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第106話 ダンジョン探索は慎重に!
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しん、と静まり返ったギルドホール。
激戦の後を物語る様に、壁や床は焼けただれ陥没し、そこら中に血の匂いが漂い、煙が立ち込めていた。
そんな異常な空間の中で、無邪気な寝息を立てている女が一人。
「殺す」
私は右手にクナイ、左手に小太刀を持ち、その女に近寄る。
そいつは、あろうことか私の兄者を椅子代わりにしてコクリコクリと気持ち良さそうに寝ている。
寝込みを襲うのは、私のプライドに反するが……
こいつだけは、殺す。
「リンネ様」
ロドリゴが私を呼び止める。
「主力メンバーが戻るまで待ちましょう」
力強くそう言われ、私は歩を止めた。
その時、脳内にメッセージが届いた。
<だめだ……俺達はもう全滅する>
通信の向こう側にいるギルドメンバーは、息を切らしながらそう言った。
「おい、どうした!? しっかりするんだ!」
ロドリゴが檄を飛ばす。
ギルドの主要メンバーが、その通信に反応している。
通信の相手はラストダンジョンを探索中のギルドメンバーで、探索隊のリーダーである戦士のテトラだ。
彼らは現在、第3段の『双子』の段を探索中のはずだった。
<俺達の中に裏切り者がいた……>
「え?」
ラストダンジョンに派遣したメンバーは、地球の中でも主力の者達だった。
彼らはそれぞれレベルが80から85で、5人パーティで探索に向かった。
その5人の中に裏切り者がいたということか。
「それは誰だ?」
ロドリゴが問い掛ける。
<武闘家のデミラスだ。奴が裏切ったことで、皆、疑心暗鬼になり同士討ちが始まった。残ったのは俺だけだ>
「何ということだ……だが、頑張れ」
<戦いに負けるよりも、裏切り者がいたということの方がショックだ>
「今は忘れて、逃げることだけを考えろ」
ロドリゴはいつもの優しい顔とは異なり、険しい顔で仲間を励ましている。
通信の向こう側にいるテトラも、顔を合わせたことも無いギルドマスターと話すより、顔なじみのロドリゴと話す方が安心するだろう。
私はあえて二人の会話に、口を挟まないことにした。
<もう無理だ。たった一人では、このダンジョンを抜けることは出来ない>
「『帰還の笛』を渡しておいただろ」
帰還の笛とはダンジョンから地上に一瞬で戻れるアイテムのことだ。
転移玉の様な瞬間移動系のアイテムだ。
転移玉ほどではないが希少価値が高く、高難度のダンジョンを探索する際は持参するのが常識だ。
<死んだメンバーが持っていたが、それをモンスターに奪われた>
「くっ……」
<おっ……最後のお迎えが来た様だ。ロドリゴ、リンネ様、後は任せました。魔王を倒してください>
「待て! 諦めるな!」
その後、通信がとぎれとぎれになった。
刃がぶつかり合う音、肉体が壁に激突する音、瓦礫が崩れる音が聞こえる。
そして、最後の力を振り絞る様に、通信が鮮明になる。
<ロドリゴ、最後に有益な情報を教えておこう>
「何だ?」
<はははは! 笑えるぞ! 俺ソックリの奴が目の前にいて、俺と同じ技を使う。しかもステータスまでそっくりそのままだ!>
気が狂った様な笑い声が、脳内に響く。
そこで通信が途切れた。
「リンネ様」
ロドリゴが私の肩に手を掛け首を振る。
頼みの綱が切れた。
つづく
激戦の後を物語る様に、壁や床は焼けただれ陥没し、そこら中に血の匂いが漂い、煙が立ち込めていた。
そんな異常な空間の中で、無邪気な寝息を立てている女が一人。
「殺す」
私は右手にクナイ、左手に小太刀を持ち、その女に近寄る。
そいつは、あろうことか私の兄者を椅子代わりにしてコクリコクリと気持ち良さそうに寝ている。
寝込みを襲うのは、私のプライドに反するが……
こいつだけは、殺す。
「リンネ様」
ロドリゴが私を呼び止める。
「主力メンバーが戻るまで待ちましょう」
力強くそう言われ、私は歩を止めた。
その時、脳内にメッセージが届いた。
<だめだ……俺達はもう全滅する>
通信の向こう側にいるギルドメンバーは、息を切らしながらそう言った。
「おい、どうした!? しっかりするんだ!」
ロドリゴが檄を飛ばす。
ギルドの主要メンバーが、その通信に反応している。
通信の相手はラストダンジョンを探索中のギルドメンバーで、探索隊のリーダーである戦士のテトラだ。
彼らは現在、第3段の『双子』の段を探索中のはずだった。
<俺達の中に裏切り者がいた……>
「え?」
ラストダンジョンに派遣したメンバーは、地球の中でも主力の者達だった。
彼らはそれぞれレベルが80から85で、5人パーティで探索に向かった。
その5人の中に裏切り者がいたということか。
「それは誰だ?」
ロドリゴが問い掛ける。
<武闘家のデミラスだ。奴が裏切ったことで、皆、疑心暗鬼になり同士討ちが始まった。残ったのは俺だけだ>
「何ということだ……だが、頑張れ」
<戦いに負けるよりも、裏切り者がいたということの方がショックだ>
「今は忘れて、逃げることだけを考えろ」
ロドリゴはいつもの優しい顔とは異なり、険しい顔で仲間を励ましている。
通信の向こう側にいるテトラも、顔を合わせたことも無いギルドマスターと話すより、顔なじみのロドリゴと話す方が安心するだろう。
私はあえて二人の会話に、口を挟まないことにした。
<もう無理だ。たった一人では、このダンジョンを抜けることは出来ない>
「『帰還の笛』を渡しておいただろ」
帰還の笛とはダンジョンから地上に一瞬で戻れるアイテムのことだ。
転移玉の様な瞬間移動系のアイテムだ。
転移玉ほどではないが希少価値が高く、高難度のダンジョンを探索する際は持参するのが常識だ。
<死んだメンバーが持っていたが、それをモンスターに奪われた>
「くっ……」
<おっ……最後のお迎えが来た様だ。ロドリゴ、リンネ様、後は任せました。魔王を倒してください>
「待て! 諦めるな!」
その後、通信がとぎれとぎれになった。
刃がぶつかり合う音、肉体が壁に激突する音、瓦礫が崩れる音が聞こえる。
そして、最後の力を振り絞る様に、通信が鮮明になる。
<ロドリゴ、最後に有益な情報を教えておこう>
「何だ?」
<はははは! 笑えるぞ! 俺ソックリの奴が目の前にいて、俺と同じ技を使う。しかもステータスまでそっくりそのままだ!>
気が狂った様な笑い声が、脳内に響く。
そこで通信が途切れた。
「リンネ様」
ロドリゴが私の肩に手を掛け首を振る。
頼みの綱が切れた。
つづく
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