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11 予算予算予算!
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「王妃様、今…物を配るだけではだめだとおっしゃいましたか?」
「ええ、そうよ。だってそれだけで何とかなるなら、あの場所はあそこまでひどくなっていないはずでしょう」
「おっしゃる通りです」
「清潔な場所にしないと、病気もなくならないし食事も美味しく食べられないし、安心して眠れないわ。けれど何から手をつけたらいいのかわからないの。勉強不足で恥ずかしいけれど」
「王妃様は本気なのだろうか」と探るような目でレオナルドがこちらを見る。
あんまりまじまじ見られて恥ずかしいので、「じろじろ見るのは失礼ですよ」と注意すると、彼ははっと我に返った。
「申し訳ございません」
「幼馴染のよしみで許します。今後は注意するように」
「はい」
そして彼はそっと顔を上げる。
「貧民街の環境改善について、私の意見を申し上げてもよろしいでしょうか、王妃様」
「ええ、ぜひ聞かせてほしいわ」
レオナルドによると、衛生環境の改善にはまず「上下水道のシステム」というものを整えるのが重要だそうだ。病気のもとを含まない安全な飲み水と、汚物を排除できるシステム。
そして無料または格安で受診できる病院や、職業紹介の必要性についてもわかりやすく講義してくれた。
彼の考えが実現すれば、生活環境はぐんと良くなると思える。
「素晴らしいわ。レオナルド、あなたはなぜそれをパリス様に進言しないの?」
するとレオナルドは言い淀む。
「私にはいいにくいこと?怒ったりしないから言ってみてちょうだいな」
レオナルドは何度かパリス様に上奏したり、会議でも提案したことがあったそうだが、貧民街の問題は、パリス様や貴族の間で関心が低く、莫大な予算が必要な水道建設や病院建設には予算がつかなかったそうだ。
唯一理想に燃える若き内務大臣が関心をもってはいるが、やはり予算が足りずに取り組めていないらしい。
確かに私も貧民街のことなど無関心だった。
(王宮と壁ひとつ隔てただけの王都に、あんなところがあったなんて知らなかった。王都の民はみな豊かで幸せな暮らしをしていると思っていたのだもの)
恥ずかしすぎる無知な勘違いだ。
でも今日視察をして、これは早急に解決すべき問題だとわかった。
貧民街を発端に恐ろしい感染症が流行するかもしれないし、治安が悪いまま放置すれば、何かの暴動から革命運動にもつながりかねない。
(革命…)
その言葉に思い至って、私は思わず自分の首に手をやる。
「王妃様?大丈夫ですか?」
心配そうにレオナルドが覗き込んでくれるけれど、彼の紫の目に憎悪と怒りが燃える様子が浮かんで、私は思わず目を逸らす。
心臓が大きく跳ねている。
怖い。
私は思わず目を逸らす。
「あ…失礼いたしました、王妃様」
彼は私との距離が近すぎたと思ったらしい。
「いいの、私こそごめんなさい。それよりやはり予算が重要なのよね」
「はい。先立つものがありませんと、何も動きません」
「予算…予算…」
パリス様が動かないのだとしたら、私が頼れるのはあの人しかいない。
「ええ、そうよ。だってそれだけで何とかなるなら、あの場所はあそこまでひどくなっていないはずでしょう」
「おっしゃる通りです」
「清潔な場所にしないと、病気もなくならないし食事も美味しく食べられないし、安心して眠れないわ。けれど何から手をつけたらいいのかわからないの。勉強不足で恥ずかしいけれど」
「王妃様は本気なのだろうか」と探るような目でレオナルドがこちらを見る。
あんまりまじまじ見られて恥ずかしいので、「じろじろ見るのは失礼ですよ」と注意すると、彼ははっと我に返った。
「申し訳ございません」
「幼馴染のよしみで許します。今後は注意するように」
「はい」
そして彼はそっと顔を上げる。
「貧民街の環境改善について、私の意見を申し上げてもよろしいでしょうか、王妃様」
「ええ、ぜひ聞かせてほしいわ」
レオナルドによると、衛生環境の改善にはまず「上下水道のシステム」というものを整えるのが重要だそうだ。病気のもとを含まない安全な飲み水と、汚物を排除できるシステム。
そして無料または格安で受診できる病院や、職業紹介の必要性についてもわかりやすく講義してくれた。
彼の考えが実現すれば、生活環境はぐんと良くなると思える。
「素晴らしいわ。レオナルド、あなたはなぜそれをパリス様に進言しないの?」
するとレオナルドは言い淀む。
「私にはいいにくいこと?怒ったりしないから言ってみてちょうだいな」
レオナルドは何度かパリス様に上奏したり、会議でも提案したことがあったそうだが、貧民街の問題は、パリス様や貴族の間で関心が低く、莫大な予算が必要な水道建設や病院建設には予算がつかなかったそうだ。
唯一理想に燃える若き内務大臣が関心をもってはいるが、やはり予算が足りずに取り組めていないらしい。
確かに私も貧民街のことなど無関心だった。
(王宮と壁ひとつ隔てただけの王都に、あんなところがあったなんて知らなかった。王都の民はみな豊かで幸せな暮らしをしていると思っていたのだもの)
恥ずかしすぎる無知な勘違いだ。
でも今日視察をして、これは早急に解決すべき問題だとわかった。
貧民街を発端に恐ろしい感染症が流行するかもしれないし、治安が悪いまま放置すれば、何かの暴動から革命運動にもつながりかねない。
(革命…)
その言葉に思い至って、私は思わず自分の首に手をやる。
「王妃様?大丈夫ですか?」
心配そうにレオナルドが覗き込んでくれるけれど、彼の紫の目に憎悪と怒りが燃える様子が浮かんで、私は思わず目を逸らす。
心臓が大きく跳ねている。
怖い。
私は思わず目を逸らす。
「あ…失礼いたしました、王妃様」
彼は私との距離が近すぎたと思ったらしい。
「いいの、私こそごめんなさい。それよりやはり予算が重要なのよね」
「はい。先立つものがありませんと、何も動きません」
「予算…予算…」
パリス様が動かないのだとしたら、私が頼れるのはあの人しかいない。
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