の段のボスモンスターも力押しだけでは勝てなかったそうだ。
敵のスキルと体質を把握し、それに対抗出来る攻撃方法を考えなければならない。
「つまり、レベルが高いだけではダメということか。頭を使えということだな」
私の要約を聞いたロドリゴは頷いた。
ラストダンジョンのボスモンスターは、人間にとって初見殺しといったところか。
そのために探索隊を送っている。
ダンジョンのマップを作るため。
ボスモンスターに出来るだけ近づき、その容姿を確認するため。
そのスキルと体質を把握するため、時には戦いを仕掛ける。
今回の全滅は、その中で起きた不幸な出来事だった。
「救世主を中心に、全てのギルドが力を合わせ、攻略していくのがラストダンジョンなのです!」
ロドリゴは語気を強くした。
私は寝息を立てているマリアンを見た。
こいつが魔王を倒すことに力を注いでくれれば、ちょっとは攻略も楽に進むだろうか。
少しでも無用な争いは避け、皆が一丸となり、魔王討伐に邁進する。
そのことを考えれば、ここは何もせずユウタを待つのが得策なのかもしれない。
「リンネ様。ここは待ちましょう。救世主を」
「いや……」
私はロドリゴの手を払いのけた。
ゆっくり歩を進め、マリアンの近くまで行く。
私は眠っているマリアンの首筋にクナイを近づけた。
やるか……
どうあっても、この女が考え方が変わるとは思えなかった。
何より、この女は私にとって復讐の対象だ。
一緒に戦える気がしない。
眠っている今なら先手を取れる。
彼女のHPは69999。
私と彼女のレベルと各パラメータ差を考えると、先手が運良くクリティカルヒットになったところで、8000減らせればいいところか。
そこから先は血みどろの戦いが待っている。
「くっ……くくっ……」
苦しそうに呻くタイチと目が合った。
言葉を交わさなくとも分かる。
やめろ、そう言っている。
私を心配してくれるのはありがたい。
だが、私はやる。
周りを見ると、マリアンに付き添う様に現れた妖術師が私を見ていた。
ただし、静観しているだけで、手出しする気は無い様だ。
まるでマリアンが負ける訳が無いとでも思っているのだろう。
私は自分の胸の高鳴りを感じた。
圧倒的な存在の前に、死を意識し始めていた。
だが、ユウタや兄者のためだ。
否、自分のためなのだ。
ユウタの顔を思い出した。
私は死を恐れない。
きっと、ユウタが魔王を倒し地球へ私を転生させてくれるから。
私は静寂の中、クナイを……
「待つのじゃ! リンネよ!」
ギルドホールにしわがれた声が響いた。
つづく
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