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1 王妃は死に戻る
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「怠惰な国王とわがままな王妃の首を刎ねろ!」
「こいつらが全ての元凶だ!」
「自分たちの贅沢のために、重税を課しやがって!」
「国民のために働いた試しがないお飾り共め!」
広場に集まった群衆から、私に向かって怒りの声が飛んでくる。
恐怖で脚が震え、まっすぐ歩けない。
胸元のペンダントを握りしめながら、引きずられるようにして処刑台に向かい、木の板に体を押さえつけられる。
目線の先には、ぼろのような布をまとい、皮と骨だけのような姿で力の限り私を罵倒する男性。
死んだ子どもを抱き、この子を返せと泣き叫ぶ母親。
「見ろ。あれがお前の罪だ」と言う涙混じりの声が、頭の上から降ってくる。
「これが…私の罪?」
「何度も忠告したはずだ」
ようやく自分の罪を理解する。
民を顧みず、豪華に暮らしていた罪。
赦しを請うけれど、その声すら震えて、うまく言葉にならない。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。もう一度チャンスをもらえるなら、国民のために精一杯働きます…」
隣の処刑台には、国王陛下であり私の夫であるパリス様。
彼も同じように押さえつけられている。
「先に王妃を殺せ!王に妻の死を見せてやれ!」
(お願い、やり直すから…!人生を懸けて頑張るから…!)
頬に自分のものではない涙が落ち、胸の下でペンダントが熱くなったような気がして…
そのまま、二十一歳の誕生日に私の短い一生は終わった…
はずなのに。
ふと気が付くと、私は優雅な天蓋が付いたベッドに寝ていた。
見回すと、見慣れた王妃の私室だ。
「王妃様、お目覚めでしょうか」という侍女の声に、反射的に「ええ」と返答する。
あれは悪い夢だったのかしら。いやにリアルだったけれど…
重い刃に切り落とされたはずの首を確かめながらベッドから身を起こすと、数人の侍女に取り囲まれ、朝の着替えとヘアメイクがテキパキと進められていく。
鏡に映るのは、薄いピンクの髪にグリーンの瞳、肌が透き通るように白い女性。
「アズミアの可憐な宝石」、王妃リリー。
それが私の名前だ。
鏡を見ながらぼーっとしていたら、「王妃様!」と侍女が悲鳴をあげた。
「お胸に…火傷のような跡が!」
確かに鎖骨の間、真っ白な肌にしずく型の火傷の跡がある。
「昨日まではなかったのに…」
「寝ている間についたのでしょうか?」
「いったいどうして…」
「お許しを、王妃様…!」
私は震える指で火傷の跡に触れる。
(ペンダント…ペンダントだわ…!)
今は絶えてしまった魔法使いの血を引いていたというお祖母様が下さったペンダント。
私が死ぬときに熱くなったペンダント。
いつもつけていたはずなのに、今ここにはない。
(ペンダントが、願いを叶えてくれたの?)
そうに違いない。
「上から大きなアクセサリーをつければ隠れるわ。痛くないし大丈夫よ」
侍女たちが恐縮しながら支度を再開し、私は支度が終わった自分をもう一度まじまじと見る。
白に近い薄いピンクが基調で、ところどころに目の色に合わせたグリーンの宝石が縫い付けられた、細い腰を強調するプリンセスラインのドレス。洗練された印象と可愛らしさを両立している。
ドレスに縫い付けられたものと同じ、グリーンの大粒の宝石が連なった豪華なネックレスが、華奢な首にきらめいて、さらに華やかさを醸し出す。
煌めかしくて華やかで、さきほどまでとはまるで別世界。
ドレスもアクセサリーも、成人を迎える今日のために、贅を尽くして仕立てたものだ。
「王妃様、十八歳のお誕生日、誠におめでとうございます」
「幸多き一年になりますよう」
そう、今日は私の十八歳の誕生日。
(死んで、十八歳に戻ってきたということ…?)
