夫ガチャが失敗だったので壊れたふりをしたら、私フィーバーが勃発しました

こじまき

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アイリスがいっぱい

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なぜあの「奇抜ファッション」が絶賛されてしまったのか。なぜ私が「壊れた女」ではなく「新しい芸術の旗手」扱いされているのか。考えてもわかるはずがない。

わかるはずもないけど、王妃様の一言であのファッションは完全なるブームになってしまい、マダム・マレーのお店は大忙しで、安物のビーズを使ったアクセサリーが街に溢れ、私の髪型をつくってくれたメイドは人気髪結い師として独立してしまった。

そして王妃様主催のお茶会当日。私は朝から胃が痛かった。胃が痛いことを理由に欠席しようかと思ってしまうくらいに痛かった。

しかし王妃様から直々に「次も楽しみにしているわ」と言われてしまった以上、行かないわけにはいかない。それも前回よりもさらに過激なファッションで。

何も思いつかなかった私は、たまたま食卓に出てきたスイカを見て、「これでいい」と思った。だから今日は大きなスイカをくりぬいて中に身体をいれたようなドレス。髪は大きなお団子にしてスイカに見立てている。

同行してくれるローレンスが、例によって無表情で尋ねてきた。

「どういうコンセプトですか?」

無表情だが目がいつもより光っているので、楽しんでいるのだろう。

「本気で聞きたいの?」
「いいえ」

コンセプトなんてあるはずもない。ただのスイカだ。私はただ「壊れた女」になりたいだけなのだから。

だけどお茶会の会場に到着した瞬間、私は絶望した。皆が私みたいな格好をしていたからだ。正確には「舞踏会での私」みたいな、つまり極彩色かつ渦巻き貝の女が大集合していた。むしろ今日はスイカの私が一番地味なのではないかと思えてしまうくらいに。

「すごいですね」というローレンスのつぶやきに、「そうね」と答えることしかできない。上品を極めた王宮の庭園でこれは、控えめに言って地獄絵図だ。

「みんな、ミューズ・アイリスのご登場よ!」

王妃様が、両手を広げて微笑む。そのドレスも極彩色。まさか王妃様まで…

「どう?似合っているかしら」
「とても鮮やかで…王妃様の華やかさとあいまって輝くようでございます」
「でしょ?私ももう、朝から鏡の前で興奮してしまって!マダム・マレーはさすがだわ」

周囲の貴婦人たちも口々に言う。

「髪型はアイリス様の巻き方を参考にしたのですわ。二時間かかりましたの」
「アイリス様は、今日のドレスも髪飾りも素敵ですわ」
「やはり発想が私どもとは違いますわね。ドレスの概念を改めて考えさせられますわ」
「大地への礼讃ですわね」
「まさしくですわ」

王妃がティーカップを掲げる。

「アイリス、新しい風をありがとう。あなたのセンスは王都に新しい時代をもたらして、古い価値観に縛られていた女性たちを解放したわ!」

そんな大それたことでは決してないのです。ただ壊れたふりをしただけなのです、王妃様。

目がチカチカするお茶会を何とか終え、スイカドレスの左右を畳みながら馬車に乗り込む。今日もまた大絶賛されてしまった。スイカなのに。なぜ?

「こんなはずじゃなかったの。お願い、夢だと言って、ローレンス」
「残念ながら現実です」
「ですよね…」
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