婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

文字の大きさ
67 / 306
第二章 お師匠様がやってきた

ノーザ湖の雪鮭

しおりを挟む
「そういえば、ルシウスさん。この近くに鮭のいる湖があるそうですよ。何でも珍しい種類だそうで」

 鮭食べたいサーモンパイその他! と期待を抱きつつ、王都の図書館まで行って国内の鮭の分布地を調べていたトオンだ。
 ちょうど、ここ第2号ダンジョンのある道から出ている乗合馬車で20分ほど進んだところにある。

「地元の人たちのハイキングコースになってるみたいです。で、湖にはサケ類の魚が昔からいるんですって」
「行こう」
「行きましょう」

 ルシウスとアイシャが食いぎみに身を乗り出してきた。
 美味しいものは積極的に探求していくスタンスである。



 そんなわけで、馬車に揺られて20分。
 ノーザ湖というひょうたん型の湖の湖畔に乗り合い馬車は到着した。
 湖は外周の遊歩道をゆっくり歩いても2時間ほどと、そう大きなものではない。
 湖畔には売店や休憩所、湖で獲れる水産物や加工品の直売所、またそれらが食べられる食堂などが点在している。

 さて、お目当ての鮭はといえば。

「ここの鮭はノーザ鮭といって、なかなか味が良いって本には書いてあったよ」

「そうか。この国でも鮭が獲れるのだな……」

 ルシウスが何やら顎に手を当てて考え込んでいる。

「ルシウスさん……何考えてるんだろう?」
「美味しいごはんのことだといいわよね」

 ふたりの疑問の答えは、数日後に明らかになるのだが、今日このときはまだ彼の意図はわからないままだ。

 この湖のノーザ鮭は加工品の一部が王都でも出回っている。
 トオンも食べたことがあるが、アイシャとトオンが以前カズンから食べさせてもらった、ルシウスの甥っ子から送られてきた鮭ほど美味ではない。
 それでも、なかなか味の良い魚だったように記憶している。

 また、ノーザ鮭は川で獲れる鮭でなく湖の鮭だから、通年漁獲できる。
 庶民でも手が届く程度の値段なのも良い。

 ただし、このノーザ鮭には注意点がひとつだけあった。



「これが……鮭、だと……?」

 ちょうど、ノーザ湖の水産物の販売所の店頭で鮭を捌いているところを見ることができた。
 魚切り包丁でするする捌かれていくノーザ鮭。
 腹側から捌かれ、内臓を取り除いて血を水洗いされ半身に開かれた後の光景に、ルシウスはその湖面の水色の目を見開いた。

「わあ、真っ白ね!」
「ノーザ鮭は別名を雪鮭っていうんだよ。湖に赤い色素を持った餌になる生き物がいないから、身も白くなっちゃったんだって」

 せっかくなので店内の食事処で名物料理をいくつか注文してみることにした。
 町で昼食を取ってきたばかりだが、三人でシェアし合えば問題なく食せる。


 ノーザ鮭のカルパッチョ
 ノーザ鮭の冷燻スライスでアボカドを巻いたもの
 ノーザ鮭の塩焼き


 店の人に尋ねたところ、この辺がノーザ鮭の人気の料理ということで三種類を注文してみた。

「「「いただきます」」」

 三人、お行儀よく手を合わせてから取り皿に均等にそれぞれの料理を分け、いざ実食。

「うん。鮭だ」
「鮭ね。あんまり鮭食べてる感じしないけど」
「鮭の味はする……が、これはもはや鮭というよりただの白身魚だな……」

 ひそひそと声を潜めて感想を言い合う。

 鮭というと濃いオレンジピンクの身の魚だと思い込んでいるから、この真っ白なノーザ鮭は見ながら食べると脳がバグる。
 味はしっかり鮭なのだが。

 ちなみに、同じ鮭でも、やはり川を登ってくるところを漁獲するルシウスの故郷の鮭と比べると、残念ながら味的にランクは落ちる。



 その後はルシウスがご近所さんたちへの土産に鮭とばを買った。
 彼の親しい親父さんたちは酒飲みが多いのだ。

 あとは町へ戻る馬車の発車時刻まで湖の周りを散策したり、カフェでお茶をしたりしながら充実した時間を過ごしていた。



しおりを挟む
感想 1,049

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

『スキルなし』だからと婚約を破棄されましたので、あなたに差し上げたスキルは返してもらいます

七辻ゆゆ
恋愛
「アナエル! 君との婚約を破棄する。もともと我々の婚約には疑問があった。王太子でありスキル『完全結界』を持つこの私が、スキルを持たない君を妻にするなどあり得ないことだ」 「では、そのスキルはお返し頂きます」  殿下の持つスキル『完全結界』は、もともとわたくしが差し上げたものです。いつも、信じてくださいませんでしたね。 (※別の場所で公開していた話を手直ししています)

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。