「こいつらが全ての元凶だ!」
「自分たちの贅沢のために、重税を課しやがって!」
「国民のために働いた試しがないお飾り共め!」
広場に集まった群衆から、私に向かって怒りの声が飛んでくる。
恐怖で脚が震え、まっすぐ歩けない。
胸元のペンダントを握りしめながら、引きずられるようにして処刑台に向かい、木の板に体を押さえつけられる。
目線の先には、ぼろのような布をまとい、皮と骨だけのような姿で力の限り私を罵倒する男性。
死んだ子どもを抱き、この子を返せと泣き叫ぶ母親。
「見ろ。あれがお前の罪だ」と言う涙混じりの声が、頭の上から降ってくる。
「これが…私の罪?」
「何度も忠告したはずだ」
ようやく自分の罪を理解する。
民を顧みず、豪華に暮らしていた罪。
赦しを請うけれど、その声すら震えて、うまく言葉にならない。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。もう一度チャンスをもらえるなら、国民のために精一杯働きます…」
隣の処刑台には、国王陛下であり私の夫であるパリス様。
彼も同じように押さえつけられている。
「先に王妃を殺せ!王に妻の死を見せてやれ!」
(お願い、やり直すから…!人生を懸けて頑張るから…!)
頬に自分のものではない涙が落ち、胸の下でペンダントが熱くなったような気がして…
そのまま、二十一歳の誕生日に私の短い一生は終わった…
はずなのに。
ふと気が付くと、私は優雅な天蓋が付いたベッドに寝ていた。
見回すと、見慣れた王妃の私室だ。
「王妃様、お目覚めでしょうか」という侍女の声に、反射的に「ええ」と返答する。
あれは悪い夢だったのかしら。いやにリアルだったけれど…
重い刃に切り落とされたはずの首を確かめながらベッドから身を起こすと、数人の侍女に取り囲まれ、朝の着替えとヘアメイクがテキパキと進められていく。
鏡に映るのは、薄いピンクの髪にグリーンの瞳、肌が透き通るように白い女性。
「アズミアの可憐な宝石」、王妃リリー。
それが私の名前だ。
鏡を見ながらぼーっとしていたら、「王妃様!」と侍女が悲鳴をあげた。
「お胸に…火傷のような跡が!」
確かに鎖骨の間、真っ白な肌にしずく型の火傷の跡がある。
「昨日まではなかったのに…」
「寝ている間についたのでしょうか?」
「いったいどうして…」
「お許しを、王妃様…!」
私は震える指で火傷の跡に触れる。
(ペンダント…ペンダントだわ…!)
今は絶えてしまった魔法使いの血を引いていたというお祖母様が下さったペンダント。
私が死ぬときに熱くなったペンダント。
いつもつけていたはずなのに、今ここにはない。
(ペンダントが、願いを叶えてくれたの?)
そうに違いない。
「上から大きなアクセサリーをつければ隠れるわ。痛くないし大丈夫よ」
侍女たちが恐縮しながら支度を再開し、私は支度が終わった自分をもう一度まじまじと見る。
白に近い薄いピンクが基調で、ところどころに目の色に合わせたグリーンの宝石が縫い付けられた、細い腰を強調するプリンセスラインのドレス。洗練された印象と可愛らしさを両立している。
ドレスに縫い付けられたものと同じ、グリーンの大粒の宝石が連なった豪華なネックレスが、華奢な首にきらめいて、さらに華やかさを醸し出す。
煌めかしくて華やかで、さきほどまでとはまるで別世界。
ドレスもアクセサリーも、成人を迎える今日のために、贅を尽くして仕立てたものだ。
「王妃様、十八歳のお誕生日、誠におめでとうございます」
「幸多き一年になりますよう」
そう、今日は私の十八歳の誕生日。
(死んで、十八歳に戻ってきたということ…?)
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