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第2話 四ノ宮氷見子(しのみや ひみこ)の回想
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こっそり四ノ宮氷見子の顔を観察する式神だったが、氷見子にはバレていた。
あー...この人もやっぱり私の顔を見るんだなぁ。
氷見子はその容姿のせいで常に男達の好奇な視線を受けてきた。舐めるようないやらしい目で。
でも...この式神さんの眼差しは何かちょっと違うな。生理的な嫌悪や生命の危機のような感覚は湧いて来ない。ま、いっか。なるべく視線が合わないように気遣ってあげよう...
向かい合った式神拓人が仕事の資料に目を通しつつ、本のニーズや勘所について的確な質問をしてくる。穏やかな口調で。
この人なんだか安らぐな。顔や雰囲気が女の子みたいな。『男~!』って感じの男の"毒毒"を感じない。
私もこういう顔だったら良かった。優しそうで愛嬌があって...
こんな男の人が多ければ26歳になってもまともな恋愛経験ゼロなんてことにはならなかったかもなぁ。
親しい女子友には『美人の無駄遣い』って呆れられるし。
だけど、無駄遣いどころか、こんな顔に生まれたせいで嫌な思いをした事の方が圧倒的に多いよ...
式神の仕事の質問に丁寧に応えつつ氷見子の記憶回路が動き出す
---『氷見子は美人だから良いよね』『生まれた時から勝ち組』『人生イージーモード』『氷見子は特別だからウチらの悩みなんか解らないよ』なんて言われ続けて、全然嬉しくないし。
陰で彼女らが私の悪口を言ってたのは知ってるし。何が友達だ~!
今になって思えば、あんな子達と無理して仲良くしなくても良かったのに。今更腹を立てたって遅いけどね。
これからは人付き合いを考え直そう。私はお人好しだから...
整った顔立ちをしていると大人びて賢こそうに見えるようだ。
幼稚園の頃から大学の卒業まで何かしら面倒な役割を押し付けられた。
教師やクラスの子達は、賢そうな顔の私に『四ノ宮なら出来る!』『四ノ宮さんは大人だから』『四ノ宮さんが適任!』
冗談じゃないよ(怒
今の会社のフラグランスだって...
元の会社エヴォリューツが瓦解して3つの会社に分かれ、私を含め女性4人でフラグランスを立ち上げる時、50歳のベテランの寺田さんだっているのに、その時24歳で一番若かった私が社長に推し上げられちゃったし。
クリエーターの手配や編集の仕事が忙しいのに、得意先の出版社への外回りは私ばっかり。他にも面倒事がいっぱい。寝る時間が無い...
30になった頃にはボロボロの老婆になってるよ、たぶん。
痴漢の被害は制服姿だった中高時代は多過ぎた。今はそれほどでもないけど、まだあるし。
男達に視姦されるのは毎日。隠れてチラチラ見たって目の動きや漂う変な『気』で判るんだから。
告白は小学校高学年頃から自分でも驚くほどたくさんの人にされた。
告白されるのは嫌だった。
ーーー男子が来る。あ...この雰囲気、また告白だーーー
この場面の気分、本当に嫌だ。
私、あなた達の事なんにも知らないし。
頼めば付き合えるとでも?
OKをもらえたらラッキーみたいな雑な運試し?
「俺と付き合ってください!」
人一人殺しそうな形相の巨人が、いきなり「勝負!」とか叫んで斬りつけて来るようなものだ。
女にとって男は怖い生き物だ。筋力では絶対に敵わないし、身長は平均13cmは女の方が低い。
(戦った事の無い170cmのヒョロい男が身長183cmの圧倒的なマッチョに「おい!お前!」って突撃されたらどうよ?まず心が死ぬでしょ、そんなの。
知らない人といきなり付き合う人生なんて博打過ぎる。
告白される側の気持ちを考えてないでしょ。自分の欲望ばっかり。
そんな人と付き合って幸せになれるとは思えない。
そんな相手でもね...断ったら傷つくだろうし申し訳ない。とても心苦しい。
酷い罪の意識に悩まされながら、言葉を必死に探して、ひたすら断るんだ。
何が『美人だから良いよね』だ。
そして...告って断られた男達の屍が累々だと学校中に伝わって、
『氷の死...のみや』なんて死神みたいなあだ名を付けられた。
断った男に片想いしていた女子には陰口を叩かれたり酷いデマを流されたり...
