サイコパスな兄達に狂愛されています

翡翠飾

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2話,MAYNARD

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夢の中で俺は1人静かに状況を確認していた。先程まで見ていた夢が俺の過去の映像で無く前世だったなら、俺は転生し乙女ゲームの世界の中に居る事になる。
メイナードは確かに俺の名前だ。けれどどうにもその記憶が他人事に思えて、前世の方が自分自身の人生のように思える。
メイナード=ハップル、この国の四大公爵が1つ、ハップル公爵家五男として生まれた俺は身分格差が激しいこの国で不自由無く暮らしていた。ただ1つ、不便な事があるとするならばそれは兄達に関する事だ。
兄達は全員もれなく異常な思考を持っている、巷ではサイコパスと言われる人種である。両親はとっくに心中をしてもうこの世には居ない、その為彼等の異常な行動を止める者なんて誰も居らず家の中は兄達の無法地帯も同然だ。もし使用人が口出しなんてしたら殺されてしまう。兄弟同士で抑えないのかと思うかもしれないが、兄弟仲は比較的いいもののお互いに口出しはしなかった。それは俺達兄弟の中での絶対のルール、“兄弟だけは手を出さない"による物だ。
兄達の性癖は人の命に関わる非倫理的な物ばかり、そんな彼等の一番手近な獲物は自分の兄弟だろう。現に俺は良く子児狂である二番目の兄に会う度全身を舐め回すような視線を送られていた。けれど俺は彼に襲われた事は無く今の今まで無事で済んでいる。それはそんな俺達サイコパス兄弟の中で唯一残った倫理感が家族を大切にする事だったからだ。
そしてこれまでの人生と兄達の名前、そして先程夢に出てきて全て思い出した事を照らし合わせて俺は気付いた。ここが前世でプレイしていた、グロテスク乙女ゲームの世界だと言う事に。
三男と四男はヒロインと同じ時期に学園に通う攻略対象だ、他にも数人の攻略対象が居てヒロインは彼等の純愛とは程遠い狂愛を育む。好感度が低いとヒロインは殺され、好感度が高いと彼等の性癖を1人で受け止める事となる。そして好感度マックスでようやく攻略対象の心の闇を取り除き彼等の性癖は無くなって、サイコパスでないとしてヒロインと幸せになるシナリオだ。
それらの中でも唯一本当のハッピーエンドと言えるのは、攻略対象キャラ全ての性癖が消える逆ハーレムルート。それが無ければ攻略対象達は悪徳貴族として国民を傷付け続け、腐った王国で出来上がる。それがバッドエンドだ。
これらの事を踏まえて俺がすべき事は、ヒロインをサポートしてその逆ハーレムエンドを目指す事である。そうでなければ俺は一生いつ兄達に殺されるか怯えて過ごす事になってしまう。
そうならない為にはまず、今のうちからヒロインに接触しておくのが吉。今はまだ乙女ゲームが始まる2年前だが、善は急げと微睡みの中に居る自分の意識を起こし目を覚まして身軽に起き上がるとベッドの側の椅子に腰掛けた美少年が居る事に気付いた。

「あっ、メイくん起きた。体調はどう?医者は体に問題は無いって言ってたけど、まだ気分は悪い?医者を呼ぼうか」

彼を見た瞬間にひっと声を上げそうになり舌を噛んで堪える。
彼は俺の三番目の兄、乙女ゲームの攻略対象の1人であるケーレル=ハップルだ。洒落た物が好きな彼の整えられた桃色の髪からはヘアオイルの薔薇の匂いが香り、瞳は俺と同じ濃い紫色だが睫毛は俺より長い。耳にはピアスの穴が開けられ今も彼のお気に入りの宝石であるピンクダイヤモンドがクリスタル状にされた耳飾りを付けている。長い足が活かされるハイウエストの黒いスリムパンツにレースがついた上質なシャツを身に付け、その上から金色の糸で細かい刺繍がされた絹の深紅のケープを羽織う。その隙間から腰に下げられている、ピンクダイヤモンドが丸ごとはめられた金色の懐中時計が見えた。靴は男性用の高いヒール、両手首についている時計はまた同じ宝石がベゼルやダイアルに散りばめられた物だ。
そんな金に物を言わせたファッションをケーレルはその優れた容姿で着こなしていた。内面も人懐っこく誰に対してもフレンドリーな名家の令息、好ましく思わない者が何処に居ようか。ケーレルは社交界では人気者である。
けれどケーレルはあのグロテスク乙女ゲームの攻略対象、生まれた頃から彼と同じ屋根の下暮らしてきた俺は十分に彼の危険性を理解していた。

「あ、もしかして、そんなにあのブタの顔醜かった?えぇっ、どうしようメイくん。俺もうそいつの身体食っちゃった」

ケーレルはカニバリズム、食人欲求を持つ社会不適合者サイコパスだった。
生きた人間の血を啜り、腹を割き臓器を引きずり出してそれを食らい、時には焼いて塩をまぶす事もある。地下牢に保管している子供から大人までに明らかに栄養が偏った肉ばかりと言った食事を与え太らせ、食べ頃だと思えば侍従を使って押さえつけかぶり付いていた。
光が映らない、濁りが渦巻くアメジストのような目が細められ、にこっとこちらへと優しげに微笑みかけてくる。

「でも味は良かったよ、脂もいっぱいのってて。まだ残っているからメイくんも一緒に食べよう?具合もきっとすぐ良くなる」

気持ち悪い、人を食べるなんておぞましい。
吐き気が込み上げてきて、俺はそれを誤魔化すように大きく深呼吸をした。
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