アラサー女魔法使い、淫魔の呪いを解くために後輩の体液をいただきます

こじまき

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もう必要ないの

カレルの体液をいただいてしまった。一晩で何度も何度も。身体はすこぶる楽になったが、心は重い。

カレルに謝り倒しながら家まで送ってもらい、何とか二時間くらいだけ寝て、どんよりした心のまま出勤する。

まず行くところはミハイル先生の診察室。呪いを受けた魔法使いは、毎日診察を受けることになっているからだ。呪いの進行具合や、周囲に害を及ぼさないか確認するために。

「えらいえらい、早速セックスしたいみたいだねぇ」

セックスして褒められたのは初めてだ。

「それもいっぱいしたみたいだねぇ」
「そんなことまでわかるんですか」

ミハイル先生独特のおっとりした話し方のせいか、羞恥心というものはなぜか顔を出してこない。

「だって、かなり良くなってるもん。体調はどう?」
「身体が軽くて、頭痛も吐き気もありません」
「でしょう?回数もだし、もしかしたら相手が興奮しているほど効果が高いのかもねぇ」

それはないと思う。カレルが私を抱いたのは、罪悪感からだもの。興奮とかない。

「ただまだ解呪には至っていないんだよねぇ」
「そうですか…」

「あとどれくらいすれば解呪できるのだろう」と聞いたが、それはミハイル先生にも解呪できるまでわからないらしい。

「一人からもらえる量には限界があるから、複数を相手にするのもおすすめ。命がかかってるから節操とか言ってる場合じゃないしねぇ」
「そう、ですね…」

早く呪いを解きたい。

ミハイル先生は「頼む相手が足りなかったら言ってねぇ。僕も助けになれるからさぁ」と冗談なのか本気なのかわからないことを言ってウインクし、私はそれを無視した。

呪いを解くという目的があったとしても、恋人でもない同僚とセックスなんてもうごめんだ。

気まずすぎて、今日はカレルの水色の髪が遠くにちらりと見えるたびに物陰に隠れて過ごしている。さっと物陰に隠れるくらい軽快に動けるのは、カレルのおかげに他ならないのだけど。

「集中!」

油断すると昨日のカレルの熱を帯びた目と、何度も襲ってきた快感が蘇って、私は執務机で自分に気合いを入れる。

魔獣対策隊の部下や後輩たちがあげてきた報告書や稟議書に目を通し、問題ないものには印を押し、不十分なものには付箋をつけて差し戻しのボックスに入れていく。

コンコンコン。ノックの音。

「カレル・ルバーシュです。稟議書を提出しにきました」
「どうぞ」

カレル。

ついに会ってしまった。いや、同じ隊の筆頭魔法使いと次席魔法使いなのだから、いつかは会ってしまうのだけど。でも、できるだけいつも通り。

いつも通り。

って、どうやってたっけ?

「急ぎ?」
「いいえ」
「じゃあここに入れておいて。順番に見るから」
「はい」
「お疲れさま」
「…」

返事がない。

私が報告書から目を上げると、カレルの深い青の瞳が目の前にあった。

「…っ!なっ…なにっ…!?」
「体調はどうですか?」
「あ…ええと…おかげさまで快調です」
「それはよかったです」

カレルはにこっと笑って「必要ならいつでも呼んでください」なんて言う。でもはっきり言わなきゃ。

「カレル、本当にありがとう。あなたは命の恩人だけど、もうあんなことはしないでほしいの」

カレルはなぜか、心底悲しそうな顔をする。

「どうしてですか?」
「昨日も言ったけど、罪悪感であんなことをしてほしくないからだよ」
「先輩、でも俺は…」

だめ。また熱が戻ってくる。彼の罪悪感につけこんで、「呪い関係なく、抱いてほしくなっちゃってる」とか絶対に言えない。

嘘で守らなきゃ。

「それに、もう必要ないの」
「…え?」
「昨日のでしっかり解呪できたから、もう必要ない。本当にありがとう」

私は誰を、何を守っているんだろう?

彼?

それともすでにズタボロになっている、私のちっぽけな倫理観?
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