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第1章生徒会

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漣の首を絞めようと思わず伸ばしていた自分の手に、俺はハッとする。危うく殺人を犯す所だった。
すると、その手を漣に絡め取られる。野郎と繋がれた手にイラッとした。
「何々ぃ?ルカくんからのお誘いかなぁ?」
「俺より頭がいいなら違う事くらい分かるだろ?」
「えぇー。あっ、そういえばぁ、ルカくんって運動も出来なかったよねぇ。50m走、何秒だっけぇ?」
「……24秒」
「シャトルランはぁ?」
「……1回」
「………、25mは、頑張ったんだねぇ。偉い偉い」
そう言ってにこにこしながら漣は手を繋いでいる方の逆の手で俺の頭を撫でてくる。止めろ、ウィッグが取れるだろ。
俺が漣の手を打ち落とすのと同時に、漣はふと先程までヤろうとしていた男の子を見た。ぽかんとしていた彼はハッと漣を見つめる。
「キミはもう帰っていいよぉ、気分じゃ無くなったからぁ」
「え、そんなっ!漣様、お願いしますっ、漣様っ……」
「いいから早く帰ってぇ。オレ、今ちょー機嫌いいから許してあげれてるんだよぉ?だからぁ、早く帰ってぇ?」
「っ……、し、失礼します……」
今にも泣きそうな悔しそうな表情で、彼は保健室から出ていった。出ていく直前、睨まれたが気にしない。閉められた扉を見ていた俺は、ずっとこちらを見てくる漣に視線を戻し微笑む。
「早く帰って?」
「や・だ♡」
「やかましい」
そう言って俺は漣に蹴りを入れようとするが足を掴まれる。その拍子にずっと握られていた手を離されたが、足を顔に近付けねとりと舐められた。
「キモい!不愉快だ離せ」
「そんなつれない事言わないでぇ。ね、ヤらない?気持ち良くするよぉ?気持ちいい以外何も考えられなくなって、俺に必死にすがり付いて、お腹がたぷたぷになって、けど終わっても体の中が疼いて、授業も睡眠も放り出してまだヤりたいって延々と言うくらい。ね?」
「何が、ね?だよ。女遊びもしてる漣が一番タチ悪い。大体の男共は女にあんまり会った事無いから女装してる俺と目を合わせるだけで赤くなるのに。触ったら気絶するくらいヘタレなのに」
「え、そんなヘタレなのぉ?」
びっくりした様子で俺の足から手を離す漣の腹に1つ蹴りを入れれてから頷く。咳込みながら漣はちらりとこちらに視線を寄越した。
「けほっ、けほっ。もー、止めてよぉ。オレが本当にルカくんとヤる訳無いじゃぁん」
「それは知ってる。君達は俺に手は出さない、9年以上同じ学校で暮らしてるし」
「いやじゃあ何で蹴るの?!」
「気分」
「気分?」
「気分」
へぇ、と笑みをひきつらせた漣に俺は気にせずベッドに寝っ転がる。漣は1度ベッドから降りて布団を俺に掛け直しながら、ふと首を傾げた。
「そういえばルカくん、いつまで保健室に居るのぉ?てか何で居るのぉ?」
「取り敢えず昼休みまでは居るつもり。何で居るのかは、頭とか腹とか腰とか……、何処だっけ。何か、どっかその辺が痛いから」
「いやふつーに仮病じゃん。あっ、じゃあオレもルカくんと一緒に昼休みまでサボるぅ」
「授業受けろよ」
「こっちの台詞だよぉ、成績上げようよぉ。そして生徒会に入ろうよぉ」
「嫌だよ言うなよ入らないよ」
そう俺はへらへら笑う漣を睨む。けれど結局、そのままずるずると漣は居座り続け、4時間目になってようやく書記が彼を迎えに来た。何でも生徒会の仕事がたまっているらしい。お前も人の事言えないやん。
そしてタオルをセットし身だしなみを整えたりして4時間目も過ごし、チャイムが鳴ると俺はベッドから降りた。腹が減ったと思いながら1人で食堂に向かう。いつもも大抵行動は単独だ。
ぶっちゃけ桂木と黒崎以外、友達らしき友達は居なかった。ちなみに漣は違う。何か、あれを友達と言ったら人として失格な気がする。
そんな事を考え歩き続けてしばらく、既に混み始めている食堂に到着した。
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