死に戻りの世間知らず王妃は、断罪を回避するために全力でやり直します!

こじまき

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12 リリーの夫は俺だ

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ようやくニ時か。そろそろリリー達が視察から帰ってくるころだ。

国王執務室の窓から外を見やると、ちょうど一行が外廊下で庭を縦断しているところだった。

この王宮はコの字型になっていて、執務室や大広間などの公的スペースがある東棟と、王族や使用人の私室がある西棟が、北の渡り廊下で繋がっている。

東棟と西棟の間にはよく手入れされた美しい庭園がある。その中に、南の城門から縦に伸び、東棟と西棟の間で二股に分かれるT字型の外廊下ももうけられている。

リリーはレオナルドと何やら話しながら外廊下の二股のところまでやってきた。

そのままレオナルドは東棟、リリーは西棟へと分かれて戻るのかと思ったが、二人は外廊下のベンチに座り、まだ何か話し込んでいる。

何を話しているのか執務室からは聞こえない。にこやかに、というよりは真剣な表情だ。身振り手振り、額と額が触れそうなくらい近くで話し合っている。

俺の心の中に、モヤモヤが広がっていく。

そもそもレオナルドをリリーの護衛につけたのは、帰ってきてすぐリリーの様子について報告を聞くためなのだ。

早く帰ってこい。

「リリーの夫は俺だぞ」と独り言を呟いたそのとき、ようやく二人は別れて、それぞれ東棟と西棟へ帰っていった。

それから三十分ほどして、ようやくレオナルドが執務室に入ってきた。「遅かったな」と不機嫌に言うと、「申し訳ございません。服や髪についた臭いが酷かったので、体を洗って着替えをしておりました」ともっともな答えだ。

「リリーとも随分話し込んでいたようだが」と言いたいが、覗き見していたことがバレるので言えない。代わりに「視察はどうだった」と聞く。

「はい。貧民街の人口が増えているように感じました。衛生状態も悪化しているようです」
「そうか。王妃殿は大丈夫だったか」
「はい。かなりショックを受けておられましたが、最後まで視察されました。貧民街の環境改善をしたいとおっしゃっておいでです」

あのリリーが、あの貧民街を、改善したいだと!?

(実際やるとなれば並大抵の労力や資金ではできないはずだ。孤児院への支援どころの騒ぎではないが…)

「本気か」
「はい。王妃様が個人で所有されている領地を売って予算をつくってもよいのかとご質問を受けました。売れる相手がいないため難しいとはお答えしましたが…宰相様にもご相談されるそうです」
「そうか」

自嘲めいた薄い笑いがこぼれる。

俺ではなく、レオナルドや義父上に相談か。

リリーの夫は俺なのに。

(ああ…俺は国民にも政治にも無関心な王だから当然だな)

それにしても。孤児院に視察のときは、着道楽の片手間に慈善に目覚めただけかもしれないとも思ったが、これはどうやら違うようだ。

リリーの目は、真剣に国民を向き始めている。

(何故だ…嫌だ)
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