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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
地下ダンジョン最奥へ
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ダンジョンのエントランスになっている旧王城庭園で、まずルシウスが探索スキルを使った。
「どうですか? ルシウスさん」
「人の気配はある。三、四……五人だな。だが位置の特定ができぬ。何か隠蔽スキルを使用しているようだ」
「これまでの探索状況からすると、潜伏してそうな場所は……」
マッピング担当のトオンが手書きの地図を広げた。
地下ダンジョン内は大雑把に楕円形の形をしている。ちょうど王都の真下にあり、王都とほぼ同じ広さがある。
最初にルシウスが創りだしてしまったときにできてしまった地下空間は、地盤沈下しないよう全空間をルシウスが魔法樹脂で充填している。
探索は、最奥のラスボスに辿り着くことはもちろん、内部を移動するための道の整備作業が主だった。
「一応、ラスボスがいる場所の手前までは道を作ったのよね」
「現状、それ以外の踏破率は半分といったところか。潜伏しているなら休憩エリアだろうな」
侵入者が潜伏する可能性がある場所は数十ヶ所にも及ぶ。
アイシャとユーグレンも地図を覗き込んで思案げだ。
「この広い地下を五人では手が回らない。ダンジョンボスを倒しさえすれば、我ら踏破パーティー以外も探索できるようになる」
「よし。まずはボスのところだ。一気に行くぞ」
「「「はい!」」」
ビクトリノが庭園で待機して、外部との連絡を請け負ってくれることになった。
宰相や騎士団、冒険者ギルド、神殿などからの伝令にも対応するという。
「気をつけてな。嫌な気配がある。油断するなよ!」
「はい!」
ルシウスとジューア姉弟は全身に身体強化をかけて、一気に最奥まで疾走するそうだ。
「ピュイッ(アイシャちゃんたちはボクが運ぶよ!)」
ダンジョン内は高さも横幅も広めに造り込んできている。ユキノの元々の巨体サイズに戻れば、アイシャたち残りの三人を前脚で抱えて、飛んで移動できるということだった。
「あ、じゃあ、もふもふちゃんたちも」
アイシャがトオンやユーグレンと手分けして雛竜たちを抱えようとすると、リーダー格の一号雄がぽんっと跳ねてアイシャの黒髪の頭に乗った。
と思ったら。
「あら?」
「ピュイッ(ぼくたちはユキノおじちゃんの背中にいます!)」
「「「「ピュイッ(いまーす!)」」」」
二体はユキノの特にふわふわ度の高い、長めの羽毛のある鬣にしがみつき。
もう二体は長い尻尾に後ろ座り。
最後の一体である、ユキノの娘の五号雌はユキノの頭の上、柔らかな羽毛に覆われた二本の角の間にお座りした。
五体全員、ご機嫌でピュイピュイ鳴いている。
「今更だけど、雛たちまで連れてきちゃって良かったのかな……」
「ピーピッ(置いてきたってついてきちゃうよ。みんな好奇心おうせいだからね!)」
「だよなー」
言っている間にも、ルシウスとジューアは先に行ってしまった。
アイシャたち三人はユキノの前脚でまとめて胸元に抱き込まれた。
「うわっ。……も、もふもふ!」
そのまま三人一緒くたに羽毛が密集した胸元に沈み込んだ。すぐに浮遊する感覚が訪れる。
顔や腕、全身がユキノのふわふわもふもふの羽毛に包まれて、至福としか言いようがない。
「ピューイッ!(ユキノ、いきまーす!)」
そこからは速かった。
ダンジョン内は、同じ距離を外で空から飛べば五分で済むが、さすがに入り組んだ地下ではそうもいかない。
空中浮遊が使えるアイシャは平然としていたが、慣れないトオンとユーグレンはあたふたしていた――が、すぐにユキノのふわふわな羽毛の感触に癒されて落ち着いた。もふもふは偉大なりだ。
「あ、すごい。二人とも、環を出してみて。マップは頭に入ってる? マップと移動してる俺たちの位置関係が連動して頭の中に浮かばない?」
もふもふの中でトオンが言い出した。
「浮かぶ。なるほど、これは環使いならではの位置把握か」
「パーティーを組んだ環使い同士なら迷子にならないってことね」
「あとはさ、地図の覚え方を魔術で術式作ればかなりの精度で……」
トオンが楽しそうに構想を語る。今ここに異世界転生者のカズンがいれば『それはナビシステムだ』とでも言っただろう。
「あと二分……いや一分……」
「到着時刻まで自動計算か。これは馬車の御者や運輸業に喜ばれるスキルになるやも」
と言っている間に、ダンジョン最深、最奥部に到着した。
「ユキノ君、なかなかの乗り心地だったぞ」
「あんまり揺らさないで飛んでくれてありがとうな!」
「ピュイッ(どういたしまして!)」
男性二人がほのぼのしている横で、ユキノの懐から降りたアイシャは青ざめていた。
「も、もふもふちゃん!? うそ、どの子もいないわ!?」
どうやら飛んでくる間に落として、いや落ちてしまったらしい。
慌てて来た道を戻ろうとしたアイシャを、先に到着していたルシウスが鋭く静止した。