『生まれた時から人生ハードモード』だ。
何でそんなにも世の男達は美人の顔を求めるのか。
自分としてはこの顔は魔物や疫病神を呼び寄せる呪物だ。
だったら甘い物や油っぽい物や炭水化物をいっぱい食べてデブって、軽薄な髪色に染めて、服装も似合わないのにして、美的センス最低の汚い化粧をして、馬鹿で下品な言動にすれば、男達の目が向かなくなるんだろうけど、
それって、こういう顔に生まれた呪いに負けて自らを貶める行為。自分の人生に負けたような気がする。
だから自分に似合うように、品があるように見える姿を保つように心がけてる。
他人に合わせるのは嫌だ。
学生の頃って、女子はグループごとにおんなじ格好をしてたな。
同じ髪型髪色、ほぼ同じ着こなし、服のタイプだけでなくて色まで同じ!登校前に打ち合わせをしたのですか?と思うくらい。
私はそういうのは嫌いだから、時代を超越して綺麗に見えて、自分に似合うファッションを選ぶ。
時代に合わせた髪型服装メイクは十年すると不自然でカッコ悪く見えるようになる。
綺麗な盛りだった頃の自分の写真が時代に合わせたせいで後で見てみっともない姿ばかりだったらガッカリですよ。
ふーーー、私の人生、何だか救われる予感が薄いね。
全然付き合いたくないタイプの男達は寄って来るのに、
この人いいなぁと思った人は、私のことを怖がってる感じで避けるんだよなぁ...
式神さんはどうなのかな?
これは観察する眼差しか...ちょっと気に触るけど、ドロドロの性欲や支配欲とは違う感じはする。
-----------------------------------
週1話くらいのペースで続きを上げていく予定です
あー...この人もやっぱり私の顔を見るんだなぁ。
氷見子はその容姿のせいで常に男達の好奇な視線を受けてきた。舐めるようないやらしい目で。
でも...この式神さんの眼差しは何かちょっと違うな。生理的な嫌悪や生命の危機のような感覚は湧いて来ない。ま、いっか。なるべく視線が合わないように気遣ってあげよう...
向かい合った式神拓人が仕事の資料に目を通しつつ、本のニーズや勘所について的確な質問をしてくる。穏やかな口調で。
この人なんだか安らぐな。顔や雰囲気が女の子みたいな。『男~!』って感じの男の"毒毒"を感じない。
私もこういう顔だったら良かった。優しそうで愛嬌があって...
こんな男の人が多ければ26歳になってもまともな恋愛経験ゼロなんてことにはならなかったかもなぁ。
親しい女子友には『美人の無駄遣い』って呆れられるし。
だけど、無駄遣いどころか、こんな顔に生まれたせいで嫌な思いをした事の方が圧倒的に多いよ...
式神の仕事の質問に丁寧に応えつつ氷見子の記憶回路が動き出す
---『氷見子は美人だから良いよね』『生まれた時から勝ち組』『人生イージーモード』『氷見子は特別だからウチらの悩みなんか解らないよ』なんて言われ続けて、全然嬉しくないし。
陰で彼女らが私の悪口を言ってたのは知ってるし。何が友達だ~!
今になって思えば、あんな子達と無理して仲良くしなくても良かったのに。今更腹を立てたって遅いけどね。
これからは人付き合いを考え直そう。私はお人好しだから...
整った顔立ちをしていると大人びて賢こそうに見えるようだ。
幼稚園の頃から大学の卒業まで何かしら面倒な役割を押し付けられた。
教師やクラスの子達は、賢そうな顔の私に『四ノ宮なら出来る!』『四ノ宮さんは大人だから』『四ノ宮さんが適任!』
冗談じゃないよ(怒
今の会社のフラグランスだって...