「待てアイシャ! ボス討伐が先だ!」
そう、ダンジョン最奥には支配者たるボスがいる。
まずは攻略を。皆の間に一気に緊張感が高まった。
「どうですか? ルシウスさん」
「人の気配はある。三、四……五人だな。だが位置の特定ができぬ。何か隠蔽スキルを使用しているようだ」
「これまでの探索状況からすると、潜伏してそうな場所は……」
マッピング担当のトオンが手書きの地図を広げた。
地下ダンジョン内は大雑把に楕円形の形をしている。ちょうど王都の真下にあり、王都とほぼ同じ広さがある。
最初にルシウスが創りだしてしまったときにできてしまった地下空間は、地盤沈下しないよう全空間をルシウスが魔法樹脂で充填している。
探索は、最奥のラスボスに辿り着くことはもちろん、内部を移動するための道の整備作業が主だった。
「一応、ラスボスがいる場所の手前までは道を作ったのよね」
「現状、それ以外の踏破率は半分といったところか。潜伏しているなら休憩エリアだろうな」
侵入者が潜伏する可能性がある場所は数十ヶ所にも及ぶ。
アイシャとユーグレンも地図を覗き込んで思案げだ。
「この広い地下を五人では手が回らない。ダンジョンボスを倒しさえすれば、我ら踏破パーティー以外も探索できるようになる」
「よし。まずはボスのところだ。一気に行くぞ」
「「「はい!」」」
ビクトリノが庭園で待機して、外部との連絡を請け負ってくれることになった。
宰相や騎士団、冒険者ギルド、神殿などからの伝令にも対応するという。
「気をつけてな。嫌な気配がある。油断するなよ!」
「はい!」
ルシウスとジューア姉弟は全身に身体強化をかけて、一気に最奥まで疾走するそうだ。
「ピュイッ(アイシャちゃんたちはボクが運ぶよ!)」
ダンジョン内は高さも横幅も広めに造り込んできている。ユキノの元々の巨体サイズに戻れば、アイシャたち残りの三人を前脚で抱えて、飛んで移動できるということだった。
「あ、じゃあ、もふもふちゃんたちも」
アイシャがトオンやユーグレンと手分けして雛竜たちを抱えようとすると、リーダー格の一号雄がぽんっと跳ねてアイシャの黒髪の頭に乗った。
と思ったら。
「あら?」
「ピュイッ(ぼくたちはユキノおじちゃんの背中にいます!)」
「「「「ピュイッ(いまーす!)」」」」
二体はユキノの特にふわふわ度の高い、長めの羽毛のある鬣にしがみつき。
もう二体は長い尻尾に後ろ座り。
最後の一体である、ユキノの娘の五号雌はユキノの頭の上、柔らかな羽毛に覆われた二本の角の間にお座りした。
五体全員、ご機嫌でピュイピュイ鳴いている。
「今更だけど、雛たちまで連れてきちゃって良かったのかな……」
「ピーピッ(置いてきたってついてきちゃうよ。みんな好奇心おうせいだからね!)」
「だよなー」
言っている間にも、ルシウスとジューアは先に行ってしまった。
アイシャたち三人はユキノの前脚でまとめて胸元に抱き込まれた。
「うわっ。……も、もふもふ!」
そのまま三人一緒くたに羽毛が密集した胸元に沈み込んだ。すぐに浮遊する感覚が訪れる。
顔や腕、全身がユキノのふわふわもふもふの羽毛に包まれて、至福としか言いようがない。
「ピューイッ!(ユキノ、いきまーす!)」
そこからは速かった。
ダンジョン内は、同じ距離を外で空から飛べば五分で済むが、さすがに入り組んだ地下ではそうもいかない。
空中浮遊が使えるアイシャは平然としていたが、慣れないトオンとユーグレンはあたふたしていた――が、すぐにユキノのふわふわな羽毛の感触に癒されて落ち着いた。もふもふは偉大なりだ。
「あ、すごい。二人とも、環を出してみて。マップは頭に入ってる? マップと移動してる俺たちの位置関係が連動して頭の中に浮かばない?」
もふもふの中でトオンが言い出した。
「浮かぶ。なるほど、これは環使いならではの位置把握か」
「パーティーを組んだ環使い同士なら迷子にならないってことね」
「あとはさ、地図の覚え方を魔術で術式作ればかなりの精度で……」
トオンが楽しそうに構想を語る。今ここに異世界転生者のカズンがいれば『それはナビシステムだ』とでも言っただろう。
「あと二分……いや一分……」
「到着時刻まで自動計算か。これは馬車の御者や運輸業に喜ばれるスキルになるやも」
と言っている間に、ダンジョン最深、最奥部に到着した。
「ユキノ君、なかなかの乗り心地だったぞ」
「あんまり揺らさないで飛んでくれてありがとうな!」
「ピュイッ(どういたしまして!)」
男性二人がほのぼのしている横で、ユキノの懐から降りたアイシャは青ざめていた。
「も、もふもふちゃん!? うそ、どの子もいないわ!?」
どうやら飛んでくる間に落として、いや落ちてしまったらしい。
慌てて来た道を戻ろうとしたアイシャを、先に到着していたルシウスが鋭く静止した。
「待てアイシャ! ボス討伐が先だ!」
そう、ダンジョン最奥には支配者たるボスがいる。
まずは攻略を。皆の間に一気に緊張感が高まった。
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