元の会社エヴォリューツが瓦解して3つの会社に分かれ、私を含め女性4人でフラグランスを立ち上げる時、50歳のベテランの寺田さんだっているのに、その時24歳で一番若かった私が社長に推し上げられちゃったし。
クリエーターの手配や編集の仕事が忙しいのに、得意先の出版社への外回りは私ばっかり。他にも面倒事がいっぱい。寝る時間が無い...
30になった頃にはボロボロの老婆になってるよ、たぶん。
痴漢の被害は制服姿だった中高時代は多過ぎた。今はそれほどでもないけど、まだあるし。
男達に視姦されるのは毎日。隠れてチラチラ見たって目の動きや漂う変な『気』で判るんだから。
告白は小学校高学年頃から自分でも驚くほどたくさんの人にされた。
告白されるのは嫌だった。
ーーー男子が来る。あ...この雰囲気、また告白だーーー
この場面の気分、本当に嫌だ。
私、あなた達の事なんにも知らないし。
頼めば付き合えるとでも?
OKをもらえたらラッキーみたいな雑な運試し?
「俺と付き合ってください!」
人一人殺しそうな形相の巨人が、いきなり「勝負!」とか叫んで斬りつけて来るようなものだ。
女にとって男は怖い生き物だ。筋力では絶対に敵わないし、身長は平均13cmは女の方が低い。
(戦った事の無い170cmのヒョロい男が身長183cmの圧倒的なマッチョに「おい!お前!」って突撃されたらどうよ?まず心が死ぬでしょ、そんなの。
知らない人といきなり付き合う人生なんて博打過ぎる。
告白される側の気持ちを考えてないでしょ。自分の欲望ばっかり。
そんな人と付き合って幸せになれるとは思えない。
そんな相手でもね...断ったら傷つくだろうし申し訳ない。とても心苦しい。
酷い罪の意識に悩まされながら、言葉を必死に探して、ひたすら断るんだ。
何が『美人だから良いよね』だ。
そして...告って断られた男達の屍が累々だと学校中に伝わって、
『氷の死...のみや』なんて死神みたいなあだ名を付けられた。
断った男に片想いしていた女子には陰口を叩かれたり酷いデマを流されたり...
『生まれた時から人生ハードモード』だ。
何でそんなにも世の男達は美人の顔を求めるのか。
自分としてはこの顔は魔物や疫病神を呼び寄せる呪物だ。
だったら甘い物や油っぽい物や炭水化物をいっぱい食べてデブって、軽薄な髪色に染めて、服装も似合わないのにして、美的センス最低の汚い化粧をして、馬鹿で下品な言動にすれば、男達の目が向かなくなるんだろうけど、
それって、こういう顔に生まれた呪いに負けて自らを貶める行為。自分の人生に負けたような気がする。
だから自分に似合うように、品があるように見える姿を保つように心がけてる。
他人に合わせるのは嫌だ。
学生の頃って、女子はグループごとにおんなじ格好をしてたな。
同じ髪型髪色、ほぼ同じ着こなし、服のタイプだけでなくて色まで同じ!登校前に打ち合わせをしたのですか?と思うくらい。
私はそういうのは嫌いだから、時代を超越して綺麗に見えて、自分に似合うファッションを選ぶ。
時代に合わせた髪型服装メイクは十年すると不自然でカッコ悪く見えるようになる。
綺麗な盛りだった頃の自分の写真が時代に合わせたせいで後で見てみっともない姿ばかりだったらガッカリですよ。
ふーーー、私の人生、何だか救われる予感が薄いね。
全然付き合いたくないタイプの男達は寄って来るのに、
この人いいなぁと思った人は、私のことを怖がってる感じで避けるんだよなぁ...
式神さんはどうなのかな?
これは観察する眼差しか...ちょっと気に触るけど、ドロドロの性欲や支配欲とは違う感じはする。
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週1話くらいのペースで続きを上げていく予定です
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